はらはらドキドキの恐怖を堪能 - 恐怖の報酬の感想

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はらはらドキドキの恐怖を堪能

4.84.8
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
5.0
音楽
1.0
演出
5.0

目次

一時も目が離せないスリルの連続

子どもに、昔観た「恐怖の報酬」という映画がとても印象的だったと話したら、「どんな内容の映画?」と聞かれ、「とにかくニトログリセリンを一生懸命運ぶ映画」と答えたのだが、このスリリングな映画の面白さはとにかく観ないとわからない。

その当時、映画喫茶という店が流行っていた。コーヒー1杯で映画が観られるのだから、佳作座よりも安かった。その日は、特にこの映画が観たくて訪れたのではなかった。偶然の出会いである。店のテレビ画面に映し出されるビデオ上映での映画鑑賞だった。「恐怖の報酬」、聞いたことのないタイトルだったし、ホラー映画を苦手とする私は一瞬観るのを躊躇した。でも、コーヒー代を払ったのだから、観ないと損になる。そんな思いで見始めたのだが、上映が始まると、喫茶店にいることも忘れるほど映画の内容にのめり込んだ。

極限状態での人間の姿を映し出す

とにかく、ニトログリセリンが爆発したら一巻の終わりなのに、次から次へと難題が持ち上がる。それ自体がはらはらドキドキの連続で画面にくぎ付けになった。ただ、危険物を運ぶだけであれだけ興味を引きつけるなんて、大人になった今ならうまい演出だと思うかもしれないし、どうせうまくいくに決まっているなどとたかをくくって観るかもしれない。でも、高校生の私にはその恐怖は身に迫るものだった。

それだけではない。極限状態に直面した人間はどんな行動を取るのか、だんだんとそちらの興味に惹きつけられていく。決して命がけのヒーローではない。お金のために体を張っただけの運び屋は、人間の汚い部分をさらけ出していく。それぞれの人物像が恐怖の中で見せる姿が私の内面をえぐった。恐怖と不安でひとときも目が離せなかった。

人生の空しさを疑似体験

35年前に一度だけ観た映画なので、実はラストはどうだったのか思い出せなかった。ただ、見終わった後、放心状態で店を出たことだけ覚えていた。

今回あらすじを調べたら、主人公はニトログリセリンの運搬に成功したけれど、大金を手にした後無茶な運転をしてあっけなく死んでしまったと知って「放心状態」の原因はこれだったのだと合点がいった。

あれだけ注意に注意を重ねて、ようやく任務を全うし、大金を手にしたのに自分で自分を滅ぼしてしまった。「恐怖の報酬」はいったい何だったのか?高校生の私は、人生の空しさを垣間見て衝撃を受けたに違いなかった。ただスリルを味わうだけの映画ではなかったのだ。

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