想像しなかったラスト
主人公の華麗なる転身が必見
お世辞でもお洒落とは言えないどこにでもいそうな垢抜けない主人公のエマ。一方エマが一途に思うデクスターはカッコ良くてモテるものだからチャラチャラしている。そんな対照的な二人のラブストーリーは1998年7月15日からスタートしていきます。エマは真面目で地味でアルバイト中心の生活の中デクスターと出会ってしまいます。出会った瞬間から何かを感じていたであろう二人の様子が初々しくて恋愛っていいなとついつい思ってしまいます。エマは作家志望なのですがなかなか芽が出ないというよく聞く物語なのですがエマを演じるアンハサウェイの愛くるしい演技が素晴らしくいつの間にかエマに頑張れと応援している自分がいました。周りが大学生活を謳歌している中お洒落もせずに恋人も作らずいるエマに対して想いを寄せるデクスターはテレビの人気者となり違う世界の人になってしまいます。エマだけが取り残されていくような生活は見ていて自分にも重なるところがあり自分まで苦しくなりました。いつまでも自分の夢に向かってひたむきに努力しつづけるエマを見ていると本当に素敵だなと感じさせられます。努力の甲斐がありエマは作家として認められるようになり、ようやく夢が現実へとなっていきます。年を追うごとに自信を持ち美しく変貌して行くエマの姿はこの物語の見ものと言えます。どんどん洗練されていき輝くエマとは対照的にどんどん生活が荒んで行き冴えない姿になっていくデクスター。女性は年齢を重ねる度に魅力が増すといいますが男性はなかなかそうはいきません。二人の対照的な生活を見ていると人生って思い通りにはいかないなと改めて感じます。
気持ちに素直になれないもどかしさ
他人から見れば人生で一番幸せな時と思えても本人からすれば幸せとは限らないとはその通りだと思いました。素敵な人と結婚して子供が生まれて裕福な暮らしをする事が幸せと思う人もいれば完璧な生活ゆえに何か物足りなさを感じてしまう人っていると思います。主人公のエマが好きになった男性はとてもつもなく女の子が大好きなダメ男でそんな男性はダメだと思っていても惹かれてしまうものです。恋愛とはとても複雑なものでお互いを想っているからといって決して結ばれるとはいいきれません。それは映画の中だけでなく現実の世界でもあることで深く関わりすぎると関係が壊れてしまう場合もあります。男女の友情という二人の関係性が出来あがっているからこそ友達以上の関係を求めてしまうと二人の友情が壊れてしまう。壊したくはないけれどどうしても相手の事が気になってしまう。そんな現実世界でもありえる話が映画の中でとてもリアルに描かれているんです。思わず「それ分かる」と言ってしまいそうな付かず離れずの誰しも経験した事があるような距離感。二人の感情がとてもリアルに描かれているからこそ感情移入し自分の過去の恋愛とリンクさせていくのです。エマは心の奥にいつもデクスターへの想いを秘めていて親友として毎年7月15日を一緒に過ごすところは本当に見ていてもどかしく感じます。お互いに恋人がいても結婚していても一年に一度会うという事は二人の気持ちははっきりと分かっているようにも思うのですが言葉にする事は難しいものです。例え言葉にしても恋人がいたり結婚していたりと環境やタイミングでこんなにもうまくいかないものだなと感じるのです。
ただのハッピーエンドで終わらない
この映画の素晴らしいところは女性目線の物語で終わらせていないところのように思います。ラブストーリーとつく映画は大抵女の子の大好きな美男美女がハッピーエンドで終わる物語なのですがこの映画はもしかしたら男性目線なのかもしれません。23年のラブストーリーと題名にあるように出会って友情が生まれ恋愛に変わっていく様子を23年間という長いスパンで描かれているのですが出会った7月15日だけにスポット当てているのでテンポが良く退屈しません。あっという間に話が進むのでそろそろハッピーエンドで終わるだろうなと思っていた私には衝撃的な展開でした。自分の中でのラストのストーリーが出来上がっていたのですが急に我に返らされたかのような感覚になります。はっきり言ってこの映画の終わり方は後味がいいとは言えないかもしれません。私自身も23年にしてようやく幸せになれたんだなと思っていましたし、そうであって欲しかったです。ですが、だからこそ本当にリアルでハッピーエンドを求めている自分とは違うストーリーが新鮮でよかったです。もしこれがハッピーエンドで終わっていたならば心に残る作品にはならなかったし平凡な作品だなと思って終わるだけだったと思います。隣にいて当たり前の存在でも明日どうなっているかは誰にも分かりません。この結末を見ていると人生はいい事ばかりとは限らないけれど1日1日を大切に生活する事って大事だなと感じさせられます。
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