さすがの濃さで心にずっしりくる恋の話
余韻が長引くジョージ先生の言葉遣い
「溺れるナイフ」の時もそうですけど、やっぱり言葉がストレートに響いてきますよね。本当はキレイでもなんでもない。でもそれが正直で、リアルだからこそ、多くの人に愛されるというか。完璧な人よりも自分に近いものを持っている人にこそ、人は興味を示す生き物ですからね。ジョージ先生を支持する女性ファンはもう数知れずです。
主人公の志乃は、はっきりできない性格が災いし、本気で好きでもない相手と二股してしまうような女。一見、嫌いだなーって気がするのに、なんだかこんな自分嫌だって思いながら、人恋しい気持ちになってしまうその感情、理解できちゃうんだよな~…脳内会話も、よくやるので妙に共感させるよね。
こいつのそういうところ、大嫌いなのに 好きなところでもあったりした
…わかる。わかりすぎる!ネチネチ自分に指示出してくるのがすごく嫌なのに、愛されているとも感じる。そして必要とされていると思えば、すべてを許してしまいたくなる。というか、許すも何も、自分が悪い事しちゃったっていう負い目もある。負い目を棚に上げて、自分が幸せになりたいと思う。女って…めんどくさいの!
京ちゃんは、いい奴だったと思うね。あかりをちゃんと彼女として扱い、志乃は惹かれる相手ではあったけど、手を出そうとはしなかった。あの真っ白のページに
そんなあかりが かわいくてかわいくて しょうがないんだよ
とか言われると、どんだけ愛してるかが伝わりすぎて、志乃、これは無理かも…って何度も思ったよ。
女のダメなところを隠さずみせる
正輝を繰り返す。そして、知るんですよね。本気で好きになると、こうなるんだねって。今まで惰性で男と付き合ってきた志乃。努力してたのも本当で、相手の好きなところもいっぱいあったっていうのも本当で…だけど、どこかで情熱が渇いているような、一生懸命好きだと言えない気持ちだった。どんな気持ちで正輝が志乃を想っていたのかとか、許したいのに許せなくて、別れを告げるしかなかったあの電話の時のつらさ…志乃はそれとまったく同じ体験を自分がすることになるんです。大好きでも叶うことのない恋もあること、自分がいかに力がなかったのかということ、がんばった分だけ・本気だった分だけ何かが返ってくるとは言えないこと…あの夏の暑い夜に京ちゃんと出会って、稲妻に打たれたみたいに好きになったのに…そうそう。努力が報われるとは限らないのに、前向いて努力し続ける以外に道がないんだよ。そしてその努力を楽しめるようにならないと、幸せにはならないんだよね。
あかりの気持ちもね、すごーーくつらいと思います。いろいろな人に見放されてやってきたこの場所。まだ19歳。世の中を知っているようで知らなかったと思います。自分の小説家になりたいという夢を持ち、お金を稼いで小説を書く日々。それを許し、そばにいてくれた京ちゃん。この出会いもまた偶然で、京ちゃんが「彼女」と呼んでくれなかったら、あかりは今のあかりではいられなかった。大好きだったのに、正直になれなくて逃げた…奪われる前に捨ててやるって。そんなことする前に、もっとあがくべきだったのに。戻ってきたときにはもう京ちゃんの心にはあかりのスペースがなかった。そりゃーね、あかりって名前も嘘だったうえ、住所も何もかもが嘘で…何を信じたらいいのか、ただ好きな気持ちだけじゃだめなのかって、京ちゃんは思ってしまったんだよ…。人生は何度だって輝けるけど、まったく同じシチュエーションは絶対にやってこない。だから、その時その時で、悔いのない行動をしなければならないんだなーーと。そんなことを感じさせてくれました。
25歳で本気の恋
25歳になるまで、人を好きになれることがなかったっていうのもまたなんか共鳴しちゃうんですよね。遅くない?って思う人もいるかもしれませんが、好きだと言われれば好きになれるような気がしているし、いい人だと思えば好きだと感じる。そんな人も絶対いるんですよ。でもそこに情熱があるかって言われると正直分からない…そりゃー相手のことは好きだよ?大事にしたいから我慢もするし…こういうタイプ、不倫タイプなんですよ。心から好きだと思える人に出会ってしまったら、もう手がつけられないくらい、欲してしまうタイプでしょうね。志乃は別れたところがスタートで本当によかった。素直に応援できましたのでね。
本気だからこそ慎重に、引き際も見つめながら、それでもやっぱりそばにいたい。生まれた気持ちを大事にしたい。奪うなんて気はないけれど、せめてそばにいさせてほしい。一生懸命ストップかけてる志乃が、愛しいなーって思った。
京ちゃんもね、全然できた人間ってわけでもない。迷うこともあるし、動けないときもある。嘘だらけの何かより、真正面からぶつかってくる志乃のこと、大好きになりました。あかりが出ていって、騙されてたって思って、隙間だらけのオジサン。俺は大事に想ってきたつもりだけど、あかりは俺の事、大事じゃなかった…?そこに志乃がそっとぴったりフィット。もう大好きになるしかない。本当に…幸せだよね。好きになった人に好きになってもらう。こんな最高なことってないよなって改めて思った。
1つの恋が叶うとき1つの恋が終わる
そんな感じで京ちゃんと付き合うことができた志乃だけど、やっぱりあかりの影がちらつきます。だって相手だって嫌いで離れたわけじゃないんだもの。大好きで、それを伝えられなかっただけなんだもの…もう時すでに遅しになっちゃったけどね。態度の悪いあかりを、どうしても好きだとは言い切れない気持ちですが、言いたいこと言えなくて、それでも理解されたくて、理解されていると知らなかったわけじゃないのに逃げてしまった後悔とか、もう一度勇気出してあのアパートにやってきたこととか…もどかしい心は理解できる。もう戻れないものになってしまったけれど、あかりはまだ若いですからね。今度は正直にいれる相手を見つけてほしいものです。
最後まであかりが尾を引きましたね~しかし、再会のシーンは…もう最高すぎて、3回は見直したよ。志乃は京ちゃんにとってすがりつくほどに大切な相手になった。志乃にとって京ちゃんがそうだったようにね。やっぱりキーになるのはクワイズモ。そして雨。何度育ててみても植物を枯らしてしまう女だった志乃。それを増やし大きくして待っていてくれた京ちゃん。そこに恵みの雨が降る…あ~これからもそうやって2人は支えあって生きていってくれるんだろうな~ってうるうるっと来てしまった。
実は簡単なこと
どうしようもない女とちゃんと線引きできるふうな男。そんな2人が出会って歩み寄って、互いに好きになる。5巻という短さなのに、インパクトは抜群で、かわいい女のしつこさも、イケてる男の軽薄さも、ストレートに表現されています。
すごい難しく考えていたけど、結局は簡単なこと。人を好きになり、好きになってもらうよう努力すること。ごちゃごちゃ余計なことは考えないで、ただ大好きだと伝えること。人にもそうだし、植物にもそう。愛されたければ愛せばいい。それが一番大切だなーって思わせてくれました。あのラストの余韻がね…たまらんです。こんな簡単なことを伝えたいがために、5巻も使ったのか?とは思いませんよね?紆余曲折あってこその極論なわけです。
イイ子には素敵なカレが現れるわけでもない。心が動くかどうかは、誰にも見えない。愛されたければ人を愛すしかないんです。あーーおもしろかった。
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