さすがスクエニ!ストーリー性抜群な人気作
まさに山あり谷ありの冒険ストーリー
勇者とその仲間たちが世界を救う物語です。さすがスクエニだなと思うのが、とにかくゲームの中に入ったかのようなストーリーです。勇者アルスの生まれと育った環境、戦士たちとのうまい具合の出会い、あまりに巨大な悪の敵と戦っていく姿、それに伴い生まれる悲しいこと・辛いこと、ライバルが仲間となるどんでん返し、そして乗り越える感動。とにかく無駄なく、全部必要だったなと思うくらいの流れでした。一人では決して成しえなかったという気持ちが伝わります。終盤、一度パーティーを解散するイベント(イベントっていうとすでにゲームっぽい…)が発生するんですが、そこで仲間一人一人の決意に再度スポットライトが当たっていくという…最終的には、気持ちの強さがいかに大事かっていうのを伝えてくれていました。
だいたいRPGって仲間殺さないですけど、スクエニは余裕で悲しみの出来事を起こします。それが如実に出ていましたね。私はタルキンさんが亡くなってしまったときなんてもう…どうしようっていうくらい衝撃を受けました。この時のアルスの衝撃といったら…悲しすぎて涙が出そうです。ルナフレア&キラの兄とかのあたりも、何とも衝撃的でしたね。序盤からこれだけ悲しいことを起こしてしまうかっていう。でもそれでアルスやキラは、自分が生きていく道、どうやって進んでいくかの覚悟を決めるということで、まさにこれから冒険を始めるにふさわしいと思いました。
ただ、さすがゲームって感じで、“世界樹を使った蘇生“っていうのはいかにもでしたね。最後が本当によかったです。勇者が武具が壊れて新たな武器を求めるとかも、まさにゲームをプレイしているかのような流れでした。
キャラクター設定の良さが光る
とにかく、1人1人の話が濃いです。剣王、拳王、賢王という3人の偉大な血を引き継ぐ仲間たち。拳王であることを早いうちから自覚できていたのはヤオだけ。さすが唯一の女性ですね。ヤオは悲しみと決意の出来事をずいぶんと小さいうちに経験済みだったので無理もありません。剣王と賢王は、まともに旅ができるようになるまで大変なものでした…でもポロンに関しては、読んだときの感じは一番衝撃的でしたね。技の融合という、自分で新たな強さを無意識のうちに手にしているというおもしろさとカッコよさ。これはゲームだとあまり感動がわかなくて、このマンガだったからこそしっくりときたし、感動もしました。ポロン覚醒の前に、仲間だったモンスターを失った時もね…相当悲しかったです。それぞれが、誰かの死を乗り越えて、今ここに立っている。それがすごい伝わってくるし、それくらい命って大事だなって考えさせてくれます。
そして勇者3人いるという驚きもまた…良かったポイントの1つです。ジャガンにいたっては何とも悲しすぎる過去を抱えており、フレイアのおかげでアランになるし。アステアなんて実は女性だし…もう話がおもしろすぎます。まともに勇者一直線だったのはアルスだけですね。一番ラストのポロンの結婚式のときも、アルスは勇者姿で登場していましたが、実に先が気になる感じでした。
最終決戦前の、ヤオとキラが結婚した描写、キラの葛藤、ブラックシーザーとの友情、そして二人の最終決戦での登場シーン…これが印象的ですね。ずいぶんとカッコよく、二人がマダンテで死ぬ時も、あー美しすぎるなと思いました。死を美しいとは書きたくないけれど、本望で死ぬというのはきっとこれくらい潔いものなのかもしれないと思います。
サブキャラの設定もまた充実
タルキンさん、タオさん、ティーエ、ルイーダ、イヨ、イズナ、ギラン、ファン、ピエタ、まさかの竜王のくだり…どれだけ人物出せば気が済むの!?というくらい盛りだくさんな人たち。でも全然ごちゃごちゃ感はなくて、みんながいい人で、いい働きをしていました。竜王なんて…まさかここまできてそうなるとは!っていう驚きがありました。最後まで悪役でも良かった気もするんですけど、悪が果たしてどこで生まれたの…?と考えさせられるものでした。タオに至っては冥王ゴルゴナの兄という設定。タルキンさんに次ぐ大好きなおじいさんです。ゴルゴナに言った言葉なんかも素敵でした。
哀れで、最後まで過ちに気づかずに生きた愚か者。されど忘れるな、それでもお前は、わしの弟なのだ
家族って、どんなに悪いことしても、なんか憎めない気持ちになりますよね。それをまさに表現している言葉だと思いました。ただ、ニフラーヤだけじゃなくてもっとこう…すごいものだったと思うんですけど、自分の中ではあっさり感がハンパなかったです。
また、あらゆる命のつながりの末に今があり、あらゆる犠牲の上に自分がいまここに立っている、そしてこれからまた紡いでいくという感じが、この豪華な面々の存在によって強固になっていると思います。
時間軸が同じ6年分の成長がうまく描かれている
最初はうーんってぐらい幼くて、一人一人が自由な子どもとして描かれていました。そこから、いろいろな犠牲と、なぜか子孫だからという理由で突き付けられた運命、そこから逃げたくなる気持ちだったり、受け入れて進んでいく心、絆が1巻ごとにどんどん深まっていきました。最終巻のキャラたちは、ただ身長が伸びてかっこよくなったわけではなくて、表情から決意もずっしり伝わってくるので、なおよかったと思います。なんで俺がこんなことしなきゃいけないんだろうって思うんだけど、誰かがやらなきゃいけなくて、それしか生き延びる道がなくて、それなら自分たちがやってやろうって思える。そういう勇者ご一行、会社にも欲しいと思います。(笑)
最終巻読んでから、また最初に戻って読み始めると、成長具合がよくわかります。イマジン自体も果たして悪かったのやらどうなのやら…結局は人間の底なしの欲望に破滅が潜んでいるってことなんでしょうね。それに打ち勝てるようでないと、世界は平和にはならないんだよなーと少し壮大なことも考えさせてくれます。
ゲームをやってなくても感動をもらえる
ドラクエに限らず、世界救う系のRPGやってると、こういうお話は大好物なんじゃないかなと思うんですけど、お話の展開的にもいかにもありそうなお話で、感動的でした。割と悲しいことは多いので…胸が締め付けられるところも多々あるのですが、規模をすごーーくミニマムにして考えてみると、会社で何か新しいことをやろうとしている勇者が、いろんな犠牲の上に立って改革をしていくような姿が浮かびましたね。悪とされるもの・悪しき習慣や固定観念と対峙するんだけど、果たしてどちらが悪だったんだ?と考えてしまったり、自己嫌悪したり、信用してくれて理解してくれる数少ない仲間に支えられて前を向き、それが傍観者たちの心を動かしていく…そして最終的にミナデイン。一人じゃなかった。ありがとう…ほんと、人間って弱いので、いかに味方をつくれるかにかかってますよね。媚び売って自分殺して裏でどす黒く糸引いてグフフフってやるんじゃなくて、できればアルスみたいに、一人でも立ち向かっていくような心の強い人に託したいなと思うし、自分もそういう精神を磨きたいなと思いました。心の強い人が、はじめから強い人だったわけじゃないんですよね。いろいろなものを乗り越えた先にいつの間にか強くなっていたという話で。なので、自分を見失わずに生きていきたいなと思います。最終的に壮大な深読みとなりました。(笑)
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