美しい愛
深い愛と純粋なキャラクター
これは、妖たちの住む館を舞台としたアニメである。高校生となる、りりちよとSP(SS)の妖狐御狐神が主人公であり、皆先祖帰りで、命は短く、転生を繰り返す。キャラクター達は皆不器用で、愛らしさが溢れている。感情の出し方も、人との関わり方もわかっていなかったりりちよに、献身的で変質的な愛で奉仕し続ける御狐神。主人とSSとの絆は深まり、ついには愛も深まる。それぞれ後ろ暗い過去を抱えていたが、それを乗り越えること、また愛する者を守ろうと命をかける姿は何度繰り返し見ても涙が止まらない。
溢れて止まらないギャグ要素
シリアスなシーンばかりではなく、溢れているのはギャグのような展開が多い。誰しもが個性が強すぎて、それがぶつかる瞬間は、笑いを堪えるのが難しい。御狐神はりりちよへの変質(偏執でもある)的な愛が行きすぎた行動も笑える上に、他の住民たちも非常に個性が溢れている。見た目だけヤクザな一反木綿の反ノ塚や、女の子大好きで男にはドSな雪女の野ばら、りりちよの元婚約者でオープンな変態の蜻蛉、狸の渡狸、どくろのカルタ、百目の残夏などである。基本的には、このメンバーのおかしなやり取りがアニメの5割を占めている。そして、もう1つ注目すべきは、エンディングである。それぞれのキャラクターを象徴した、エンディングソングと映像が観るものを楽しませる。時には残夏が美声で渡狸をいじり倒す愛のあるものであったり、御狐神がりりちよへの愛をひたすら歌うものであったりとそれぞれの個性が遺憾なく発揮されており、そこも注目すると面白い。
それぞれの欲していたもの
りりちよは両親からの「愛」を求めていた、御狐神は軟禁、いや監禁ではなく「自由」を求めていた。愛と自由は表裏一体なのかなと気づかされる。誰かを想う気持ちは当人の自由であると幼いりりちよを見守りながら強く感じる御狐神。また、元婚約者として双方に関わっていた蜻蛉も、自分の感情を表現することに対して不器用な性格である。寂しさを誰もが抱え、それを補うように、館に身を寄せ合う。このアニメの舞台となった、「館」自体が理想の存在であることに気づかされる。
少々残念だと感じるのは、原作の漫画では、この先の第2章と最終章へと話が展開されていくのだが、アニメでは、りりちよと御狐神が結ばれて完結してしまっていることだ。より深い愛が現れた百鬼夜行の闘争しーんであったり、その黒幕や他のキャラクター達の抱える過去や心情にもっとクローズアップされた続編をぜひ作成して頂きたい。
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