役者陣の演技力が際立つ、不気味な味わいのミステリー - 激流~私を憶えていますか?~の感想

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激流~私を憶えていますか?~

4.504.50
映像
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脚本
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キャスト
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音楽
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演出
4.50
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2

役者陣の演技力が際立つ、不気味な味わいのミステリー

4.54.5
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
4.5

目次

一風変わったサスペンス

インパクトのある題名に興味をそそられて見たドラマ。

「激流」って・・・すごいよね、どーゆーこと・・?

記憶喪失か何かのハナシなのかなー・・・なんて見始めたけど

そういうことではなく、もう少し深刻、だった。

20年前、忽然と神隠しのようにいなくなったまま

行方不明になっていた元クラスメイトから、もし突然 、

「わたしを憶えていますか」

とメールが来たとしたら・・・

きっと、ゾッとするだろうな。 

主人公のサンクマ(三隅圭子)を始め、他4名の仲良しグループと

当時一緒に行動していた「冬葉」という少女が

修学旅行中のバス移動の最中で 忽然と姿を消して行方不明になってしまった。 

その「冬葉」の名前で、「サンクマ」「美弥」「貴子」の3名宛に 

ある日「私を憶えていますか」というメールが届く。

それをきっかけに当時のメンバーが20年ぶりに再会するのだが・・・

一体メールの主は誰なのか、どういう意図なのか・・・

その謎が知りたい、というのはもちろんのこと、 なんだろう、

薄暗くて、うすら気持ち悪い、 

ドラマ全体に流れる異様な空気感が、

一層、結末を知りたい!と思わずにはいられない気持ちにさせられた。

「させられた」って表現もナンだけど、

早くその異様さから解放されたい、みたいな心理も

働いてたような気がする。

「じゃあ、そんなに気持ち悪いなら見なきゃいいのに」

とは、ならなかったのが、このドラマの絶妙なところ、だと思う。 

心の内側の繊細なひだひだの微妙なラインを

ほどよくくすぐるような、気持ち悪さ(笑)

で、この「うすら気持ち悪さ」は、オカルト的な気持ち悪さではないので

この微妙なラインをいきすぎると、多分、

「深刻すぎてつまんない」

って感想になると思う。 

「深刻でつまんない」と「うすら気持ち悪い」って、

あんまり並列に感じにくい感覚だと思うんだけど

「深刻でつまんない」←← 中間 →→「うすら気持ち悪い」

っていう図式が成立する、っていうドラマは

一風変わってるな、と思った。

そこが何よりもこのドラマの魅力、かな、と、個人的には思う。

「忘れる」という人間の性(さが)

20年というのは長いものだ。

「サンクマ」たち5名は、「冬葉」からのメールが届くまで 

「冬葉」が行方不明になったことも、「冬葉」の存在も、

すっかり忘れていた。

不可抗力の事件だったとはいえ、 

一緒に行動していた仲間の一人だったのに

バスを一人降りた「冬葉」のことを誰も気づかず

それっきり行方不明になってしまった、というのは

当時の彼らに、しくしくとした罪悪感を抱かせた。

それなのに、いや・・・だからこそ、なのか

誰もそのことを思い出すこともなく

忘却の彼方においやってしまったのかもしれない。

もし自分が同じことを体験したとしたら

どう感じただろう・・・と想像してみたんだけど・・・

かなり、キツイな。

相当な罪悪感を抱いただろうし、忘れたい、って思ったと思う。 

心の中に、薄暗いしこりが残ってしまうだろうと感じた。

人間は、忘れる生き物だけど、

だからこそ素晴らしいのだと思うのだけど、

人間だからこそ、

自分の存在を忘れずに憶えていてもらえると嬉しい、

というのも、矛盾した事実だと思う。

わがままな生き物だよね。

結局事の真相は、「冬葉」の母親がメールを送ってた。

なぜなら・・・

大切な娘がいなくなってしまったというのに

一緒にいた「サンクマ」たち5名が

そのことを一切忘れて思い出しもしない、ということが

許せなかったからだ。

母親にとっては、 娘を失った悲しみは20年たった今でも 

忘れることなどできない、変わらない事実として

ありありと生きているのに。

哀しい・・・。

なんて哀しいドラマなんだろう。

その他、20年ぶりに再会したことによって

浮き彫りになった各自の色んな事情が交錯して

20年という歳月の重みや深さが描かれていたけど、

このドラマの本質は、

「忘れる」という人間の性(さが)

なんじゃないかな、と思った。

俳優陣の鬼気迫る演技

このドラマ、クライマックスがスゴかった。

何がって、役者陣の白熱した演技が。

事の真相をそれぞれが語る、

「冬葉」の母親役の 田中美佐子さん、

「冬葉」の音楽教師役の「毛利佳奈子」役の 賀来千香子さん、

「冬葉」の後輩で「美弥」の弟役の 高橋一生さん 。

「鬼気迫る」とは、このことぞ☆ 

っていうくらいの、演技。

で、このドラマの特徴として、

BGMなどの効果音の使い方が秀逸だな、と思うんだけど、

この3名の白熱した独白シーンは、一切の効果音なし、 

それが最高に効いていて、

思わず荒ぶる息遣いとか、声が詰まる感じとか、

そういう臨場感がハンパなかった。

ただただ、ブラボー――!!!

そして、普段淡々とした役の多い 高橋一生さん、

こんなに激しい演技、するのねーーーー☆ って、ビックリ。

ふり幅、デケー。

いいなあ、すごく、いいなあ。

すごく好きな俳優さんだったんだけど、

この役見てますます好きになったっけな。

美佐子さんや賀来さんは、もう、ベテランの風格だったな。

まさに「激流」の名にふさわしい、名シーンだったと思います。

NHKドラマって、WOWWOWと同様、

とても見応えのあるドラマが多いので好きですね。

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