エネルギッシュ
エネルギッシュ
私は昔から本を読むのが好きだ。漫画も好きだが、小説も例外ではない。ただ、好き嫌いは結構あるほうで、面白ければ何時間でも読める限りに読んでしまう反面、面白くなければほんの数行でやめてしまう。本当に面白い作品は、出だしから読者の心をとらえて離さないものだ。それは作風であったり、文章力であったりするだろう。この「博多豚骨ラーメンズ」は、作者の文章力が安定している事はもちろん、なかなか他の作品には感じられない「エネルギッシュさ」が感じられる。きっとそれが、この作者の持ち味の一つなのだろう。
登場人物が多い事のストレスを感じさせない
この作者に実力がある…と感じるのは、ぞろぞろと沢山出てくる登場人物の一人一人がいきいきとしている点からも感じられる。
「登場人物が多い」のは、作者にとって決して楽な事ではないだろう。下手をするとキャラクターが被ってしまい、誰が誰だが読者は分からなくなってしまう。え、この人誰だったっけ…と戸惑いを感じながら読むのはとてもストレスだ。私ならすぐに読むのをやめてしまう。
しかしこの作品は、主要キャラが十人近くいるにも関わらず、それぞれが個性に溢れている。その時々で全ての主要キャラが主人公になり得るが、それがまた面白い。一人一人をうまくいかす事ができているから、「登場人物の多さ」はデメリットではなくメリットとなっている。
思いきった設定
この作品の舞台は、実際に存在する「博多」である。こんなにも殺し屋やら復讐屋やらがぞろぞろと出てくる作品で、よく作者は思いきったなぁというのが正直な感想だ。もし私が作者ならば、そんな事は怖くてできないだろう。学園ものやサラリーマンものならいざ知らず…作者はあとがきの度に「これはフィクションです。博多はとてもいい街です」と書かれているが、そうして気を遣いながらも舞台を現実の場所にしたのは、きっと作者の想いゆえなのだろうと思う。
そしてその「思いきった設定」がなければ、きっとこの話はうまくいかなかった。想像上の世界ではなく、現実の世界を舞台にしたからこそ、この話は面白い。実際に存在する建物や場所の名前もしばしば登場し、読者は「あぁ、あそこか」と想像する事もできるから、さらに話の中へと引き込まれていく。想像が広がる。だからこの作品は、舞台が「博多」という場所だからこそ成功したのだと思う。
そして「博多豚骨ラーメンズ」という題名もインパクトがあって良かった。題名からは、殺し屋たちのお話とは想像がつかなかったから、意外性も満載だった。
これからどう進んでいくのか
この作品の主要キャラは、全員が殺し屋であったり復讐屋であったりする。そして、そうなってしまった背景が描かれ、それぞれの悩みや苦しみが描かれている。もしそうでなければ、この作品はつまらないものになっていただろう。
彼らがこれからどうなっていくのか、作品はどう進んでいくのか。とても興味深い。
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