この家族のそばで、この家族を見続けたい - ファミリー!の感想

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ファミリー!

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この家族のそばで、この家族を見続けたい

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演出
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目次

普通じゃない?兄と妹

タイトルの通り、物語のどこを拾っても家族のそれぞれの個性が、まんべんなく生き生きと描かれている中、フィーとケイの関係が特に目を引くのはなぜでしょうか?

単にブラコン、シスコンという枠にはまらないのは、ゲイである兄、ボーイッシュ過ぎる妹、という特殊な個性がユニークさを作り出しているからだと思います。それは兄の友人、レイフがのちに妹の恋人になる、という設定により、3人の関係がギクシャクする過程をよりおもしろく、少しせつなく映し出すための材料として活かされています。

最初は同性愛を生理的に受け付けず、兄にノーマルな恋愛をさせたかっただけのフィー。

それがレイフに近付くことで、固定観念を捨てて二人を認めることができるようになったのに、そんなフィーを魅力のある女の子として見始めてしまうレイフ。妹のことを誰よりも分かっているし、レイフとの関係も壊したくない気持ちもあったケイ。

このもつれた関係がだんだんとおだやかな日常へと変化するエピソードがあります。

第38話「ぼくたちの解放」です。

どんな風に妹の誕生を迎えたか、そして幼い時に起きたローラースケートでの事故をどう受け止めて生きてきたか、という歴史が封印されたスケート靴につまっています。その封印を解く日は、同時に兄としてのお役御免の日であり、その役をそっと譲る気持ちになったケイがスケート靴を見て微笑み、一方そんな様子に気付かず無邪気にローラースケートに誘うフィーが対照的に描かれています。この第38話がじわりとかもし出す雰囲気に、すてきな兄、妹だなあ、と思わずにはいられません。

ぶっ飛んでる?ママ

とにかくマイペース。本人は大真面目であるがゆえに、その行動や言動は家族からときどき愛をこめて「バカ」と言われてしまうシェレンママ。

彼女はあるときは妻であり、妹であり、母親であり、救世主であり、とたくさんの役割があるにも関わらず、顔を使い分けるということがありません。

そんなママの魅力がたっぷり味わえるのは第21話「黄昏の魔法使い」です。

クッキーモンスターが大好き過ぎて、着ぐるみを着て街を歩いてしまうところにそれほど不自然さを感じないのは、ひとえにキャラの濃さのおかげと言うべきでしょう。

継母とうまくいかないというベッキーに仲直りのポイントを教えてあげるシーンは、彼女の人間性がにじみ出ているのですが、なんといっても顔が緊張感のないクッキーモンスターであることが笑いを誘います。

第24話「フレンドシップ・ファザーシップ」で夫以外の男性からアプローチされるようなことがあっても、それは相手に心配事があるからだと信じて疑わないし、夫が女性の部下と親密な様子を見ても動揺しないのは、シェレンという人間の中にある感覚が徹底的にズレているからなのです。それは近くにいる家族をイライラさせる原因にもなりますが、少し離れた家族以外からの愛され度は極めて高く、それを俯瞰できる立場である読者はその魅力を何倍も味わえているのかもしれません。

キラキラしてる?アメリカ

コミックの余白にある「らくがきエッセイ」というコーナーは、この作品を発表する前に作者渡辺多恵子が経験した留学の体験記です。そこではアメリカの家庭の日常に触れられると同時に、物語の中でも留学生をアンダーソン家が受け入れるというストーリーが織り込まれています。これは日本人から見たアメリカ人、そして逆も然り、登場人物たちの心情を察することで異文化の交流を外側からじっくり見られた気分にさせてもらいました。

アメリカを夢の国、生活や髪や肌の色にただあこがれて渡米したマリコが、彼らと一緒に暮らすということの意味を理解するまでに時間がかかる様子は、同じように生まれてからしばらく外国を知らずに生きてきた身にとっては共感できる部分が多いです。

そして留学体験が人間を成長させるのは、現地で受ける刺激だけではない、それは帰国してからもずっと続くのではないか、と思わせるストーリー展開が印象的です。

マリコがあこがれていた世界そのままであるアンダーソン家。若い家族構成と、性別を間違えられるという重大なハプニングを抱えながらもマリコを放っておけないおせっかいなフィー、そしてなにより日本にも遊びに来てね、という手紙の言葉に、今までの彼女と何か違う、と気付いてあげられる家族。これはもう完璧なホストファミリーと言うしかない気がしました。

これこそ家族愛!

もしジョナサンという少年の登場がなかったら?

それはもはや「ファミリー!」ではないでしょう。「アンダーソン家の楽しい毎日」というタイトルで十分ではないかと思います。それほど彼の存在は大きく、もし続編ができるとすれば真っ先にその成長を見たいと願います。

ジョナサンの突然の訪問で始まり、別れで幕を閉じる物語であることからも、血がつながっているかどうかは関係ない、離れていても家族である、それがこの物語の中核だと確信できるのです。

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