幸なき道を進む出来過ぎの主題歌に載せた秀逸ストーリー - 高校教師(1993年)の感想

理解が深まるドラマレビューサイト

ドラマレビュー数 1,147件

高校教師(1993年)

4.004.00
映像
3.50
脚本
4.00
キャスト
4.50
音楽
4.50
演出
3.50
感想数
1
観た人
1

幸なき道を進む出来過ぎの主題歌に載せた秀逸ストーリー

4.04.0
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
3.5

目次

「あたしが全部守ってあげるよ」

今では安易に誰もが使うだろう決定打の愛情表現!

ここから始まった。安定した約束された人生を送れるはずだったのに、後にもろくも崩れて行くことになる高校教師羽村を守りぬく生徒の繭が現れた。想像を絶するほど深い闇を抱えているとは知らずに。求めただの高校教師と女子高生の禁断の愛ではないところに行きつく凄さ。当時豊作だったドラマ界、特に金曜10時のTBSなんて私の楽しみの時間だったから本当に印象深い。何十年たってもいくつものシーンが蘇る、主人公を救うにはあまりにも残酷すぎて衝撃を受けた初めてのドラマかもしれない。ハッピーなシーンがあっても決して長く続かないと誰もが計り知れる切なさに輪をかけて挿入歌の存在。

真田広之扮する羽村先生の平凡で良い考えの生き方とはいえ、戸惑う顔や、当時の婚約者へお願い求める姿はやっぱり見る度魅惑ありすぎ。いくら地味な平凡な生き方を求める先生の設定とはいえ、いやいやモテまくりだろうなあとうっとりして。

キャスト

桜井幸子の繭はとっても良かったな。元々静かな雰囲気持っているし、みんなとワイワイするするイメージないから。 内に秘めたものを簡単に出せない孤独さと共に それでも希望を見出したいと思っていたんだろうな。羽村との出会った時に救いを求めた繭の心は一瞬でも明るくかんじたのかな。真田広之とは仕事上だけの付き合いかなと思うくらいのイメージが却ってドラマの中での愛合う状況が良い具合に緊張感ももたらすと思う。
気心知れた役者同志のトーク番組であけすけにさらすより みえない想像できない関係性のほうが私は好きだな。

展開

羽村と繭の心が求め合い進んでいて大事なのはそれはもちろんはっきりラインを超えた回。嫉妬から羽村の時計を投げ捨て、あとから無我夢中になり雨の中自ら放ったものを捜し出した。終電を逃し雨に濡れ、一部屋の古びた和室で二組の布団を並べてそして
手をからませ「本当の私を知っても嫌いにならないでね」羽村より覚悟を強く持って結ばれた時。繭に気持ちが入り込んでいてだか、真田広之へ二十歳そこそこの浅はかな私の思いを重ねてか私は高揚した覚えがある。当時 その「本当の私」ってどんな状況だろうと思ったが まさかの展開には本当に読むことが出来なかった。
今のご時世では あらゆる禁断を考えることも出来るし フィクションの世界ではこれも見るドラマとしては興味の対象としてなくはないのも正直ある。だから ドラマストーリーが先行して視ている私達を引っ張っていてくれた本当にドラマって楽しいと思えた良き時代かな。繭は幸せなひとときを感じ入る事が出来たのならそれで良かったんだけど、かたすみには拭えない後に浮かばれる父との禁忌な関係が幸せを打ち消していく恐怖と諦め受け入れている、どちらもあるのかもしれない。
それを感じたのは 羽村が父親の異常な束縛という概念から助け出しに棲家にたどり着いて見た繭の姿だ。
繭がいつものようにであろうシーツをからませ、悲しくも受け入れた自分であり続けていたようだから。だけど 綺麗だったんだ。悲しすぎるくらい。

タブーに挑んだ

このドラマにはいくつも犯してはならないことが多すぎた。
羽村と繭の関係と同時に進む人気のある京本正樹演じた藤村先生を大好きでいた繭の親友の直子を襲いかかり録画までして脅迫してしまう。今ではリアルに近いような事件をニュースで見るわけだから学生に近い年齢で見たときと また学生を子に持つようになった今では受け取り方もかなり変わってくる。心身傷つく行為なんて怒りを超える。と同時に予防線を張っていくのが結構大事な先生対策が必要だったりする。目線に気をつけろとか、二人きりにならないようにとか!好きになるな!と言ってもそれは無理だけど。

最後は少しの望みをかけた二人でいてほしかったけど、野島さんだからこの終わり方にはそうなんだろうなあと疑問には思わなかった。繭の行く末が羽村と一緒で結ばれて最期を迎えた?のだろうが追いつめられることはなく生き抜いていくって その時の二人にはもう選択はなかったのかな。

高校教師っていう興味心から入りやすそうなタイトル。ドカンと落としたいくつかのタブーの問題点は今になっても解決できてない重いものだ。
ドラマで唯一羽村の信頼おける同僚役の赤井秀和がいたように 今も狭いかもしれない先生の世界では共有して生徒の問題解決に勤しむなんて期待できないのが正直なところであるし。家庭で何かが起きている状態を助けれないのも事実だから。いや学校で隠れて起きていることさえも把握も解決もできないんだものね。結局のところ、平凡な幸せを逃してしまった羽村の思いの推移を考えてみた。真反対の位置でおびえていた繭の生きてきた道を建前の教師としての思いで救っていく。繭自体を受け入れたからの本当の姿を知ってしまっての嫌悪感は間違いなく本物だったろう。繭を本当に救い、根源の父への制裁を与えた羽村がようやく教師にたどり着いたのかな。

羽村と繭のひと時の幸せな瞬間であった学校の自分でいられる理科室で影同志で抱き合いキスしたシーンは素敵だった。
ビーカーでコーヒーを沸かして飲む姿も印象的だった。(私は理科や実験とか苦手だからビーカー=食塩水のしょっぱい思い出くらい・・)

そして森田童子「ぼくたちの失敗」に始まるオンパレード本当に心地よい組み合わせで素晴らしいな。野島作品の真骨頂と言わせても凄い作品だと思う。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

高校教師(1993年)が好きな人におすすめのドラマ

ページの先頭へ