原作の良さが伝わってこない作品 - ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜の感想

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ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜

3.253.25
映像
2.75
脚本
3.00
キャスト
3.75
音楽
2.75
演出
3.00
感想数
2
観た人
2

原作の良さが伝わってこない作品

2.52.5
映像
2.0
脚本
2.0
キャスト
3.0
音楽
2.0
演出
2.0

目次

下世話が目立つ映画

筆者が『ジヌよさらば』という映画を知ったのは、たまたま別の映画を観にいった際に、予告編を見かけたことに起因する。

そこでは、松田龍平演じるお金恐怖症になった公務員が、お金の必要のない田舎へ引っ越して暮らす、という趣旨の説明がされており、その内容に興味を持って本作を観ることにしたのだが……実際に観てみると、そういった田舎暮らしに重きを置いた話ではなく、ギャグと下ネタがほとんどであって、そこに期待した筆者はだいぶ面食らってしまった。

この映画の印象を一言でいうと、「汚い」に尽きる。

断っておくが、筆者はバラ園のような様式美をどの映画にも求めている訳ではない。だが、『ジヌよさらば』の「汚さ」は、例えば滅多に人の立ち入らない隠れ家感のある公衆トイレを覗いたときのような、「うっ」と顔を背けたくなる醜さなのである。

登場人物の品性、行動原理、映画としての映し方、何もかにもが汚い。きょうびドキュメンタリー映画のほうがよっぽど美しく撮るだろうというぐらい汚い。

そして「うっ、汚ね」という感想を抱いた作品が面白いと思えるはずもなく、結果的にこの映画に対して良い評価をつけられないでいる。

果たしてその「トイレ的な汚さ」はどこにあるのか、考察していこう。

この映画は何を言いたかったのか?

まず、この映画の「汚さ」の要因として、「物語の向かうところ全てがあやふや」ということにあるだろう。

主人公はお金恐怖症になったから田舎で暮すという筋書きなのに、そこに重きを置かれる訳ではなく、実際は松田龍平と阿部サダヲたち周囲のちょっとウザイ人たちとの交流がぼんやりと描かれる。そこに成長もなければ人間関係の発展もない。ただただ、ぼんやりと時間が過ぎていくだけ。

物語の設定的に、阿部サダヲを筆頭とする村の人々は親切なのかもしれないが、傍目からするとただただうるさく、傍若無人で、冷たくユーモアを感じない。物語の途中でたびたび挿入される阿部サダヲの複雑な家庭環境なんて死ぬほどどうでもいいし、そんなものを見せつけられたところで嫌悪感しかない。第一、物語の本質に無関係すぎて興味が沸かないのだ。

松田龍平演じる主人公の田舎暮らしがまたせせこましく、「お金がないのにどうやって暮らしていくのか」という観客の注目を裏切り、暖房を我慢する、近所の人のおすそ分けを貰う、という現実味のないものばかり。今はやりの断捨離だとかミニマリストということには一切関係がなく、ただ我慢するという苦行に励んでいるだけ。お金恐怖症になった理由を掘り下げればもっと見どころがあっただろうに、ダイジェストで語られるだけで共感も出来ない。

物語全てを通してギャグセンスが寒いし、会話のテンポも悪い。田舎言葉もなんか違うぞ。宮城の方言じゃないぞ。原作者のいがらしみきおは宮城の農村部出身なのだが、原作もこんなに嘘臭いのだろうか?

ちょっと愚痴のようなことを書いてしまうが、最近、よくこういう「親父が自己満足で撮ったような作品」がエンタメ業界で散見される。

別に全ての映画に良作たれとは言わないが、もうちょっと観る側のことを考えて欲しいものである。これで起承転結、映画の最初から最後まで追うのは辛すぎる。筆者が意識高い映画ファンなら途中で離席してもおかしくないほどの出来だった。

最初は面白そうだと思ったのに、なぜこういった「イメージと映画の内容がかけ離れる事態」になるのか、以降はこの問題について考察していきたい。

宣伝が一番の問題なのではないだろうか

なにも『ジヌよさらば』だけに限った話ではないのだが、最近の映画は、プロモーションと本編の内容がかい離しているように思えてならない。

少し前なら「映画業界どうなってんだー」と笑って済ませたが、これはちょっと深刻な問題である。

観客が予告編を観て、「これは面白そうだな、観てみたいな」と期待していたはずの映画の内容と、実際の作品の内容がマッチングしないのである。大げさな言い方をしてしまえば、広告詐欺といってもいい。

筆者のように先入観を持って映画を観た人はがっかりして酷評してしまうし、何より映画は高いものだ。こういう言い方は好きではないが、もしスクリーンで観て、この映画とのマッチング不足の人がいたとしたら、1800円“損をした”と思われてしまう。これではこの国の映画離れをますます深刻化させてしまうだろう。

恥ずかしながら不勉強で、どういった仕事に就いている人がこの予告編を編集しているかよく知らないが、もう少し観る方の側に立ってプロモーション展開してほしいものである。

『ジヌよさらば』も、序盤10分だけを切り取った「お金恐怖症の男が田舎に住む」という詐欺のようなセールストークをするべきではなく、この作品の真に迫った広告をたてるべきだっただろう。予言してもいいが、本当に客から目先だけの金を奪うだけを考えている業界は衰退するぞ。

色々愚痴ってしまったが、要約すると映画一本に1,800円は高いよ、というオチでした。

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個性豊かな俳優たち主演の松田龍平始め阿部サダヲ、西田敏行に松たか子、個人的に大好きな片桐はいりまで豪華な俳優たちが集結した映画です。パッケージを見て面白そうと思ったわけではなく出演者を見て面白くないわけがないと思って手にとった作品。やはりベテラン俳優がいい味出していて冒頭から引き込まれて行きます。松田龍平扮するタケはお金アレルギー。そもそも金属アレルギーとは聞いた事がありますがお金アレルギーってあるの?村まで来るのに公共交通機関使ったでしょ?とつっこみどころは満載ですがクールに演技します。タケは過去のとらうまから逃げるように東京を離れ「お金を使わずに生活をする」と田舎の限界集落に移住します。そして村の村長である与三郎(阿部サダヲ)の助けを借りながらも自給自足をスローガンに田舎暮らしをするというお話し。よそ者を嫌う田舎の人がよく愛想もない挙動不審なタケを受け入れたなと田舎暮らしの私は感心...この感想を読む

4.04.0
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