組織という名のラビリンス、必要なのはアリアドネの糸 - チーム・バチスタ3アリアドネの弾丸の感想

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チーム・バチスタ3アリアドネの弾丸

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映像
4.00
脚本
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キャスト
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音楽
2.75
演出
3.50
感想数
2
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3

組織という名のラビリンス、必要なのはアリアドネの糸

5.05.0
映像
3.0
脚本
4.5
キャスト
5.0
音楽
1.5
演出
3.0

目次

法医学と放射線科、警察と医療を繋ぐ糸

ある日特別愁訴外来、通称「愚痴外来」に勤務する心療内科医の田口公平は死因不明遺体に遭遇し、シーズン1「チームバチスタの栄光」で使った遺体を傷つけずに死因を探る「Ai」をしてみませんか?と提案する、その頃厚生労働省のゴキブリ役人白鳥圭輔は解剖率3%で残りの97%は死因が分からないまま闇に葬られている「死因不明社会」を打破するため、東城医大病院でAiセンター設立を進めていた。それをよく思わない警察庁と法医学、放射線科と対峙してしまい不穏な空気の中Aiセンターは設立、そして導入された新型の縦型MRIで連続殺人事件が発生する…。

今作では「Ai」所謂「死亡時画像診断」が物語の鍵、遺体を撮影するだけなので解剖するよりも手間がなく何より傷つけることなく死因を探ることが出来る。でも勿論解剖とこの「Ai」どちらにもメリット・デメリットが存在するのは確か。どちらが一番優れているということもなく二つとも優れている、だから協力し合って補え合えば完璧になると願う田口先生、でもその願いは空しく…。双方の権威、法医学教室准教授・笹井スミレ(小西真奈美)と放射線科准教授・島津吾郎(安田顕)そして「Ai」をよく思わない警察側は警察庁長官官房情報統括室室長・警視長・斑鳩芳正(高橋克典)警察庁刑事局審議官・警視監・北山錠一郎(尾美としのり)警察庁刑事局特命広域捜査官・警視・宇佐見壮一(福士誠治)。まさに今作は複雑に入り組んだ組織という名の迷宮。その迷宮から抜け出す糸を渡してくれるのはやはり彼だけ。

オートプシー・イメージング=Ai、現実ではどうなのか

今作でシーズン3となる「アリアドネの弾丸」では「Ai」が活躍するが現実ではどうなのか、気になって調べてみたところ、死亡時に行われる医学的な検索には病理解剖、司法解剖、行政解剖の3種類の解剖がある。でも実際には解剖医の不足によりとても低い解剖率となっている。このことはシーズン4「螺鈿迷宮」でも桜宮巌雄(柳葉敏郎)が言っている。日本は世界でもっともCTを保持する台数が多い、現在では4割が「Ai」を実施している、解剖は3%。警察の捜査でも「Ai」は使用されているようで都道府県警が実施する費用を国費で負担している。でも死後画像を的確に読影出来る医師も少ない為、こちらでは解剖の方が多い。確かにもし自分が遺族の立場となった時死因が不明により解剖をすることになったら「Ai」の方を選びたい。でも事件性のあるもので「Ai」をすると映像では出血の有無などを見逃す可能性もあるのだとか、やはり解剖もAiも双方にメリット・デメリットは存在していてどちらがより優秀ということもない、どちらも必要不可欠であるが実施される回数は両方ともまだ件数が少ない。もし現実に白鳥さんが居てくれたなら現在の医療現場はもっと変わっていただろう。

非対称で息の合った唯一無二の相棒

原作は現役医師の海堂尊氏の小説「田口・白鳥シリーズ」海堂氏の小説の中でも特に人気のシリーズ。医療ドラマといえば数あるけれど厚労省の役人と心療内科医の異色コンビである今作、嫌われ者の白鳥さん(仲村トオル)と振り回される心療内科医の田口先生(伊藤淳史)がやっぱり良いコンビ。各話ごとに息抜きのように二人で食事をしているシーンやグッチーをからかうことが大好きな白鳥さんとのやりとり、何やかんやでシーズンを追うごとに二人が最高の相棒になっていくことが分かる。少し微笑ましく思えるそんな息抜きシーンが個人的に一番の見所ではないかと思います。今作では白鳥さんには過去に婚約者がいたこと、それがきっかけで「医療事故調査委員会」を作ったことなど過去もエピソードも見られるところが好き。斑鳩に過去を暴かれ初めて白鳥さんが反論出来なかったこと、それを庇ったグッチーは「白鳥さんに利用された一番の被害者」それでもグッチーは「医者を疑いたかったら幾らでも疑えばいい、僕が付き合いますから」と白鳥さんに涙ながらに言う屋上のシーンには胸が打たれる。グッチーの博愛は患者に対しても犯罪者にもいつも向けられている、このシーンでは長年そばで相棒を務めている白鳥さんにも向けられまさに「アリアドネ」と言った看護婦の藤原さん(名取裕子)の言葉も頷ける。

「アリアドネ」とはギリシャ神話、牛の頭を持った怪人「ミノタウロス」の生贄として恋人が迷宮へと入って行く時、無事に出て来られるようにと渡した女性の名前。「とりわけて潔らかに聖い娘」という意味から女神だったと言われている。今作ではアリアドネの糸のような存在であるグッチー、今回も白鳥さんに勝手にAiセンター長にされたけれどそれを怒ることなく「白鳥さんが本気で自分を必要としているなら」と何も言わずに協力する。シーズンを追うごとに強くなっていくコンビ愛があってこそ今作でも事件解決に辿り着けたのではないかと思うのです。シーズンが4まである「チームバチスタシリーズ」の中で私はこの「アリアドネの弾丸」が一番のお気に入りなのは二人のコンビ愛が特に強く確かに強固となっていることが分かるから、やっぱりグッチーは人の心を分け隔てなく救う女神なのかもしれない。

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