彼女のような人とは、できることなら一生知り合いたくない!
映画版では知ることのできなかった細部が味わえる
世界的に大ヒットし、数多の賞を受賞した映画「ゴーン・ガール」の原作。映画がとても見応えがあったので原作を手に取ってみた。そういう場合よくあるのが、「映画は良かったけれど、原作の方はいまいち」という残念な結果。しかし、この作品に関しては「読んで良かった」の一言に尽きます。映画と原作は時系列や内容での大きな違いはありませが、映画にはなかった登場人物の細かな行動や会話がストーリーを完璧な形で積み上げていきます。特にニックの移ろいやすい心の動きや、冷静沈着に思考し常に最短距離で結論と行動を起こすエイミーの言動は、読んでいて飽きることがありませんでした。映画版から見たこの原作は、「緻密な細部は物語をより豊かにする」と言えるでしょう。
物語前半部分は完全に錯覚してしまう
私は映画版を見た後に、原作を読みはじめたのですが、前半部分では完全に作者に騙されてしまった。物語は夫ニックと妻エイミーの一人称交換視点で進んでいく。前半部分ではニックの行動を順次追っていきながら、エイミーがニックに出会ったころからのことを語る。エイミーが失踪したことに気づいたニックはさほど慌てることなく、どこか仕方なしにという感じで警察やエイミーの両親、双子の妹マーゴ、ボランティアの人々と一緒に捜索を続ける。一方エイミーは、ニックとの昔話で、いかにニックが素晴らしかったかを語り続ける。当然読んでる方は、捜索にやる気を出さないニックに違和感を感じ始める。そして、ニックが短期大学生のアンディと浮気していることが発覚する。これはどう考えてもニックは最低最悪の奴で、エイミーは夫から相手にされなくなってしまった貞操な妻ではないかと、映画でストーリーを知っているはずの私ですら錯覚してしまった。これは本当に上手い書き方だなと唸らされました。そして、後半に入り物語は大きく動く。
怖ろしいまでの狡猾さを持ったパートナーがもしあなたの本当のパートナーだったら?
物語後半では、エイミーの語り口が現在進行形に変わり、さらに彼女のとっている行動から前半部分で語っていた思い出話の大事なところすべては、彼女の作り出した嘘話だとようやく理解することができる。そしてそれは、彼女がニックの浮気を知り、彼をおとしめるための道具として大事にしたためた日記だったのだ。それ以外にも彼女は、自宅で襲われたように見せかけるための数多くの偽装や、彼女の保険金をニックのサインで増額させていたり、結婚記念日恒例行事の宝探しで使う手紙で浮気相手のアンディとセックスした様々な場所へ誘導したり、さらには彼のクレジットカード名義でいくつもの高額な品物を購入していたり、その購入した物すべてにしっかり寝ている時にニックの指紋をつけていたりと、彼女の狡猾な行動をあげていたらきりがない。最終的にはエイミーは親切にしてくれた元彼の喉をかき切り、ニックの元へと戻る。彼女と別れたいニックだが、エイミーは彼の子供がお腹の中にいると告げ、彼を完璧に支配した。もしあなたのパートナーが彼女のように完璧主義で、執念深く、怖ろしいまでの狡猾さを持っているとすれば、あなたはいったいどうするだろうか?私なら眠れない夜が続きそうだ。
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