連載継続すら危ぶまれた作品の興味深さ - COPPELIONの感想

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COPPELION

4.504.50
画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
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感想数
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連載継続すら危ぶまれた作品の興味深さ

4.54.5
画力
4.5
ストーリー
4.5
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
4.5

目次

時代が近すぎて他人ごとじゃない

私がこの漫画の存在を知ったのはごく最近の事で、まず手に取って読み始めて、うわ、おもしろい!と思いました。しかし同時に怖いと思いましたね。この漫画は、あの震災をまたいでしまった作品ですから。大地震の直撃、原子力発電所のメルトダウン、都市の崩壊、あらゆる人間の死…とても重い内容であると、今は思います。当時はまだそんなことは起こらないだろうと思われた時代ですから、近未来という言葉で片付けられたでしょうけれど、今となっては他人ごとではなく、本当に起こり得る未来の縮図としてみることができると思います。

原発を稼働させることへの期待、恐怖、希望、現実…いろいろなことを考えさせてくれる物語になっています。26巻という長きにわたってずっと描かれてきたこの作品。答えが正しかったのか何なのか、エネルギーを求めて自然を汚すことは悪なのか、人工に作ったものならそれは利用するだけ利用して捨てればいいというだけの人形なのか。たとえそれぞれに確かな意思を持っていたとしても…あまりにもディープで目をそむけたくなるようなこと、核に関する細かな知識や、おそらくそうやって生き延びられるかもしれないという方法…ありそうでない、でも確かにあるような気がしてならないものがぎゅっと詰まっています。この漫画を読んでいると、コッペリオンは近い将来必ず生み出される。そんな気がしてなりません。2036年って…すぐそこまで来ているよ…そしてその悲劇の東京ができあがった20年前って2016年…去年じゃないか!怖っ。

コッペリオンの特殊能力への憧れ

まず、タイトルを読んでもいったい何の話なのかが全然読めませんよね。そしてスタートの第1巻で、3人の女子高生がいきなり出てくる。そして登場したのは東京の多摩市。しかもどうやら人は見渡す限り一人もおらず、古びて何もなくなってしまった東京だった…この始まりがまず衝撃的でした。これからいったい何の話をするんだろう?そう思わせてくれる不思議な始まり方です。そして、読み進めるうちにだんだん事情がわかってくるのが読者を楽しくさせてくれています。どうやら普通の高校生ではない。普通の人間だったら即死する高濃度汚染区域に彼女たちは降り立ち、その体に宿す抗体によって普通に息ができ、たぐいまれなる能力を持って人を救うことを任務として課されている…なんかかっこいい。不謹慎かもしれないけど、憧れすら覚えました。

11人に確かに能力があり、少数精鋭。役割と明確な達成目標があり、しかし自我もきちんと持ち合わせている。遺伝子操作によって人工的に生み出された命だけれど、愛もあるし、普通の高校生みたいな考え方もできる。ただ任務のための教育を多く受けてきただけ…しかし背負うものは日本規模を超え、もはや地球規模の問題。そのギャップが絶対苦しいはずなのに、荊のおかげでコッペリオンたちは奮い立つことができていました。さすが委員長。「生存者を救うためにある」という道を忘れさせないでくれる荊の存在が、コッペリオンたちにとっても、人間にとっても、希望になっている。救世主は葵なんだけど、それを使い物にしてくれたのも全部荊のおかげで…芯を持ち、ブレない存在が1つでもあると、全体が引き締まりますよね。

1部の清さは第2部から消え失せる

1部で、むしろ終わっちゃってもいいんじゃないかってくらい感動的でしたよ!!高濃度放射能汚染をされた東京でなぜ人は生き残っていたのか。それにはお台場の原発を作った人間の懺悔の気持ち・恐怖心が関わっていました。電気を作り出すために原子力発電所を作った。しかしその莫大なエネルギーの対価は何にも代えがたいことだった。でもそれに気づいたのはすべてを失ってからだった…分かるよ博士。失敗を失敗としてバッシングを受けたくない恐怖、自分を傷つけることで解放されたいと願う気持ち、苦しむ人を助けたいと心から思う気持ち…科学者としての余計なプライドを脱ぎ去ったら簡単なことだったかもしれないけど、確かにその苦しみのおかげで助かった人間もいたわけだから、無駄なことではなかったと信じたいです。

