SF、ラブストーリー、エンターテイメントがそろった作品 - トランセンデンスの感想

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SF、ラブストーリー、エンターテイメントがそろった作品

3.03.0
映像
4.0
脚本
3.0
キャスト
4.0
音楽
3.0
演出
3.5

目次

番宣に疑問

2014年の夏映画として公開された本作。ジョニー・デップ主演というのに、夏休み前に公開が終わるという扱いを受けた映画です。個人的には、ストーリーはわかりやすく、でもテーマ性もあり、派手な銃火器アクションありの緩急がしっかりとした作品でした。なので、パイレーツ・シリーズまでとは言わないので、しっかり番宣をすればもう少し話題になったのではないかと思います。

さらに、「もし、コンピュータに科学者の頭脳をインストールしたら―」というコピーと怖い顔をしたジョニー・デップのアップというポスターも、鑑賞後疑問を抱きました。というのも、近未来SFパニックアクション映画ではなかったからです。スーパーAIの発明と暴走と人間の戦いを縦軸とするなら、それらを開発して行動していく妻の動機が横軸です。横軸に注目すると、完全なラブストーリーでした。AIになってしまったウィルが生身の人間として話すのは冒頭だけなので、ほぼ妻のエヴリン視点で描かれますし、エヴリンの行動の動機はずっと愛する夫と一緒にいたいという純粋な気持ちだけです。ラストシーンも、取り返しがつかないほど暴走したコンピューター・ウィルもまた、エヴリンのためにAIになって手に入れた力を使って出来ることをしていただけだったという。(出来ることというのが、ケタ外れで既存の社会が混乱してしまったのですが。)どうみてもラブストーリーだと思います。天才同士が結婚して、常人が出来ないことが出来てしまったからSFになっただけで、やっていることは切ないラブストーリーです。日本人はラブストーリー好きが多いと広告業界は思っているらしいので、横軸をフィーチャーしたら夏休みにカップル受けしたのではないでしょうか?ポスターは、ウィル&エヴリン夫妻の笑顔とか。どうして夏に寒色の暗い顔したポスターなんでしょうね。

テクノロジー対人間

テクノロジーの発展は目覚ましいですね。手塚治虫やアシモフ、アーサー・C・クラークのSFというのは、「まあ、今から50年から100年以内くらいにこんな風になっているだろうな」という様子だったのが、現代では4、5年前の近未来SF映画が実現しそうな勢いに見えます。テレビなんか見ていると、「あれ、こんな技術使った映画なかったっけ?」なんて最近思います。トランセンデンスは、そのありそうで出来ないラインというのが絶妙でした。

AIは実現してきましたね。ウィル・スミス主演の「アイ・ロボット」なんてのは、本当にすぐそこまで来ていそうです。根っからの文系人間である私は、ウィル・スミス演じるアナログ人間の刑事デルに共感しました。きっと本作に出てくる過激派組織RIFTもそういう人たちなのでしょう。開発する科学者側だけではなく、全く対極にいる人たちが登場したことでよりテーマがはっきりしたと思います。テクノロジーに人間が飲み込まれて、アナログが最終手段というのも皮肉がきいていました。手書きの手紙が一番信用できるというシーンがそれを象徴していました。 

評価が低い本作

批評家からは酷評されていて、ネットの評判も良くない本作。しかし私は、散々書いてきた通り面白く見られました。本作は劇場で見たのですが、劇場で見る場合、予告編程度の前情報しか持たず見に行くことが多いです。そして、お金がもったいないので全力で楽しんで見ます。そのせいか、面白くないと感じる映画は少なめです。見終わってどうしてもストーリーが理解出来なかったり、面白くなかった時だけネットのレビューをのぞきに行くことにしています。今回、この記事を書くにあたってネットを見て、ちょっと驚きました。こんなに評価が低いのかと。

人工知能を扱ったSFだけど、ちょっと違う視点で作りました。ジョニー・デップにモーガン・フリーマン、ポール・ベタニーとかすごいキャストでしょう。……だからどうしたという評価なんですね。そう言われると実際、少し詰め込みすぎで中途半端ではあったかもしれません。私は、SFというよりウィル&エヴリン夫妻の愛情の深さとか、ポール・ベタニー演じるマックスの複雑な立ち居位置なんかを、ドラマとして面白く見ました。詰め込み気味に感じたストーリーも、私には許容範囲でした。SFパニックアクションを期待してみると、メッセージもAIの使い方も弱く見えるかもしれないです。

この映画の評価を見たのが、半分以上これを書いた後でした。あまりに酷評されていて、散々面白かったと書いた自分の文章が恥ずかしくなりました。しかし書く前に見なかったので、見た当時の感想が書けたと思います。冒頭に書いた、映画が好きでなくてもエンターテイメントとして楽しめそうだと思ったのは本当です。

私は劇場で見るにしろ、家で見るにしろ、安くはないお金と2時間以上の時間をかけるのだからどこかいいところを探します。人間関係でも嫌いなところは目につきますが、好きになろうとすると大変です。そもそも映画が好きなので、どんな作品も「好きだ」というフィルターをかけて見ているのだと思います。そのフィルターが2時間の間に段々はがれていって何も残らなくなった作品が、面白くないと思う作品なんですね。中にはどうしようもなく酷評も納得の映画もありますが、「好き」フィルターをかけて見てみるのもいいかもしれません。

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