美しすぎるボーイズのシビアなようでゆるい世界
目次
イラスト重視の人にはたまらない
もともとは小説がベースになっているこの作品。だけど挿絵がね…美しすぎだとは思いませんか。その後は漫画やらアニメやら、なんでもかんでも登場するくらい、この物語は人気になりましたよね。はじめアニメのほうを見ましたが、やはりマンガで見てしまうともう美しすぎる…すぐ虜になりました。(笑)活字から人物像を妄想して膨らませるのも楽しいですけど、マンガを見て存分に世界観を堪能してから小説も読みたくなるような、そんな描かれ方がずるいです。楽しすぎます!実際、もう原作小説を手に取ろうかという今日この頃です。
イラストの美しさに加え、描写は過激にならずとても落ち着いた雰囲気。魔族と人間の悲しい争いになりそうなところを、なぜか解決方法はほんわかとさせてくれるおもしろ大会が多いこの物語なのですが、ユーリという人格的にも由来的にも興味深い人物が主人公であることによって、少しずつ改革もなされています。魔王を取り巻く世界に、庶民らしさも加わってより明るい世界になっていく。種族の垣根を超えさせてくれるのは、どこの世においても異質な人物の存在ですね。ゆるい世界の日常がつづられているような感じなので、ファンタジーに起承転結を大きく求めたいときにはちょっと物足りないかもしれません。美しき魔族たちのコミカルな日常のほのぼのとした雰囲気を眺めて癒される、そんな仕上がりです。それにしても美形ぞろいの魔族…もちろんコンラッド推しメンとさせていただきます。
ユーリの人物像がどこかミステリアスで魅力的
このストーリーでは、とにかくユーリという人間(魔王)のキャラクター設定が素敵です。十分イケメンなのに、天然すぎて数々の出会いをふいにしてきている彼。それすらも気づいていないため、生まれてこの方一度もモテることなく生きてきたという残念感。しかし魔族のしもべたちからの敬愛を受け、美しいとほめたたえられている…それは黒い髪・黒い瞳・黒い装束という魔族にとっての美しさの象徴をまとっているからというのがもちろんでかいのですが、それにしたって君は十分イケメンだよ!ヴォルフラムの言う通りです。魔王の力が発動すると登場する、通称上様モード。その呼び名とキャラ、上様モードが大好きな時代劇に由来しているところ…魂が魔族でも家庭環境を色濃く反映した特徴の数々。よくできているなーと感心してしまいます。読者をまったく飽きさせません。
知識もなければ力もない。魂だけが魔族のもの。しかし正義感、人を惹きつける魅力、人を率いる能力。そういうものがきちんと備わっていたユーリ。中盤、それすらも魔族側の要望だったということが発覚しますが、きちんとその方向に育ったのは育てた両親・環境のおかげでしょうね。少し馬鹿なほうがいい。うん、それくらいがかわいげがあるし、教育もしやすくなる。ただ、一番の魅力は、何を考えているのかわからない時や、真剣に悩んでいるときのアンニュイな雰囲気…魔王として何かお考えなのかしら?!そんな期待も持ってしまうちょっとせつなげな見た目がミステリアスです。魔王の威厳も素敵だけど、通常モードで当たり前のようにみんなのために行動できる心の強さも素敵です…自分の境遇にもさほど弱音を吐かないし、決してひねくれないという…主人公キャラなんだけど、○○戦隊でいうとレッドよりはブルーやホワイトのようなサブ加減も持ち合わせている気がしますね。
ヴォルフラムに対し、そうとは知らずに求婚をしてしまったユーリ。だけど案外とすんなり受け入れてしまうという楽観的な一面もまたかわいすぎるでしょう。女の子大好きなのにね。ヴォルフラムはむしろ嬉しそうだよ?
取り巻き1人1人のエピソードが濃いので楽しい
登場人物の名前がかっこいいとは思いませんか?ヴォルフラム、コンラート、ギュンター…それを英語読みする・略す・愛称で呼び合う…なんか外国の雰囲気…!異国感が漂います。
やはり中でも注目株はユーリとヴォルラフムのカップルでしょう。ボーイズラブを崇高する人にはおいしすぎる組み合わせですが、決して生々しいことは起こらず、あくまで人として仲良くなっていく姿が微笑ましいです。友として、陛下とそのしもべとして、婚約者(?)として。別に女装癖があるわけでもなく、どちらかがどちらかをそこに貶めるわけでもなく。これは案外と新しいなと思いました。性別を超えてお互いに理解できてる感じがして、読者目線から考えても嬉しいと思います。まるマシリーズでジェンダーフリーは起きていた…!
そして、かの有名なローマの温泉漫画を彷彿とさせるスターツアーの方法。むしろ過去作のほうがネタ元なのかもしれないけれどね。トイレの水、海水、温泉の水、お風呂の水…あらゆる水つながりのところからワープできるという話ですが、これもユーリの魔力で強いのが水属性だからでしょうね。どちらかといえばあまり攻撃的なものは出てこないので、もう少し魔族らしいものが多くても邪魔はしなかったのでは…?という気もします。そこだけ少し物足りなさは感じました。
途中物語の本筋とは関係のない番外編が長く続くのが小説出身らしい
漫画編では、だいたいおおまかに編が移り変わっていくので、過去編の番外編に2~3巻費やしたり、進み方が自由です。一連の流れもありますが、それぞれの時期の魔族たちの日常を楽しむ感覚で読んでいくといいかなと思います。さすが何篇もある小説出身ってやつですよ。
やっぱり序盤が一番いいですよね…ユーリがいきなり魔王だと告げられて、そこからどうにかこうにかがんばっていく姿・そしてみんなとのふれあいの中で、魔族に王として認められていくストーリー。ユーリがユーリらしくあれば、そのまま大丈夫!その安心感がいいし、安定のメンツが崩れることがなくて嬉しいというか。どんどんお互いを知ってどんどん仲良くなってもらいたい&ユーリの魔王としての覚醒がもっとでかく起こってほしいなと期待をいだきながら読み進めていました。もちろん、過去編におけるユーリ、コンラッドもイケメンすぎて萌…腐女子は見ているだけで悶絶でした…
最後のほうはなんだか複雑極まりない…
箱シリーズは、とにかく長い。そしてずっと仲間だったものが崩れるので、ちょっと辛いです。今までが平和だっただけに、長くて先の見えない戦いはお付き合いするのが大変でした。実際には裏切りというほどではないのですが、途中ユーリの魔力が消えちゃったり、ヴォルフラムはいなくなるし、死んでるとか死んでないとか、いやいやもう複雑だよ…個人的にはせつなくてドキドキする展開が盛りだくさんで…これはもう終わってしまうんだろうなというのが予想できました。これだけことが大きくなるんですから、ラストスパートだなと気づいてしまいますよね。
最後はいろいろと元通り、また地球と魔族の世界を行き来するユーリの自由な生活に戻っていくんだなと思わせてくれるラストでした。これからいかようにも話は続けることが出来そうですしね。そのたびまた彼らに会いに戻ってきたくなってしまうことでしょう。腐女子的に燃える内容がもっと多くあってもよかったかもしれないです。でもそこは自分の中で妄想していく程度でおさまっていて、全体としてはユーリがどんな魔王になっていくか、っていうのがテーマに沿ってほのぼの楽しめるのがいいところですね。
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