ボボボーボ・ボーボボはどうしてヒットしたのか?
圧倒的なおバカさ・スピード感!!
まずこの作品の一番のウリは何と言っても訳のわからないギャグと、その繰り出されるスピード感です。子安さんを始めとする豪華なキャスト陣にもかかわらず、支離滅裂かつ意味不明なボケとツッコミの繰り出されるボボボーボ・ボーボボワールドに、貴方は圧倒されることでしょう…
忘れたいこと、全部忘れさせてくれる頭空っぽ感!!
たま〜にシリアスになったかな…と身構えるのもつかの間、シリアスっぽい雰囲気の回想シーンですら、変なキャラが出てきて雰囲気をぶち壊してしまうなど、息つく暇も与えないギャグ容量。これについていくには、頭空っぽにしてテンションを合わせるしかない!(笑)
けれどしっかり組み立てられたストーリー。
ボボボーボ・ボーボボは、全人類を丸刈りにするというわけのわからないモットーを掲げた悪者である毛狩り隊が跋扈する世界で、毛狩り隊を止めるべく主人公であるボーボボはじめ仲間たちが奮闘するストーリー。要所要所どころか原作の漫画に至っては数コマに1つ散りばめられているギャグだけをみれば、全く訳のわからないただ笑えるだけの漫画に見えてしまうかもしれません。しかしその背景には、主人公とその家族、仲間たちの因縁ややコンプレックスといった物語を名作にする要素がちゃんと組み込まれており、彼らの成長物語がこの作品の大きな魅力の一つなのです。
アニメや原作漫画の終了から数年経った今でも語られることの多いボボボーボ・ボーボボは異色のギャグ作品として大ヒット作した作品の一つです。このアニメに似ていると言われるアニメは殆ど聞きませんし、主題歌を歌っているウルフルズの作風も、あまりアニメ向きという感じではありません。そこにこの作品の固有性が垣間見られると思います。力強く、時には吐き捨てるような歌い方をするウルフルズの雰囲気が合うこの作品からは、「そんなんでほんとにいいの!?」「いいの!」というようないい加減さと安心感がもらえます。それがこの作品がヒットした理由であるように思えるのです。
この作品は上に書いたように、ノンストップの意味不明ギャグとツッコミが次々織り成されるアニメ。ギャグ一つ一つを日常で使ったとしても、「は?」と言われて終わってしまうでしょう。しかし、あまりにぶっ飛んだ背景設定に人間どころかもはや生物ではない(おでんやところてん、果ては擬音を文字化したものなど)ものになぞらえたキャラクターに作り出される世界の中でそういったギャグが繰り返されることで、ある種の「常識を破壊するカタルシス」さえ感じられます。つまり、整然と整備され、完成された世界のなかではみ出さないように生き、その枠のなかでしかお遊び・おふざけが許されない現代社会において、常識と思考で予測できる型にはまらないこの作品は、息抜きでもあり羽を伸ばす場でもあるのではないでしょうか。感情をあらわにし、時には人の迷惑を考えず、超美少女設定のヒロインであるビュティちゃんが数秒に一回は顔面崩壊させながら大声でツッコミをかまし、イケメンっぽい設定のヘッポコ丸がおならで戦い、かっこいい破天荒がよくわからない生物である首領パッチにぞっこんである…そのような、「こんなことが許されても良いのか?!」と思われるようなことが次々繰り返されることで、型にはまらないといけない日常の理不尽さを、さらに理不尽な世界でぶち壊してしまうことが、この作品がヒットした理由であると考えられます。
そして、そのようななかでもしっかりと成長してゆくキャラクターたちも魅力的です。キャラデザがぶっ飛んで「こいつは絶対使い捨てキャラだろ!」と思うようなキャラクターにも、何気に重い過去設定がされていたり、重大なコンプレックスを抱えていて作品全編に渡ってそのコンプレックスと戦っていたり(ところてんのすけが「ね」という文字に対し敵対心を抱き続けるなど)、複雑なキャラ設定がなされています。しかし、仲間とともに旅を続け、ピンチに陥ったりもうどうしようもなくなったり、時には負けてしまったりしたとしても、そこからなにくそと根性を出し努力を重ねて敵に打ち勝つといった、少年漫画・アニメの王道のアツい展開も盛り込まれているのです。例えば、ボーボボチームの一人であるヘッポコ丸はボーボボに憧れたりビュティに惚れたりと年相応の少年らしさと、あまりに強すぎるボーボボチームのなかで比較的読者に近い存在と言えますが、それゆえ力を手に入れようとして悪の組織の手に落ちたり、気分が落ち込みすぎてしまい病んだようになってしまったりします。しかし仲間と旅を続け、ときには喝を入れられることで、こころもからだも本当の強さを手に入れてゆくのです。このように、破天荒でめちゃくちゃな作風のなかでも、少年の心をぐっと掴むお約束が含まれているところも、ヒットした理由の一つなのかもしれません。
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