映画好きあるある!
理解されない映画オタクの代弁者
本作は非常にバランス良く、映画好きの叫びを全て代弁してくれる漫画である。
映画鑑賞といえば、読書に並ぶ平凡な趣味であるにも関わらず、映画マニアはなぜか一般の映画好きとは別として存在する。一般人とは何をさして一般人であるかということはさておき、映画マニアは基本「語りたい」のである。インターネットの復旧で「レビュー」等が散見されるようになった今でも、映画マニアは、映画を語れる友人を求めており、映画にさして興味のない人々にその魅力を伝えたいというものである。しかし一方で、理解されないことも多く、その苦悩は絶えず人間関係を維持するために押し黙ることもしばしば。この作品はそんな映画好きの苦悩を全て表現した作品であることは間違いないだろう。
映画が実名ででる
何よりもこれがありがたい。近年の漫画作品にはこれを伏せ字にして「分かる人にはわかる」というなんとも、読む人を選んだ表現で漫画の一コマとして処理されてきたが、本作では「知らないなら見るがよい」と言わんばかりの堂々としたスタンスで描かれている。タイトルも比較的有名なものをチョイスしており、映画好きでなくても「あ、知ってる映画だ」というような楽しみを得られる。と、同時にコアな映画ファンにも「そんな映画普通知らんだろw」とツッコミを入れられるようなシーンも多い。殆どの作品はレンタルショップなどで用意に借りてくることもできるラインナップで、その作品を知っている人も「もう一度見たくなったな」というような気持ちにさせてくれる。
主人公が魅力的
主人公は会社でも中堅クラスの30代独身女性。映画のこととなると熱く暴走するようなキャラクターだが、現実社会においての外面は完璧で、美人で良識のある上司を演じている。この作品はこの主人公の可愛らしさや、お馬鹿な面を見るのも楽しみの一つといえるだろう。また過度なエロはないものの、自宅でパンツ一丁ですごしていたりお尻や足などの表現が妙にエロティックに描かれることもある。これもまたこの漫画を読み続けられる一つの味付けになっていることは間違いないだろう。
さらに本作の主人公は、「相手を論破したいウーマン」であり、これを自覚している。持論は強く語るが、一方で別の人の意見を(論破され)悔しいながらも認めることもできる人物である。これはたいていオチに使われることではあるが、「子供が見たい映画」であったり、TVアニメは映画の二軍みたいなものと軽んじていた「エヴァ」にドハマリしたりと、人に薦められたものを(抵抗はありつつも)受け入れ「好きなものは好き」としっかりと受け入れられる姿に好感が持てる。なお個人的にはこれほどの映画マニアが「ジブリ作品を見ていない」という設定も面白い。
作品の取り上げ方が上手い
本作は孤独な映画マニアの女性と、彼女に関わる「さして映画にソコまで興味のない一般人」による、映画に対する温度感こそが魅力であり、見どころである。本作の上手なところは、一つの作品に熱く語るだけというようなマンネリとした展開ではなく、主人公と一般人の社会生活や日常生活に絡められているところが秀逸である。
例えば、
「ジブリ映画で一番好きなのは?」
「スター・ウォーズはどの順番で見る?」
など、映画好きではない人でも一度は話題にしたことがあるようなテーマについて、逆に「また始まった」とうんざりする主人公。その話題をうまく逸らすための陽動が非常にコミカライズに描かれていて、展開にあきさせないように工夫がされている。
以上、私が大好きな「木根さんの1人でキネマ」でした。
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