ぱっとしない物語。
激しい。
第一の感想として、主演の安達祐実が想像以上に体を張っていて驚いた。実際の女郎は、相手に体を委ねるため、この映画の描写は女郎の現実の激しさを表現しようとしているのだとわかる。
とにかく、激しい。他の客がいるにも関わらずに女郎と行為に臨む客、朝霧と半次郎が愛し合う場面など、激しすぎて目を背けたくなるほどであった。
半次郎がいる場で、朝霧が客の行為を受けなくてはならなかった場面では、その客の乱雑さや嬉しそうな表情が朝霧の苦しさをさらに大きく表現しているように感じた。
最後の、朝霧と半次郎がやっとお互いに触れ、二人の愛し合う気持ちが最大になった場面では、行為の尺が長すぎたように思う。もっと短くても、やっと愛し合うことができた喜びや気持ちの大きさは十分伝わるはずである。二人の絡み合う描写が長すぎて、ストーリーを伝えたいというよりは、安達祐実の綺麗さを見せたかったように捉えられる。安達祐実の演技や肌を鑑賞したいのならよいと思うが、題名とあらすじに惹かれて鑑賞した私にとっては、マイナスポイントであった。
浅めのストーリー
ストーリー的に、深みは感じなかった。「女郎が苦労した話」とまとまってしまわなくもない。愛する人のために、自分の人生を犠牲にしてしまう映画なら、いくらでもある。恋愛系のストーリーに、吉原である背景や花魁の綺麗さを追加したもののように思えてしまう。この点からも、安達祐実の綺麗さを見せるための映画なのではないかと思ってしまう。
キャスト
主演である、安達祐実演じる朝霧は、女郎として人気がある。個人的に気になってしまうのが、安達祐実のかわいらしさである。声が幼いような高い声で、声を荒げた場面では、高い立場としての貫禄は感じられなかった。そもそも、童顔が女郎に似合っていない感じもする。女郎に童顔はいないと思うわけではないが、女郎というと優艶なイメージがある。自分の女郎とのイメージと異なったため、映画全体に違和感を感じた。
朝霧と恋に落ちる半次郎は、演技がうまいというわけではないが、職人としての不器用さがあらわれているように感じた。
半次郎の前で朝霧と行為をした吉田屋は、腹黒さが見えるような演技だった。特に、朝霧の首を舐めて、顔中に白粉をつけている様子が、吉田屋の考えの憎らしさを強調している。
花魁の綺麗さ
全体的にし花魁の綺麗さを見ることができる。特に、半次郎が用意した花魁の着物を着て花魁道中をする朝霧のすがたは美しかった。よくを言えば、もう少し吉原の優雅さや華やかさを見たかった。印象に残っているのは、女郎たちが住む仮の宿や、朝霧と半次郎が出会った下町の様子である。華やかさを期待してただけに、少し残念だった。
全体的にもったいない。
安達祐実の綺麗さは十分であったが、ストーリーとしては物足りない映画であった。物足りなさの原因として、朝霧の過去があまり伝わってこなかった点がある。どうして女郎になったのか、姉女郎はどのような人生だったのか、映画中にあったのかもしれないが、私には印象として残っていない。朝霧の背景を加えれば、全ての出来事が朝霧の過去と関連して動き、深みのある作品になるのではないのかと思う。
上述した、激しい場面の多さは、他の細かい場面の印象を下げていく。激しい行為によってインパクトは増えるが、物語としては物足りなさを感じてしまう原因となる。行為のシーンの割愛をすべきである。割愛することによって、ストーリー性を深める場面を増やすことができる。作品全体で、女郎の苦労や愛することを激しい行為で表現したかったのかもしれないが、余分な激しさは、物語を重視して観る側としてはいらなかった。
演技や肌を目的として観るならば、十分満足のできる作品である。序盤は、肌の露出が少ないが、中盤から後半にかけて激しさを増していく。この露出度の増加は、肌の露出を目的としている人にとって、次の展開が期待出来る構成である。
朝霧の肌に花が咲くという設定はいらないのではないかと思う。花が咲くことが美しさに繋がらないように思える。また、花が肌に咲くということは、朝霧の特徴の要素のひとつであるが、それゆえに内面的特徴の印象が薄い。
吉田屋に商売道具としてもらわれそうになった場面では、半次郎が吉田屋を殺害してしまった。しかし、実際に朝霧が吉田屋にもらわれ、叶わぬ恋を描いたほうが、女郎としての人生を表現できたのではないかと思う。実際に、主人を殺害してもらわれるのを拒否することはないであろう。女郎として働くことがなくなってからも、商売道具として苦しみ、また好いた人とともに生きていけない辛さは長く大きい。愛する人が自分のために、打ち首にされてしまうという苦悩より、商売道具として使われ続けてしまうほうが、苦しみに同情できたように思う。
全体的に、自分の観たかった作品とは異なり、もったいない印象を受けた。
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