ひとりのトナカイがサンタに会える確率はどのくらいだろう
それぞれの性格は家庭で育まれる。それを実感させる内容になっている。
カイトの瞳が最初の出会いから、動物の目らしく描いてあります。さすがトナカイと言われるくらいに動物の目を意識して描いてあるのがよくわかります。その後に出会うトナカイたちも、人間になっているときの瞳も動物チックです。カイトがサンタさんに出会えた日は、お赤飯を炊く!トナカイ一家にとっては、とてもめでたい日なのだなということがそれだけでわかります。この広い世界のなかでたったひとりのサンタを探すトナカイの苦労を思うと、毎日人とぶつかっているのだろうかと思います。人としての生活もあるから、学校帰りの放課後はサンタ探しに費やしていたのかなと思います。その苦労報われてくるみと出会えた。出会いは突然です。カイトの家は、すごくにぎやかな温かい家庭でカイトがあんなに人懐っこいのは、この家庭があったからこそなのかなと感じました。おばあちゃん、父母、兄、カイト、妹、弟、7人家族!核家族化が進むなかでの大家族。一転して、くるみの家庭事情は、まさしく今の時代に多いのではないかなという家庭です。家に帰ってきても誰もいない家庭です。くるみは、とても勝気な女の子だなと思いました。そうならざるを得ない家庭事情があったのかと思います。
トナカイ一家は美形多し!
現実的な女の子がある日突然、非現実的な世界へ引き込まれた。「ね、二人とも。サンタになりたい?」と友達に聞くと、「は?サンタってじーさんがやるもんじゃないの?」「ってか。かなり昔から信じてなかった気がする」という二人の友達。まあ、こんな反応が普通なのかなと思います。でも、少し寂しい気もします。「サンタクロースっているんでしょうか?、中村妙子翻訳、東逸子イラスト」の本があります。手にとってない方は、是非手にとって頂きたいのですが、アメリカのニューヨーク・サンという新聞にでた社説です。8歳の女の子が新聞社に手紙を書いたことがきっかけで、この答えとして新聞に掲載されました。何度読んでもいい社説です。だから、よろしくマスターが出たときは、かなりときめきました。こういう世界があってもいいなあと思いながら読みました。かわいい女の子がサンタクロース、美形の男の子がトナカイ。かっこいいなカイトと思っていると、さらに美形のトナカイが現れ、その正体は!と心を躍らせていると、じいちゃんだった!というのもいいです。期待させておいて、期待を裏切り。「第一、私の様な美しい男が二人といてたまるか!」という性格の持ち主。ああ、このオレ様的な性格もいい。カイトのじいちゃんが主役の物語も読みたいと思いました。カイトのおじいちゃんが天に召されるサンタクロースと真夏の夜空をかけていく。花火とサンタクロースちぐはぐでいながらも、きれいで迫力のあるシーンに仕上がっています。
サンタクロースに会えるという奇跡、黒サンタという存在
「今日はクリスマス・イブ。世間はパーティーだ。デートだと浮かれまくっているが、オレときたら、会社はリストラ、彼女にはふられ、友人の借金まで背負わされてしまった。オレの人生いつもこんなだ。多分この先もいい事なんて一つも・・・」と思っている男性がビルの屋上にいる。その屋上にいたおかげでくるみたちをみかけ、「サンタって本当にいたのか・・・しかもかわいかった。・・・もう少し頑張ってみるか」と思わせている。何にもいい事がなかったけど、サンタクロースには会えた。それはすごくラッキーなことですよね。「実はサンタって親なんだって」というサンタなんかいないでしょ説が出た孤児院。空に浮かぶサンタを見た勇くん。みんなにプレゼントを配ってほしくて一所懸命に頼みます。「勇兄は?何をもらったの?」という問いにぼんやりしながら「夢を」と答えているのが印象的です。サンタクロースに会うというのは、それだけみんなが渇望していることなのです。黒サンタと呼ばれる存在がいることもちゃんとわかっていて、作者はよろしくマスターで登場させています。この漫画では、審査する者として黒サンタが出ています。「自分を聖人だと思い込んでいたバカにトナカイが愛想を尽かす。真実を暴いてヤツらを正す」サンタにとってちょっと怖い存在です。やっとで会えたはずのトナカイとサンタクロース。絆であるはずのリードを簡単に引きちぎってしまう。くるみは、カイトを信じることで、彼の本当の望みをかなえることでリードを元に戻す。1日しか時間がなかったのに、何が彼に大切かを1番に考えた結果なのかなと思います。
真逆のコンビがあってもいい
リヒト兄ちゃん「サンタのいい様にされてたまるか。オレは一生サンタになんて会いたくもない」と考えているトナカイ。カイトと真逆の体質。リヒトが帰ってきてリードがついていたので、お祝いの赤飯が出るところは、カイトと一緒です。急に呼ばれて行きたくないのに行かなければいけない。カイトとくるみの関係と真逆の関係を描くことによって、いろいろなコンビがいるんだなという新鮮さを見ることができます。よろしくマスターは、不定期で発表されているので、1巻と2巻と3巻の発売に2年ずつの開きがあります。クリスマスシーズンになると、続きを読みたいと思いながら思い出す漫画のひとつです。
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