にしても、やっぱり第1部から突っ走りすぎじゃないですかね?あらゆる要素が語られたので、後は最終的な局面になっていくだけだろうなーと初見では思いました。しかし、第2部、3部、4部とこれだけ超大作になろうとは予想もできませんでしたよ。日本政府をどうにかするのじゃちょっと壮大すぎるし、内部で静かに解決できるならコッペリオンなんていらんだろうし。第2部からは徐々に保健係以外のコッペリオンたちが続々登場してきて、もはやその力比べ・勢力争いの様相も呈してくるので、余計に話がややこしくなっていきます。もう少し毎回巻頭でちらっとでもいいので、前回のストーリーのまとめとかキャラ考察とか深めに書いてもらえると、こちらとしても楽しさ倍増だっただろうなと考えます。

コッペリオンは人形か

コッペリオンは、人が遺伝子操作によって生み出した人間そっくりの個体。でも意思がある。11人が特殊な能力を持ち、役割がある。これからの人生に悩んでる人がこの物語を真剣に読んでいったら、彼女らに憧れちゃうこと間違いなしだと思います。疑いなくただまっすぐに生きている。自分にもこんな力が欲しいですよ!

Dr.コッペリウスはほんと最悪な奴だなと思いますが、刹那のことを想うと…かわいそうだと言ってあげるしかないでしょう。我が子を想う気持ちって、親になったことがある人なら推し量れることでしょう。でも、荊みたいに、親がいなくてもこれだけ考えて、任務が正義であると信じ動き続けることができるって…何なんでしょう。教頭の教育がベストマッチしたのでしょうか。それとも何らかに影響を受けている…?

科学が私のお母さんだから…

なぜ卑屈になることなくそんなふうに言えてしまうのか…というか、言葉のチョイスがさすがだなと思います。要所で一人一人の発する言葉に重みがあるのに、それを真顔で何の躊躇もなく言える。すごく人間らしいのに、無駄なことを考えてないところが人間離れしているような気にもさせてくれます。コッペリオンたちは、特殊な能力を持っているということ以外は、ただの高校生だと思うんです。だから、荊みたいに優等生に歩んでいく子もいれば、小津姉妹みたいにレールから外れてみたりもするし、生みの親に従って生きることを良しとすることもあれば、よく考えてより自分が信じたい道へと方向を転換したりもする。まさに人生の縮図のように思えますね。

ラストはちょっと悲しかった

ラストで、生き延びるために遥人がとった行動によって、荊は普通の人間になってしまいます。これはかなり悲しかった…委員長として引っ張ってきた彼女が、普通の人間になってしまい自分の存在意義をなくしてしまった…もう驚きすぎて、読者としてこのストーリーを読んでいる私のほうまで荊と同じ気持ちになったかのようでした。絶対立ち直れないよ…普通に死んじゃうかもしれないとさえ思いました。こういうときって、一人だとお決まりのように立ち上がれないくらいのダメージをくらうんですよね。だから、防護服を着てでもみんなと再会できたシーンは感動的でした。遥人じゃなくて葵がっていうのもぐっときます。やっぱり最後はオリジナルの保健係…!

生きていれば、何かを失うこともある。でもこれからできることもある。すべてを壊すのは人間かもしれない。だけど救うことができるのもきっと人間だ。そう信じたいなと思います。本当の意味での希望みたいなものを教えてくれているいい物語です。扱っている題材は、立場によってはだいぶ複雑な気持ちになるものかもしれないけれどね。

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