通信機器にまつわる怪談のオムニバス - ケイタイ電話レストランの感想

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ケイタイ電話レストラン

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通信機器にまつわる怪談のオムニバス

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文章力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
4.5

目次

電話などの通信機器にまつわる怪談は、現代的な怪談と言ってよいでしょう。直接人とは交流できなくても、電子機器の周波数と霊の波長は合いやすく、時として霊界との交信ツールになることもあるようです。この「ケイタイ電話レストラン」にはそんな霊たちをあつめたメニューが、多く用意してあります

人とのつながりをもとめた霊たち

つながるはずのない電話が鳴ったりした場合、それは人との交流を求めてかけてきた、霊からの電話かもしれません。「おばけやしきのくろでんわ」や「さびしがりやのおばあさん」「最後のでんわ」の話は、そんな寂しがり屋の霊たちが引き起こした怪談と言ってもよいでしょう。

「人は一人では生きていけない」と言われます。これは自分では意識していなくても、生きている以上誰かの助けを借りて生きているのであって、決して自分一人の力で生きているわけではないという意味です。これはあくまで「生きている人」に向けての言葉であり、解釈であるかもしれません。しかしこれをもし死んでしまった人たちにもあてはめるとしたら、「自分は一人なのだと感じたとき、本当に存在を失ってしまう」と言い換えることができるのではないでしょうか?そのため「くろでんわの少女」のように、少しでも自分の存在を認めてほしくて、電話をかけてくるのかもしれません。また残してきた人たちに自分を忘れてほしくなくて、電話をかけてくる霊もいるのかもしれません。

どちらにしても、生きているときより死んでからのほうが寂しさに耐えられないのかもしれないと思わせるような怪談たちです。

状況を知らせるために通信機器を使った霊たち

この「ケイタイ電話レストラン」も、亡くなった姪からの電話を待っているオーナーが始めたものでした。オーナーの場合は連絡を待っている状況ですが、ここで紹介されている話には3つのタイプがあります。

1つめは、自分の目の前に広がる状況を母にメールしたことで、自分の死を知らせた女性の話です。メールを送ったことで自分が死んだことに付け加えて、死ぬときには苦しまなかったことを伝えたかったのかもしれません。子を亡くした親はそれだけでも耐えがたい悲しみでしょう。その上苦しんで死んだとなればその心痛は容易に想像できるものではありません。そんな母を思っての娘の最後の優しさだったのでしょう。

2つめは、これから起こる危険な場面をテレビの画面を通して知らせた話です。最後結末がどうなったのかわかりませんが、なんとかしてこの家族に危険を知らせたいという誰かの思いが、テレビ画面を通して現れたのかもしれません。

3つめは、携帯電話があったおかげで命が助かった人の話です。これは霊からの電話ではありませんが、助けてほしいという本人または誰かの強い願いが生き埋めになった状況でも携帯電話を作動させたのかもしれません。

それぞれタイプは異なりますが、どれも生きている人のことを強く思ったその思いが、通信機器に影響したと言えるでしょう。同じ怪談話でもこちらは生きている人に対する愛情を感じ、心があったかくなります。

ディズニーランドにも怪談が?

ディズニーランドにあるお化け屋敷「ホーンテッドマンション」にも怪談話があるようです。このアトラクションは999人の幽霊が登場するアトラクションです。お化け屋敷と言ってもそこはさすがディズニー、幻想的なお化けたちが次々と登場します。この「ホーンテッドマンション」の怪談は都市伝説として諸説あるようです。ここに紹介されているのは「1000人目の名乗りをあげたら、幽霊として仲間に迎え入れられる」というものですが、その他には「999体数えることができたら、1000人目として仲間に引きずり込まれる」というものもあるようです。

もともとお化け屋敷には作り物の幽霊のほかに、本物の幽霊も混じっていると言われます。そのため、霊感の強い人がお化け屋敷に入ると、本物の幽霊が現れることがあるそうです。昔はお化け屋敷といえば、お化けや幽霊の姿をした人形たちが突然ガタガタと動き出したり、急に飛び出してきたりというのが定番でしたが、最近ではゾンビ姿に扮装した人間に追っかけられるお化け屋敷も増えてきました。もしその中に本物の幽霊がいたら、本当に怖いのは「脅かされるお客たち」ではなく、脅かそうとスタンバイしている「お化け屋敷のゾンビスタッフ」たちかもしれません。

これこそ一番怖いお話?

イタリアでの電話会社とのやりとりが紹介されていますが、言葉が通じなかったために最後にはイタリア語で怒鳴られてしまいます。幽霊よりなにより怖いのは言葉が通じないことかもしれません。結局電話会社の人は「電話を切って」と言っていたようですが、ただそれだけのことでも電話の向こうで怒鳴り声をあげられれば、これほどの恐怖はないでしょう。誰もがもしかしたら体験するかもしれないことだけに、一番怖いお話といってもよいかもしれません。

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