将来像を垣間見える作品
近未来の日本をより現実的に
本作品に出会ったのは2012年のアニメ放映一期を見たことがきっかけでした。
作品の中の世界では2112年の世界崩壊後、紛争の余波を食い止めるためにいわば「鎖国」状態かつ、人間の不安定な感情をコントロースせんと「シュビラシステム」で国民の心理状態を管理するというよりリアル(現実的)に可能性がある設定の世界観に、一番最初にショックを受けるでしょう。
そもそもサイコパスとは心理学用語や犯罪心理学で使われる用語ですが、その中身は「精神異常」、「精神病質」や「反社会的人格」と言われています。
アニメでは「サイコパス」とタイトルをつけていますが、漫画では今回「監視官 常守朱」になりました。
なぜ振り分けをしているのか、それとも振り分けをせざるをえない事情があったのか、確かな事は定かではありませんが、それを疑うぐらいとにかく衝撃的な内容です。
アニメ放映が終了し、劇場版ロードショーも完了して後にすぐ、「監視官 常守朱」は発売されました。
基本的にアニメ放映のストーリーを忠実に落とし込んでいる内容ですが、よりリアルに、漫画ならではの独特な描写がさらに作品の「闇」の部分を強調してきます。
公安刑事課に所属する主人公:常守が見ていく初めての命のやり取りの現場と、人の「死」がすぐそばにあるお話なので、目を覆いたくなるようなページは、正直頻繁にあります。
しかし読み終わった後に過去の日本で起きているある事件を酷似していることろがあると気付くのです。
全くの夢物語ではない
おそらく読者に連想させる目的なのではないかとも思いますが、私が直感して思い出したのは、1997年(平成9年)の神戸自動連続殺傷事件。
別名「酒鬼薔薇事件」が脳裏に鮮明に思い出されました。
そしてさらに、この漫画が単行本販売開始した最中で、某事件の犯人が「元少年A」として手記「絶歌」を出版し世間はどよめいたことが記憶に新しいと思います。
敏感な人であれば、この出来事に何らかの関連があったのではないかと疑問と思考が走ったのではないでしょうか。
結論、何の関連もなかたのですが、まるで「おぼえておけよ」と19年前の亡霊が現れたように感じました。
話がずれましたが、こういった事件だけでなく、今も昔も変わらない人間の中の「闇」が、小さな肉体にためられたまま近代化してく日本の姿を、近代化のいい部分だけではなく、さらにもっと奥の深い深い部分を表した作品です。
少し前の刑事ドラマをみてるみたい
小学生の頃によく見た人情は刑事ドラマが、熱く熱く話が進んでいくのをみて、とても楽しかったのを覚えています。
いまでも刑事ドラマやサスペンス、コミックなど多いですが、本作品の刑事ストーリーはどこかちょっと懐かしいにおいがします笑
ダンディーなオジサマが演じていたドラマから、漫画の中の美少女新米刑事という設定ではありますが、「人情」が全面的にストイックに描かれています。
また、それに加えて、刑事独特の組織のドロドロした部分や、職場チームの団結力、加害者・被害者の人間模様に至るまで細部に設定されていますから、憶測の幅も広がり楽しいのです。
また、躊躇なく主人公の友人が殺されます。
その後の主人公の立ち直り方がめっちゃ早いのですが、ときたまーに思い出される回想シーンもあるから、いいのかな?と思いつつ、もう少しそこは丁寧に描いてほしかったと思います。
アニメで表現できるもの、漫画で表現が伝わりやすい物はバラバラですがその点で少し評価を下げさせて頂きました。
少し複雑に設定がある為、状況を理解するのに何度か読み返してしまいますが、一度理解が確定すると推測・憶測の幅が広がります。
主人公:常守の目線で進む話はテンポよく、常守の成長を感じながら読み進められます。
特に私の場合は、事件が起こるたびにぱっと状況を見ながら読み、また戻って改めてキャラクターたちの細やかなしぐさや言動に隠れた所を注目して読むようにしています。
様々な面からみられる情景も、1つではない事もこの作品の特徴でしょうか。
特に、自分の為の勉強にもなると感じたのは、のちに常守のサポート役にもなる雑賀という登場人物の見方は参考になりました。
基本的な人間の生き方をベースに、人間の思考や各文献から学んだ知恵を使って分析をする事の基本を、常守にレクチャーするシーンがあります。
