獄中での生活をコミカルに描いた作品
登場人物とその特徴
世界を見渡してみると、生きることの辛さや難しさから、犯罪を犯してしまう人は多く存在します。かといって、犯罪を犯す全ての人が、根っからの悪人であるとは限りません。この映画に登場する受刑者の罪を見てもそのことが分かります。この映画の原作となった漫画家、花輪もその一人です。それぞれが刑務所に入ったのは世間で許されないとされる犯罪や罪を犯したためです。もちろん、その罪1つ1つを正当化することはできません。ですが、この映画を見ていると受刑者にも、人間としての良さが必ずあるものだということに気付かされます。そして、彼らが社会復帰することを応援したくなる映画でもあります。また、誰しも犯罪に巻き込まれる可能性があるということを感じます。悪い仲間の影響もあるでしょう。この映画に登場する受刑者の罪は、建造物侵入罪や覚醒剤取締法違反、窃盗罪や銃砲刀剣類等不法所持、火薬類取締法違反などで、殺人罪という最も恐ろしい罪に問われている者は少ないという点が幸いです。そうでなければ、このコミカルに描くことは難しかったでしょうし、見る側も恐ろしい罪を犯した者の映画を笑ってみること事態、罪悪感に苛まれます。
獄中での暮らしを映画によって体験
獄中での食事は、この映画を通して詳しく知ることができました。例えば、お正月など特別な日の食事はたとえ獄中であってもそれなりに豪華で、そしてお正月という節目を感じる事ができる特別なものです。そんな料理を噛みしめ、味わう受刑者たちの表現の仕方がコミカルで見ている人を笑わせてしまいます。また、獄中での態度が優良な者は映画鑑賞が許され、その際にお菓子とコーラが支給されています。その際にも、お菓子の味わい噛みし、コーラの喉ごしを楽しむ受刑者の姿がありました。そんな光景を見て、私たちが普段何気なく味わっているものを、噛みしめて味わう人がいるのだということについて考えさせられると共に、刑務所で暮らさなければならないような人生であってはならないという事を子供にも大人にも感じさせてくれる内容になっています。布団の上げ下げをはじめ、身支度のための時間制限など、ひと時も気が緩まない生活が獄中での暮らしなのです。
獄中での一日を知ることができる
朝の起床から始まり、名前ではなく番号で点呼が取られる日々がそこにはあります。様々な作業を行い、人として日々働き・学ぶという生活の中で、トイレに行く際も申し出て許可をいただいてからの行動となります。犯罪者として、誰一人勝手に席を立つことが許されないのです。入浴のたびに行われる身体検査や、入浴中の監視をはじめ、私たちが日頃自由に行動できることすらが監視の下で行われています。とはいえ、これは当然のことです。獄中にいる人は犯罪者であるため、全ての行動が監視される必要があり、その事によって受刑者たちは刑の重さを噛みしめなければならないのです。
このように、監視の中にある厳しい環境の中で人として改心していく受刑者たちの姿が描かれていますが、まじめな受刑者もいればそうでない受刑者もいるというのは、どこの刑務所においてもいえることだと思います。花輪の役を演じる山崎努はまじめな刑務所生活を送り、見ている人にも良い影響を与えたことと思います。どんな場所にいても、どんな過去があろうとも、本人の気持ちの持ち方一つで生きる意味を見出すことができるということを教えてくれます。刑務所での生活はどんなものなのか、気になる人が多い中で、網走刑務所のように、観光地としてかつてあった刑務所を公開している施設もありますが、ここまで詳しく刑務所内を覗き見できるのはこの映画しかないでしょう。だからこそ、原作漫画がヒット作になったのだと思います。そういった意味で、この映画は花輪という一人の漫画家の自叙伝でもあるのかもしれません。見る人によって、色々なことが感じられる映画ですが、この映画の一番良いところは、暴力シーンなど目を覆いたくなるシーンが無いという部分ではないかと思います。また、いじられキャラや、おしゃべり好き、潔癖症やハッタリ屋といった個性豊かな受刑者たちが、獄中での生活を坦々と過ごしているところにあります。映画の撮影は北海道網走市の協力を得て、網走監獄をはじめ、閉校となった校舎などで行われています。この映画をより深く味わうためには、これらの撮影現場を見てみるというのもおススメです。実際、私たち一家も、網走監獄を観光したことを機に、刑務所内での暮らしが気になりこの作品を見るに至りました。というのも、等施設には映画「刑務所の中」のポスターも貼ってあったためです。このような宣伝は、単なる映画の宣伝や網走市のPRだけでなく、刑務所についてより深く知ることが、犯罪を減らすことにも役立つものだからなのかもしれないと思いました。そのため、観光地としてもおススメです。
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