アニメ史上でNo.1のカッコ良さ
アニメーションの完成度
アニメという媒体で、ここまで完成度が高められるのだと驚かされる作品です。キャラクターデザインにこだわっていることも伺えて、とても素晴らしい作品だと思います。
ガッチャマンに始まったタツノコプロの集大成とも呼べるアニメ作品に仕上がっているのではないでしょうか。アニメーションでは、文句なしに最高レベルにある作品で、絵の綺麗さだけでも十分に観る価値のあったアニメ作品でした。大人向けのアニメーション作品だけあって、マニア層も納得せざるを得ないクオリティーだと断言できます。
ヒーローものといえば、やはりタツノコプロであることを知らしめるアニメーションだと言えます。タツノコプロにしてみても、それだけの自負とプライドに賭けて制作された作品なのも間違いないでしょう。
ただ、鴉の見た目は、牙狼とイメージ重なります。黒くて、カラスをイメージした牙狼という印象は拭えないです。この部分は良い点とも悪い点ともとれるのかもしれません。牙狼が嫌いな方は、鴉も受け付けないかもしれません。逆に、牙狼をカッコ良くて好きという方は、鴉もカッコ良く映ると思います。それだけ全体像から漂う雰囲気は、牙狼を想像させるものが大きいように思います。そして、作風そのものも、黒を基調にしているところも両作品に通じるものがあります。ただ、実写媒体で制作されている牙狼、そして、アニメ媒体で制作された「鴉 -KARAS-」という捉え方はできると思います。アニメでここまでできる、という可能性を見せてくれた作品であり、その評価も高いのではないでしょうか。
また、OVA作品ということもあり、観る方が限られてしまう点が残念です。素人の考えかもしれませんが、劇場版アニメとして宣伝を打ってプロモーションしていれば、もっと広い層の支持を得られたコンテンツになった気がしてなりません。完成度だけみれば、宮崎アニメにも劣らないと思えるだけに勿体ない気がしてしまいます。地上波などで放送される機会があって、人気に火がつくようなことがあれば、それが実現される可能性もあるのではないでしょうか。
間違いなく、それだけの価値はあるアニメ作品のように思えます。
鴉の世界観
作風や全体の印象は、牙狼そっくりでも内容や世界観は異なります。妖怪が登場するところなど、大人向けに絞り込んで制作されたものということでもないように感じられます。
ただ、ストーリー性そのものは面白みに欠けてしまうのを強く感じさせ、勿体ない気持ちでいっぱいになります。
妖怪などを描いたことで、ターゲット層を絞り込めていないことが大きいように思います。描きたいことも、メッセージ性も感じられる作品なのですが、ストーリー展開や内容に斬新に思える部分がないように感じるのです。また、妖怪が登場することで、妙に可愛らしい印象にもなってしまいます。大人向けを意識しているのであれば、妖怪ではなく、別物を登場させていたのではないか、と思います。メッセージ性はそのままに、違った設定・背景で描かれていたのではないでしょうか。
せっかくのアニメーション技術の高さを活かしきれていないように思います。
変身能力を失う鴉
ありがちな展開ではありましたが、期待を裏切らない展開と考えなければならないのでしょうか。そして、アニメーション上の演出は素晴らしくカッコ良い出来栄えなので、決して悪い印象ばかりではありません。
また、変身能力を失った時点での進行は面白かったです。主人公の乙羽(鷹介)は、鴉ではなくても人間らしさを取り戻すことができないのは悲しい展開でした。しかし、弟分の存在には救われたように思います。弟分の物語展開に与えた影響は強かったように思います。しかし、良い人物像だったキャラクターがサクッと死んでしまうのは悲しいです。あの時、強盗に成功して逃げ切れていたなら、どんな展開になっていたのだろう、と別の想像をしてしまいます。ただ変身能力を失って、それを取り戻すのは間違いない展開です。その場面で登場してきたキャラクターである事実を考えると、死んでしまう以外の結末はなかったのかもしれません。ただ、ヤクザの弾丸で死んでしまう展開は、人間同士によっての争いで死んでしまう、という人間社会の歪みを象徴するアクシデントだったのかもしれません。
人間社会の歪みをテーマにしている「鴉 -KARAS-」という作品には、その歪んだ部分を象徴させる展開が必須だったと考えることができます。
変身能力を取り戻した鴉
やはり、鴉の力は圧倒的に描かれています。少し苦戦する様子を描くのか、と思っていましたが、最後は容易に敵を倒しています。その部分においては、意外な展開だったので、驚かされた印象は強いです。
時間がないことから、サッと済ませてしまったのか、と邪推してしまうほどです(笑
一部の人間たちは、歪んだ考え方から少し変化を感じとれます。しかし、全ての人間に当てはめ、考え方を改めることはできないです。事実、そんな描かれ方だったように思います。鴉の仕事は、これからも続いていく、という括り方でした。この締め括り方に期待したいのは、続編制作に他なりません。それを思わせる内容であり、妖怪の種類ももっと多く登場しても良いように思います。
また、このアニメーションの完成度を維持・向上させたうえで、ストーリーを練り上げた内容で制作されれば言うことありません。大きな可能性を秘めたアニメ作品であることは間違いないと思いますので、続編に期待したいです。
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