お金にまつわる恐怖が満載
大注目の俳優たちが勢ぞろい
前作も注目の俳優たちが多く出演していたこの映画ですが、今回も人気の高い俳優たちが多数出演しています。山田孝之さんとも個人的に交流のある綾野剛さんをはじめ、勇者ヨシヒコで共演している木南晴夏さんのほかに、菅田将暉さん、窪田正孝さんと今ではいろいろなドラマ・映画に引っ張りだこの俳優がメインキャストとなっています。それと女優陣には人気急上昇中の門脇麦さん、高橋メアリージュンさんが起用されています。
窪田正孝さんのホスト役、菅田将暉さんの調子のいいチャラい役もすごく似合っていましたが、一番注目したいのは高橋メアリージュンさんです。ウシジマくんを極度にライバル視している金融屋の経営者ですが、ふだんはボソボソと何を言っているのかよくわからない話し方とは対照的に、突然キレて大声で叫んだり、「緑色のキャンディを抜いとけって何万回も言ったよな」と訳のわからない言いがかりも妙にまた見たいと思ってしまうようなキャラクターを演じられています。「パート3」「ファイナル」ともに出演されているので、個人的には彼女に注目して見たいと思っています。
必死に成り上がろうとする屑原と麗
ウシジマくんの方は特に屑原に対し何とも思っていないようですが、葛原のウシジマくんに対するライバル視全開の態度は見ていて気持ちいいぐらいです。屑原は、のし上がるためにヤクザの熊倉に取り入っていますが、その熊倉の態度からいっても、葛原はまだ金融屋になりたてのアマチュアで、ウシジマくんはその道のプロといった扱いです。そんな扱いの違いが余計に屑原のライバル心に火をつけるのかもしれません。
麗はナンバーワンホストになるために、大物実業家である牧子に取り入ります。そして高校中退のフリーター彩香にも、二人でナンバーワンホストの夢を見ようと、お金を工面させます。そして、現ナンバーワンホストの大成に勝とうと、勝負を仕掛けます。
ここでは屑原と麗、この二人がプロとしてナンバーワンとして認めてもらいたくて躍起になっている姿が見られます。どちらも自分の力を主体としてではなく、実力者の力を借りてのし上がろうとしている姿が印象的ですが、最後には大きく二つに道が分かれてしまいます。屑原の方は、愛沢によって熊倉は殺されてしまい一見後ろ盾をなくしてしまったように見えますが、もともと取り立てには自分のスタイルがあり、熊倉の力で取り立てていたわけではなかったためか、強力な後ろ盾を失ったというだけで特に仕事に支障をきたしているわけではなさそうです。一方麗は、彩香のがんばりで一度はナンバーワンホストになりますが、大きな顧客を抱えている大成に比べ、主となる財源は牧子だけです。一か月だけであれば、無理をすればナンバーワンになることができるかもしれませんが、とても続けてナンバーワンになれるほど財源があるわけではありません。結局彩香のストーカーによって商売道具でもある顔を台無しにされ、ホストの道さえ閉ざされてしまいました。
この二人の道が大きく分かれたのは、他人に対しどれだけ依存していたのかの違いでしょう。ホストとしての力があれば、顔を整形するお金を出してくれる顧客もいてまたホストとして働くことができたのでしょうが、それができなかったということは、ホストとしてもそれだけの力しかなかったと言うしかないでしょう。
闇金の取り立ての恐ろしさの向こうにあるお金の恐ろしさ
この「闇金ウシジマくん」を通して伝えたいことは、闇金の恐ろしさはもちろん、お金に関する恐怖でしょう。5円でも大切なお金だと言っていた彩香が、最後にはウシジマくんに落ちた5円玉を「拾わないの?5円でも大事なお金でしょ?」と声をかけられています。一度に大金を手にする術を知ってしまったことで、お金の価値が変わってしまったことを一番表しているシーンだと思います。
闇金など高利の消費者金融からお金を借りる人は、お金に対してだらしなくギャンブルなどで安易にお金を稼ごうとする人や、お酒やドラッグなどに頼る精神的に弱い人というようなイメージがあります。そういうことでいえば、愛沢・ユキミ・ウソ虫歯などは返す当てもないのに闇金からお金を借りるという典型的な常連のタイプと言えるかもしれません。しかし、彩香の場合はそういったタイプとは正反対のところで生きてきたタイプと言えるでしょう。それが、麗と出会ってしまったために闇の世界へと引きずり込まれてしまいます。そして、麗自身も親に自分の指名客になってもらってまでもホストを続けようとする健気なところから、親の自殺・大物実業家の顧客をきっかけに変わってしまいます。一度お金に対する価値観が崩れてしまうと、手にしようとするお金の単位がどんどんおかしくなり、結局もとの生活には簡単には戻れなくなってしまうというのが、この二人を見ていて思います。そして、それは特定のタイプの人だけではなく、誰にでも起こりうるかもしれない怖さを見ている人に伝えているのだと思いました。
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