兄弟愛って素晴らしい
姉と弟の関係性
小野寺家の姉より子と弟の進。物語はこの二人の人生の一幕を描いています。作中には、より子は進によくお小言を言い、進はそんな姉を鬱陶しく感じているような場面が何度かあります。
私自身が小野寺家と同じく姉・弟の2人兄弟で年齢差も全く同じです。この姉と弟の関係というのは不思議なものなのです。
幼少期は年齢差があるが故に姉は母のような気持ちで弟の世話を焼き可愛がります。弟も姉を慕い仲睦まじいのですが、成長するに連れて一気に会話が少なくなります。特に弟が思春期に入ると壊滅的で姉は若くして親離れされた母のような複雑な感情を味わうことになります。
他人から見ると弟は姉を嫌っているように見えるけれど、実際は幼少期の頃のように姉を慕い続けていて大切に思っているものです。そして、姉は弟が幾つになっても可愛くて心配もするし、世話を焼きたくなってしまいます。
小野寺家も同じだったのではないかと私は推察しています。より子のお小言には弟への愛が溢れているし、いつも姉の幸せを密かに願っている進からも姉への優しさが感じられるからです。
進が思春期の頃のより子の心情というのは作中では触れられていませんが、当時のより子の気持ちを思うと自分の経験と重ね合わせて切なくなってついつい感情移入してしまいました。
丁寧に暮らす大切さ
小野寺家の生活は坦々としていて毎日毎日同じ予定を繰り返し変わり映えしません。しかし、これこそがこの映画の醍醐味でこの暮らしぶりがあるからこそ2人の周囲に現れた変化が活きてくるのだと思います。
一番印象深いのが食事シーン。より子が作る食事は一見地味なんですが、実は手が込んでいてとても美味しそうです。料理中のシーンもじっくりと描かれていて、作り方がとても丁寧なんです。愛情込めて作っているのが伝わってきます。
例えば、胡瓜を切るシーンでより子が胡瓜のヘタを先に切って残りの部分とヘタをクルクル擦り合わせるシーンがあります。この行為は胡瓜の灰汁を取るためと言われていて昔ながらの調理法ですが、今でも欠かさずやっている人は少ないと思います。こんな一瞬のシーンからもより子の丁寧な暮らしぶりが伝わってきます。
これからの小野寺家
紆余曲折を経て、結局この姉弟それぞれの恋は終わってしまいます。しかし、恋に破れた2人には悲壮感などありません。また同じ日常が戻りますが、少し精神的に成長した2人がいます。
これからの小野寺家の行く末はいかに!?
永遠に姉弟の二人暮らしが続くのか、はたまた新たなロマンスがあらわれるのでしょうか。映画を観終わった後も心地よい余韻に浸り思いを巡らせることができる素敵な作品でした。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)