人間の生きる力
突如起こった危機
サバイバル指南書
追い込まれた時の人間
東北地方太平洋沖地震が起きたのは2011年だった。実にその30年以上も前に書かれた作品だが、先の震災があったことで再注目された作品である。予測不能の震災に遭遇した時、人はどう行動するか、そして自分はどうやって生き残るかを考えさせられる作品である。
実際のところ、この作品の中では地震の対応、飲み水、食糧の確保、必要最低限の生きていく為の術が紹介されている。単純に溜まってる水が飲めるのかどうか分からない。食糧もか細くなってきてる中で結局は作農がもっとも安定した入手手段となるものの一人でできる訳ではない。そして作物が育てば持つ者と持たざる者との確執が生まれる。天変地異が起きて助け合わなければいけない世界になったにも関わらずどうして人間の間には紛争が生まれてしまうのだろうか。
ある日、突然地球はおかしくなってしまった。異変はまず大地震だった。その規模は人間の想像をはるかに超え、それまで築き上げてきた文明は粉々に砕け散っていった。多くの人は死んでしまい、地球が変わり果てた姿になっても生き残ってた少年は一体何が起こったのか分からないでいた。そして自分が人類で残された唯一の人間でもあるかもしれないと知るとまずは自分一人で生きていかないといけないという現実だった。
だが少年は希望を捨てたくなかった。家族はまだどこかで生きてるかもしれないと信じた。最初こそ廃墟と化した街で暮らした少年だったが旅に出ることになった。どこに行けばいいのか分からない。だがそのままずっと一人で街にいることもできない。出ていかないといけないと一人では生きていけない。家族も探したいし自分以外の生き残った人間も探したい。そうやって始まった旅は大海を漂うように不安なものだったろう。
幾多の困難に出遭いながらも生き残りの人間に会うことができた。最初はそれだけでも大きな喜びだった。だが人間が集まるということは別の問題を生み出した。それまでは自分のことだけを気を付けてたらいいものが他の人の分まで気を回さなくてはいけなくなった。生きてく上で人手がある方が有利であるが無知な人間は自ら禍をもたらす。そしてその無知は文明社会に住んでる限り絶対に克服はできない。学校で勉強し、どんなに知識を詰めた気になってもこの世界ではそのほとんどが通用しない。この地球上で生物として生きていく為の知識が欠落してるのはどこかで誰かがやってくれていたからである。そして文明社会で生きてる限りその無知を感じることすらない。
人間とはお互いを支えあいながらでないと生きていけない。そういう意味では他の生命よりも脆弱だ。それでいて集まると軋轢が起こる。そんな殺伐とした世界でありながら希望も見出す。そこに救われた気分になり人間も捨てたものじゃないと思うのだった。
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