愛は難しい。 - 永遠の仔の感想

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永遠の仔

4.004.00
映像
3.50
脚本
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キャスト
5.00
音楽
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演出
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愛は難しい。

4.04.0
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
5.0
音楽
3.0
演出
4.0

目次

三つ子の魂百までは本当のことだ。

子どものころの体験は、人生の上でとても重要だ。特に、苦しく悲しいことはや辛いこと恥ずかしかったこと等、自分にとって不利益だったことはずっと心に残っている。もちろん、楽しかったことや嬉しかったことも残っているが、不利益だったことに比べるとその比率は少ないと言える。

ものすごく辛かったことはその後の人生の価値観や性格にまで影響を及ぼす。子どものころに寂しかった人は、ずっと寂しい。だから、人が恋しくて、その距離感の測り方がわからない。独占欲丸出しで束縛してしまうことや、近づかれることがいやで孤立してしまう人もいる。

子どものころの喜びや苦しみは大体は親から与えられる。きちんと可愛がってもらえれば、社会人としてしっかり自立した大人になれる可能性は高くなるが、過剰に可愛がられれば親離れに苦しみ、依頼心の高い大人になるかもしれない。または、親の過干渉がうっとうしくて、親を拒否してしまうかもしれない。逆に放りっぱなしならば、親を追い求め親から離れられなくなってしまうかもしれない。

人によってその影響の仕方は様々だが、子どものころの体験が人の性格を司るのだ。まさに「三つ子の魂百まで」なのである。

まるでかさぶたをはがすような感覚

バランスのいい親子関係はむずかしい。どんな親子も、過干渉と放置の間を行ったり来たりして生活する。親だって、子どもが生まれたら物理的には親になるが、すぐに気持ち的に親になれる人ばかりではない。努力して親になろうと頑張る人もいるだろうが、努力してもなかなかなりきれない人、努力する気持ちにもなれない人もいるだろう。

子どもは本来めんどくさい生き物だ。親の思い通りになんかなりはしない。赤ん坊は泣いて親を苦しめるし、幼児にも反抗期がある。これをむりやり親の思い通りにさせるのが児童虐待だ。親は子どもに恐怖心や不安を与え支配する。あるいは「しつけ」という大義名分によっていじめる。虐待を受けている子どもの世界は親一色。元凶は親なのに、親を求めてしまう地獄だ。

衣食住の世話をろくにしてもらえずに、男を引っ張り込むときには押し入れに入れられたモウル。ストレス解消のためにタバコを身体に押し付けられたジラフ。父親に性的虐待を受けていた優希。3人は地獄を体験していたのに、弁護士、警察官、看護師と大人になって人を助ける職業に就いたのはなぜだろう。会社員とか公務員とか販売員とか普通の仕事をした方が人生楽に過ごせるのではないだろうか。

いや、むしろ誰も助けてくれないから、自分自身を助けるためにその職業を選んだのかもしれない。けれど、これらの職業は人間の裏側を見やすい。追い詰められた人を目の当たりにしてしまう仕事だ。それは、まるでかさぶたをはがすような感覚に違いない。つまり、これらの職業に就いたことは意識はしていなくても、3人にとっては自傷行為の一環だったのかもしれない。

結局幸せにはなれない。

結局、親に虐待されて育った子どもは、大人になっても虐待されやすい。誰かにいじめられるということではなく、自分自身でそのような環境に身をおいてしまいがちなのだ。相手との距離感を間違えやすく、結果孤立しやすい。あるいは自らの存在意義が見いだせずに相手を怒らせてしまう。または、いつもダメな人間の傍にいて、世話をしたり暴力を振るわれることで、自分の存在意義を見出す。

さらに、自分の感情をコントロールできずに爆発する、または吐露することができないので鬱屈してゆがむ。 等、不幸せな人生を送る材料がそろっている。自分をコントロールできるものは自分を痛めつけ、コントロールできないものは他人を傷つけるのだ。だから、結局は幸せになんかなれやしないのである。

それは愛に触れたとき。

それでも、子どものころから続いた辛く長い人生が少しでも、幸せになれる要素があるとするなら、それは自分の存在意義が認められたときだ。誰かに必要とされ、大切にされる。そして、自分もその人が必要で大切な場合。それは愛に触れたときに他ならない。

だから、優希は自分を苦しめていた父親を山頂から突き落としたのは実は母親であることがわかり、母の愛に気付いた時に初めて「生きていてもいいんだ。」と感じられたのだ。そのときには悲しいことにすでに母も弟も亡くなってしまっていたのだから、喜んでばかりはいられないのだが、それでも、「自分は汚れた人間で生きている価値のないもの」という低い自己評価を少し上げる手助けにはなる。そしてこの言葉を支えに少しは幸せに生きていけるのだ。

愛は難しい。

一般に母の愛は見返りを求めない「無償の愛」と言われている。けれど、これはちょっと怪しい。子どもが赤ん坊のときには虐待をしていない母なら、ほとんどは無償の愛に違いないが、親だって人間なのだ、子どもの容貌や能力に期待し、独占欲や自己顕示欲を満たす存在として支配してしまったりしているのではないか?ダメな不甲斐ない子どもには辛く当たったり、兄弟で行動に差をつけたりしていないか?ついつい乱暴に扱って、虐待一歩手前などになっていないか?世の中にこのような話はごく普通にある。

子どもを自慢に思ったり、可愛く思ったりして期待するのは愛だろう。でも、行き過ぎると独占欲や自己顕示欲になる。愛とは加減が難しいものである。

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