姫とナイトのシリアスバトル
運命に立ち向かえ
超VIPしか通うことの許されないお嬢様学校。そこに通う大鳥家次期当主のセイと、セイを守るためのファーストナイトであるラン。成績優秀・容姿端麗・スポーツ万能に加え、世を牛耳るほどの財力を持つという大鳥家。その家を継ぐべく、セイとランは日々の学校生活を監視され、力量を試されていた。果たして2人は次期当主の座を勝ち取ることができるのか…?
世界観はわかるんですよ。当主になるべくして力を試されている。それがこの家に生まれた者の定めなのだから…ただ、どちらかというとセイよりもランの試練じゃないですかね。セイを平気でケガさせようとしてくる奴らから守り、ファーストナイトになって私利私欲に走ろうとするような奴を薙ぎ払い、時には決闘で真剣対決をしなければならない。…ぱっと見では、全部大変なのはランじゃないか?いちおうセイにも、ランを心から信用し心配していたとしても表に出すことができないという苦行はあります…精神的に追い詰めるパターンの苦しさですね。次期当主としてどう振舞うべきか、何が起きても動じないでいること、的確な判断ができることを試されているわけです。
セイに寄り付くのは2種類の人間。1つは大鳥家の財力・一部権力行使につられてランを倒そうとする者。そしてもう1つは、セイ自体を当主候補から引きずり下ろし、自分がトップへと成り上がろうとする者です。たった2人で戦わなければならない試練。そこにイバラやサイキ、リンといった仲間が加わって、緊張感がとけていく。仲間を得て、「運命に抗うことも必要」だと教わるんです。
ランが男すぎる
イラストはとってもキレイ!セイなんてもう美人すぎて…その表情にドキドキしまくりでした。だけどランが…実は女なのに完全男っぽいので、なんとなく落ち着きませんでした。切れ長の目、172cmという身長の高さ、肩幅の広さとか…デカすぎる。作者さんの特徴でもあるので仕方ないけれど、表情に女の子が見え隠れするようになっても、体格差が気になって落ち着かないのです。闘う姿といい、できる能力の幅の広さといい、女性であることをずいぶんと超越していたので、最後まであまりかわいく見えなかったな…だって結局あらゆる戦いはランの力によって勝利を手にしたわけです。ランが最強なんですよ。イバラはランの精神安定剤の働き程度で、身を挺して代わってやるってこともできない設定でしたし…イバラはランよりも身長が高いからしっくりハマってはいましたけどね。ランがデキスギちゃんなんです。
色恋に関しては、ランとイバラのことを描いています。最終的に2人は両想いとなり、大鳥家解体へと動き出したことでセイとイバラの婚約者契約も廃止となりました。これにてハッピーエンド…のはずなのに、どうもインパクトが足りない気がする。もっとイチャコラしてもらいたいのですよ!イバラにランを甘やかしてもらたかったのです…!レイも生きてることだし、ランは女の子に戻るんだろうって思ってた…!そこが少し足りなかった…残念すぎでした。また、ファーストナイトとしてのランを残していくスタイルなら、やはり後日談が充実しているべきですよね…。
5巻で去るには早すぎる
12人のファーストナイト候補がいるって話だったので、こりゃーすぐには終わらないなと思っていました。ところが、意外にもあっさり最終局面をむかえることとなり、少し拍子抜けでしたね。しかも最後の相手は死んだと告げられていたはずの兄・レイとの戦い。兄とのエピソードが足りねーなーと思っていたら、そうか生きていたのか…と納得。兄がセイを襲ったという気の狂うような出来事を封印し、完璧だった兄の姿だけをかたく頭に残したランの脳。ショッキングな出来事を忘れた記憶喪失状態だったとは。この演出にはひねりを感じました。予想できなかったのでなかなか良い。
でも5巻って少ないですよね。レイが登場するにはまだまだ味方も敵も足りない気がしたし。ランはモテモテだったからもっとラブ面欲しかったし、セイと百川のことを広げてもほしかった…そして、大鳥家を取り巻く事情・肝心の今の大鳥家を動かしている大人たちが全然話に出てこないんですよ。終始セイとランのことばかり。学校で巻き起こる出来事ばかり・そしてデュエルばかり。実際にセイが当主になったらどういう状態になるのか、ということがあまりイメージできなかったので、もったいなかったなーと思いました。そしたらもっと話が広がりそうじゃないですか。ランの父親が実はなるべくしてその座に就いたわけではない…とかのエピソードよりも、もっと大鳥家のことを詳しく語ってもらいたかったですね。実質お父さんあんまり関係なかったと思う。
レイさんそんな回りくどい手はちょっと…
レイの使った手段…あまりにめんどくさい。だって、セイとランに大鳥家当主となる道を選ばせないために、わざわざ自分が嫌われて外に出て、党首の座をとりあえずどうでもいい感じの当主候補に継がせようって…め…めんどくさー…もっと他に方法なかった?実際、セイを当主とすることで、大鳥家解体という道を歩み始めたし、レイが苦しい思いして家を出なければならなくなる必要はなかったのでは…?伝統を打ち砕くにはイレギュラーな方法が必要になるものですが、セイを当主にして、自分がそのサポートを死ぬ気でやり、家族を救う道があったでしょうに。
しかも、レイはランに負けちゃって、逆上したご主人に刺されるという事態が起きた。そりゃーもうね、レイはそいつを当主にしようってことで動いていたし、本人もその気でいたと思うんです。それを、今更嘘でした、実はあんたのことはどうでもよかったんだよね…ってカミングアウトくらった日には、発狂するのも無理はないんじゃないだろうか…レイは余計に傷つく人間をつくりあげてしまったのですよ。それなら、ただまっすぐに立ち向かおうとしたセイとランのほうが、実力とその心の強さ・絆の強さを含めて勝っていたと言えるでしょう。
最後、レイが本当に死ぬかと思いましたが…そういうことにならなくて本当に良かった。
気持ちを押し殺したのは実は3人ともだった
実は一番の恋は…セイにあったのかもしれない。そうにおわせる終わりが個人的には気に入っています。小さなころのセイが、ランが女であることを捨てるために捨てた「机の引き出しの鍵」を探している。途中から来たイバラも手伝ってくれて、セイはやっと鍵を発見。大事そうに持ち帰る…
これって…
セイは百合疑惑か?
って思ってしまいました。もちろん、レイにひどい目にあわされて、心を乱してしまった大切な友だちのランを、これからは私が大切にするわ…という気持ちだけなのかもしれないですけど、これから自分のそばにいてくれると決めたランの秘密を、絶対に守り通そう・そうすればずっと一緒にいられるわ…というラブも感じずにはいられませんでした。イバラがそれを手伝ってるっていうのもおもしろいですよね。
ランはイバラへの気持ちを、イバラはランへの気持ちを、そしてセイはランへの気持ちを押し殺していたことになる。そうするとがぜん見方が変化して後味最高に。ラン、どんだけモテるんだ。ランが、自ら女であることを仲間にカミングアウトしたとき、セイはどんな気持ちだったかな…って思いました。自分から離れていってしまうことを予感したのでは…。それでも、ランを縛り付けないセイの心が清すぎて…と妄想を膨らませて勝手に楽しんでおりましたよ。
少し物足りないボリュームでしたが、妄想で締めくくって楽しく終わりをむかえてよかったなーと思います。
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