いつの間にか椿荘に住みたくなっている自分がいます
ダメな春子を好きになる
一人暮らしを始めた春子に、突如訪れる危ない生活。ちょっと怒りっぽい性格の主人公や利己的な性格の大家さん、アパートを改造するお兄さんなど、自由奔放なキャラクターが次々に現れます。最初はそれぞれのキャラクターの欠点ばかり見えてしまいますが、徐々に愛着がわいてきて、読み進めていくうちに自分もアパートの住人になったかのように、一人一人が愛おしく思えてしまいます。始めは恋愛がメインで話が進んでいくのかと思いきや、住人とのハチャメチャバトルが枚話繰り広げられて、違った意味でドキドキしながら読み進められます。
助け合いは幸せ
寮生活や、シェアハウスをしたことある人にとっては「ああ、こんなこともあったな」なんて思える場面が多々ありますが、アパート生活でこういった助け合い(殴り合い?)みたいな親密な関係になれるのは、なかなかないと思われます。今時、隣の住人から食べ物のおすそ分けをいただくようなことは、ほとんどなくなってしまいましたが、冷たい社会に生きる現代人が求めているものは、こういった損得勘定を度外視した、赤裸々なコミュニケーションなのではないでしょうか?
住みたくなる
こういった昔ながらの木造アパートでは、近隣十人の生活音や、雨漏り、湿気、経年劣化など、いろいろな部分で鉄筋コンクリートの建物に劣ってしまいますが、日本人のメンタリティとして、木造建築に憧れる人も少なくありません。だから、あえて古い建物に住むという人もいるし、「ぬくもり」といった数値化できないものへの憧れが生まれるのでしょう。それゆえに、全員が互いに干渉しあいながら住める椿荘に、私自身も少しあこがれを抱いてしまいました。一人暮らしを始める人にとっては、近隣住民との良好な関係を築くということは、一つの目標だと思われますが、実際にアパートに暮らしてみると近隣住民とはあいさつ程度の関係で、深いコミュニケーションをとることは少ないのではないでしょうか?だからといって、シェアハウスのような、毎日顔を合わせるような関係では、すぐに亀裂が入ってしまいそうで、「ちょうどいい距離感」でのコミュニケーションの場というものが、日本では絶滅しつつあると思います。もちろん、漫画的な誇張は多々あるにしても、実際にこういった場面に自分がいたらどういった対応をとるのかなど妄想しているうちに、いつの間にかその世界の住人になっていることに気づくでしょう。
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