和む恋愛漫画
相性最悪の2人
容姿・成績はともに普通で、自分の性格は温厚だと思っている主人公の女の子、五月七花(さつきなのは)と、容姿端麗・成績優秀・運動神経抜群の学校の王子さまこと、常盤葉月(ときわはづき)。
この2人の高校生活を書いた漫画だが、登場人物はとても個性的で、話も2人の出会いからまるっと1年間を描いた内容で短くまとまっているため、とても読みやすいというのが第一印象。
さらに津田雅美の代表作である「彼氏彼女の事情」のように重暗い部分はないため、とっても落ち着いた気持ちで読めるのもよかった。
七花には仲の良い幼馴染2人がおり、一人目は成績優秀で先生や他の生徒から一目置かれる御堂蓮花(みどうれんげ)と、フランス人と日本人のハーフで「オスカル」と呼ばれる竜崎のばら(りゅうざきのばら)と学生生活を共にしている。
2人の怪物的な幼馴染がそばにいて埋もれがちな七花は温厚な性格が取柄だと思っていたが、高校に入学し葉月と出会ってからは自分の中で彼に対する悪意が止まらず毒虫が存在することに気付く。
それを作中では「怪物」といい、七花は葉月を見かけるたびにこのモンスターと戦い、葉月の行動に毒づく七花が読んでいて飽きない。というのも、「私の中のあの感情も怪物なのか、、、」と思いながら読んでいくと、自分も毎日怪物と戦っていたんだなあ、と七花の感情に共感もできた。
怪物はいなくなり、2人の関係の再構築
ついに我慢の限界で、怪物を外に吐き出してしまった七花に初めて女の子に嫌われイライラする葉月。
そこで葉月に更なる悪夢が。今まで女の子の中での葉月の存在はピエロのような見せ物だったと知り、葉月の中の怪物、「キラキラピエロ王子」は消滅した。
王子様でなくなった葉月は、それに気づかせてくれた七花に興味を持つようになる。
平凡ながらも勉強・運動・食べること等何に対しても一生懸命な七花を見て、何でも簡単にこなしてしまう葉月は徐々に魅かれていくのも分かる気がする。
実際、がむしゃらに頑張る七花を私も本の前で応援したい気持ちになったりもした。そこで七花に色々教えて仲が深まる2人の雰囲気はとっても和やかで読んでいて心地よかった。
2人が仲良くなってからは、およそ女子高生とは思えない会話や遊びもこのお話しの良い所の一つだと思う。家の縁側でお茶を飲んだり、葉月の手作りの料理で幼馴染2人も交えてご飯だべたり、虫捕りしたり、、、。ゆっくりと2人の仲が育まれていくのが分かるような展開に、キュンよりもまったりした気持ちにさせられた。それにより、七花の中の怪物も出てこなくなるのも良かった。
七花と葉月の関係の変化
どんどんお互いに惹かれ合いドギマギしている2人の距離感もとても見物。
今まで王子様だった葉月は恋する、ということもなかったため、七花のことを考えて一人悶えている葉月にはキュンとさせられた。
この辺から、葉月視点での描写が多くなってくることもこの漫画の魅力の一つに思う。
普通の少女漫画だと主人公の女の子目線ばかりだが、この漫画は男目線で描くことが多いため、より主人公の可愛さが際立ってくる。実際、葉月の感情の中の七花はすごく可愛くて、「男の人はこんな感情を抱くんだ」と考えさせられた。
最後は葉月からの告白。ただそのセリフが「自分の中のキラキラピエロ王子を消してくれた、素直で可愛い七花が好き」というもの。その告白に、葉月が好きなのは自分ではなく、邪魔だった怪物が好きだったんだとショックを受ける七花。
ここで七花の怪物が再復活するのところがすごく面白かった。結局葉月が七花を抱きしめて怪物を抑えるんだが、最初から最後まで葉月と怪物に悩まされる七花は、とっても魅力的な主人公だった。
怪物というキャラクターも、登場人物もすごくキャラが立っていて私の中で何度読み返しても飽きない作品の一つである。
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