イヤミス全開の後味最悪の傑作 - 贖罪の感想

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贖罪

4.504.50
映像
4.50
脚本
5.00
キャスト
4.50
音楽
4.50
演出
5.00
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イヤミス全開の後味最悪の傑作

4.54.5
映像
4.5
脚本
5.0
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
5.0

目次

救いのないドラマ

人の心の闇とか傷を描いたドラマは数あれど・・・

これほどに救いようのないドラマもめずらしいのでは・・・と思った。

湊かなえ原作。

湊作品の特徴として私個人的には、

最後の最後まで描き切らない余白部分が独特で

そこは好みが別れるような気がしている。

その余白を、

「中途半端」と捉えるか

「余韻」と捉えるかで、

印象はだいぶ変わってくるのではと思う。

その印象は、作品によっても変わると感じていて、

今回の作品に関しては、

私的には「余韻」として捉えた結果、

「救いようがない」という世界観が見どころだと感じた。

とある小学生の少女が何者かに殺される。

その事件をめぐり、

少女の母親と、少女の友人4人たちの関係性による悲劇。

物語は一話ずつ、

少女の友人たちひとりひとりにまつわる

その事件後の人生が描かれていて

最終話はその事件の真相にせまる。

とにかく、登場人物の誰も報われないのだ。

いや、例えば、

登場人物の物語をもう少しコマを進めたら

どこかに落とし所があるというか、

どんなに悲惨な状況があったとしても、

原因と結果が結びついたら

人って、溜飲は下がると思うのだけど

この作品はそこまで描かない。

すべてに共通して、

「え、そこで終わる!?」

という、嫌な印象だけが残る後味の悪さが特徴で

さすが湊作品。

「イヤミス」っぷりがエグイ。

というわけで、「イヤミス」の醍醐味を味わいたい人には

もってこいの作品かと・・・思われます。

負の連鎖

小泉今日子演じる主人公「麻子」の小学生の娘が何者かに殺される。

なかなか犯人が見つからないことへの苛立ちと憎しみは

当時一緒にいて犯人の顔を見ていたにもかかわらず

何の証言もできない4人の娘の友人たちに向けられ、

「私はあんたたちのことを一生許さない。

何としても犯人を身つけなさい。

でなきゃ私が納得するような償いをしなさい。

それが完了するまで、私は一分一秒たりとも

あんたたちひとりひとりのことを忘れません!

あんたたちもこの償いから逃げ出すことは絶対にできない!

そう覚悟してちょうだい!」

と、事件のショックと罪悪感でただでさえ弱っている少女たちに

強烈なトラウマを残した。

その麻子の言葉は、

まるで呪いの種のように少女たちの心に植え付けられ、

少女たちのほとんどが知らず知らずのうちに

麻子との約束を守るために人生を歪ませていき、

呪いの種をすくすくと育て、

やがて15年たった時、一気に呪いの花が咲き、

次々と事件を引き起こしていく。

人の意識や感情の連鎖というのは

本当にすごい威力だと思う。

あらためて人は「心」で生きているのだと

思わずにはいられない。

強烈な罪悪感が心の中で芽吹いてしまったら

自分が幸せになることなど、

そうそう許すことは難しいだろう。


そもそもの麻子の心が罪の意識で一杯で

どこまでいってもそれがぬぐえることはなく

物語は終わった。


人として生きている以上、

負の心や感情を完全に無くすことはできないと思うけれど

それとどう付き合い、どう生かすかで

創造される人生は変わってくる。

どんな人生を送りたいのかは

本当に人それぞれ・・・

感情や心の味わい方も

人それぞれ・・・

そんなことを

改めてぼんやりと考えさせられた。

やはり男女関係か

すべての事件のはじまりは、麻子の嫉妬心からだった。

いつも一緒に行動を共にしていた女友達と男友達。

男友達が自分より友人の方に好意を寄せてると分かって

激しい嫉妬に狂った麻子は二人の仲を裂くことに画策し

女友達を自殺に追い込み、見殺しにした。

女2名に男1名。

こういうバランスって微妙だ。

仲が良ければ良いほど、微妙だ。

それにしても思うのは、

世の中のいろんな事件の発端を辿ると、

そのほとんどが男女関係のもつれだったりするな、と。

まあ・・人は男と女から生まれてくるのだから

当然といえば当然かもしれないけど

その原因はとても根深いものだなと思う。

性の結びつきは強力な磁石のようなもので

心と体を強烈に支配する。

でも、男女関係のもつれを表層から辿っていくと

やっぱり個人の在り方に行きつく。

男と女の個人同士で成り立っているわけだから

各自どんな状態で結びついたのか、

関係性をかたちづくるのは個人次第だ。

その、個人の状態が良くも悪くも影響が大きく出るのが

男女関係だなと思う。

人はとかく、関係性にばかり目が行きがちで

その関係性をかたちづくる個人の状態を忘れがちだ。

何か人間関係で問題が起こった時、

とかくそれが男女関係の場合、

感情に飲み込まれやすくなる。

冷静な感覚も取り戻しにくい。

そして、頭では分かっていても

どうにもがんじがらめで苦しい、ということも。

それが男女関係ならではの性質かなと思うけれど。

性の反応というのはそれだけ、

良くも悪くも強力なのだと思う。


何かで読んだことがある。

人類の歴史において3つの課題があると。

酒、お金、性。

この3つだそうだ。

酒が課題の時代は既に終わり、

今はお金と性が混在しているけど、

性の方が徐々に終わり、お金の課題の方が中心だとか。


確かに。

お金と性は元をたどれば同じエネルギーだし

人によってどっちのテーマがより強く人生に反映されるかは違うだろう。

私自身も、この2つは人生の大きなテーマでもあるし、

性の方が先にカタがついた感がある。

とはいえ現代でも、

男女の問題はまだまだ色恋・・・ではなく、

色濃いのが現状かもしれない。

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