美しい映像で甦った!!
よくぞリメイクしてくれた!
アニメ制作会社として、その名前を轟かせる「タツノコプロ」ですが、その存在を世間に知らしめたのが「科学忍者隊ガッチャマン」だといえます。
しかし、1970年代のアニメ作品であり、改めて観直すと、今どきのアニメ作品と映像クオリティーに大きな差を感じます。当時は、子供たちに圧倒的な支持を受け、社会現象にまでなったコンテンツですが、今の子供たちに受け入れられるものではないでしょう。
そして、アニメ本編の内容も、今のアニメ作品のものとは違い、古くさい印象は拭えないです。
当時、「科学忍者隊ガッチャマン」を観ていた層に向けて、リメイク作品としてOVA制作されたのが、「GATCHAMAN」というタイトルだと思うのです。
ターゲット層を絞り込まれている明確な意図に伺えるように感じられます。
OVA作品として、3巻で構成され、全編を90分ほどで観終えてしまうサイズに纏められているのは、そういったことなのではないでしょうか。子供の頃、「科学忍者隊ガッチャマン」に夢中になっていた世代は、50歳前後と考えられます。再放送されていたことも考えると、対象年齢はアラフォー世代にまで及ぶのかもしれません。当然のことながら、バリバリと働いている世代層であり、多くの時間を割けないと思います。
全編が90分で纏められていることで、手軽に観れる、という事実は大きいように思います。
また、「科学忍者隊ガッチャマン」の設定などを変えることなく、そのままのイメージでOVA化されています。古くさい内容だから、設定や物語を現代風のものに変更するということをされていません。極力そのままのイメージで、OVA化されていることが伺えます。
今の若者・子供向けにリメイクするのであれば、設定変更をしなければ、受け入れられないコンテンツだと思うのです。必殺技と呼ばれるものが少なかったり、変形・合体機構をもたない戦闘機「ゴッドフェニックス」の存在は厳しいものと思います。
そのままのイメージで制作された内容は、明らかに、当時は子供で夢中になっていた年齢層に向けられたものであることを物語っているのではないでしょうか。
レッドインパルスという着眼点
「科学忍者隊ガッチャマン」はシリーズ化されており、とても長いアニメ作品だといえます。
リメイクする際、レッドインパルスという存在に焦点を当てて物語が組み立てられている点も、アラフォー・アラフィフ世代に向けて制作されたOVA作品であることを感じられます。
他にも、OVA化するにあたり、抽出できそうなエピソードは沢山あったと思うのです。「科学忍者隊ガッチャマン」において、登場頻度が多くなかったレッドインパルスをOVA作品「GATCHAMAN」では抽出している選択にも大きな意味があると思うのです。レッドインパルスの隊長である主人公の父親は、ターゲット層として設定されている世代層に合致するのではないでしょうか。子供の頃に、「科学忍者隊ガッチャマン」に夢中になっていた年齢層は、主人公たち科学忍者隊の年齢をとうに過ぎ、18歳前後の子供がいても不思議ではない世代なのです。
つまりは、科学忍者隊ガッチャマンを憧れのヒーローとして観るのではなく、自分の子供と同じ世代に重ねてしまうと考えられます。そして、観る側が感情移入して、自身の姿と重ねる登場人物は、主人公の父親であるレッドインパルスの存在だと思うのです。
この部分を敢えて抽出している事実も、OVA制作にあたり、年齢層を絞り込んでいることを強く感じさせます。
OVA作品としてのクオリティー
前述したように、非常に長いアニメ作品を90分に纏めるかたちで構成されています。
原作アニメ作品を観ている方であれば、一足飛びで話が進んでいき、ギャラクターを壊滅させてしまうように感じられるのではないでしょうか。それほどに「科学忍者隊ガッチャマン」でのギャラクターを壊滅させるまでのプロセスは長いのです。
しかし、短く纏められたOVA作品「GACTHMAN」においても、ギャラクターを壊滅させてくれるところまで描いてくれたことで満足感をもって、観終えることができました。中途半端に終わってしまっては、中途半端な印象を抱いてしまったように思います。無理矢理でも、完結させてくれたことで、とてもスッキリします。
OVA本編における内容には、満足感は非常に高いです。
ただ、惜しいと思ってしまう点は、作画のクオリティーではないでしょうか。現代に蘇えったガッチャマンなのに、作画レベルは中途半端なように感じられます。もっと綺麗な映像を作ることも可能だったのではないでしょうか。そして、「タツノコプロ」原点ともいえるコンテンツを扱っているのだから、もっと拘って欲しかったです。
度々リメイクされる機会もないでしょうから、アニメ作品として、このOVA作品「GACTHMAN」が後世に残っていくと思うのです。「科学忍者隊ガッチャマン」というコンテンツの偉大さを考えると、その点だけは惜しいと言わざるを得ないレベルだと思います。
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