文字だらけでちょっと読みづらいですが、自己分析を働かせて謎に追い着く考え方と持っている武器は、本来の私たちの生活にも必要なものだと考えさせられました。
また、この作品では監視官・執行官とチームの中でわかれている為、とりわけ多く複雑な事情を持った執行官の人間味あふれる背景は目が離せませんでした。
なぜなら、それがそのキャラクターの性格をより深くまで知ることができるからです。
中でも常守の上司にあたる監視官とその下で働く立場の執行官には父親がいます。
父親はシュビラシステムが始まる前の、いわゆる「デカ」だったという設定です。
時代が変わっていっても、刑事としての誇りは忘れないというその背中がまた味わい深いものがありました。また、そんな古き良き時代の情熱をもって家族をみすてた父親の愛と、変わった時代の中で自分の使命を果たそうともがく人間模様がまた1シーンとしては現実的に起こりうる可能性があるのではないかと感じされる要因でもあります。
最後には父親の死で常時の監視官も執行官に落ちてしまうのですが、それもまた主人公の1つの成長を描く場面であったのかもしれません。
個性豊かなキャラクター
まずは主要な登場人物は、すべて凝った内容となっており、振り仮名無しでは読めませんでした笑
名前はかっこよくて、わかればあっという間に覚えるのですが、「感じで全部書いて!」と言われたら、学生の頃の小テストより難しいと確信できます。
そして、現代化されてるなーと感じた設定では、同性愛のキャラクターもまぎれていますので、昨今GLBTについて注目され始めている日本の将来シーンを見られる場面であると捉える事も出来ます。
また、最近開発されで活用方法が話題を呼んでいる「ドローン」は、ちょうどお話の中で労働補助ロボットとして登場していたので、本当に世間一般に登場するなんど夢にも思ってみませんでした。
利用基準やら法律やらモラルやらで今菜もめていますが、いつかお話の中のように、朝食をセレクトしてくれたり、今日のラッキーカラーを教えてくれたり、お見送りやお出迎えをしてくれたりできるようなドローンが誕生したらいいなと、純粋に思います。
世界からも注目の現実的世界
この作品で示唆されるのは、日本だけに限らず世界を巻き込んでも起こりうる未来像であることではないかと考えます。
犯罪を防ぐため、秩序を整える為、国を守る為、生きていく為。
掘り下げれば、ほりさげるほど、細やかな設定の裏側には現状日本の環境問題、エネルギー問題、食糧不足事情などが、普段注目されていない部分があえて垣間見える内容です。
また、このお話では犯罪者と扱われる槙島ですが、彼は許せない方法で犯罪を犯していますが、言い分としては納得がいく部分がありました。
というのも、彼が提示するメッセージはすべて「本来の感情にあふれた生き方を忘れてはいけない」といっているようで、シュビラに囚われた生き方の全面的否定をしています。
伝え方は過激ではありますが、考え方としては筋が通った意見であり、古き良きを大切にする心を感じました。
人間として生まれてきたことを忘れてはいけない。と強く訴えかける犯罪の数々です。
確かに面白さを感じるお話の反面、危機感を抱くよう警告を啓発している作品でもあるのでしょう。
それが、漫画を手に取った庶民が、今の複雑な政界情勢の中でも「関心」を持つ事ができると思います。
現にこれは、舞台である日本のみならず、海外メディアからも注目されており、読者に夢物語と思わせて終わりになるような簡単な漫画じゃありません。
決してメジャーな作品ではありませんし、ハッピーエンドに包まれるようなものでもありません。
しかし、私たちが民衆が普段から自分の都合のいいものしか興味が無い分、知らないでいる世界の影の部分を、いやというほど直視できます。
万民受けするような内容ではありませんが、一度読むと読んだ人の分だけ捉え方があり、考えがあり、楽しみも様々です。
これが日本という国の将来のどこまでを見通しているのかは、未来に行ってみないと分かりかねますが、少なからず本作品の少しでも要素として未来に存在するのではないでしょうか。
不思議ではありますが、未来の利便性を通した見せ方と、その代償で起こりうる悲劇の両局面を魅せるお話です。
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