男性性(父性)の光も影も味わい尽くせば・・・ - ガラスの家の感想

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ガラスの家

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映像
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脚本
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キャスト
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音楽
4.00
演出
4.50
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1
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1

男性性(父性)の光も影も味わい尽くせば・・・

4.54.5
映像
4.0
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
4.0
演出
4.5

目次

男性性(父性)を描き切る

男三人のやもめ暮らし、バランスを保ちながらの穏やかな暮らしの中に

一人の女性がやってきたことで

まるでガラスのようにもろく壊れていく家族のあり様や、

それぞれの生き方を描いているのだけど、私はこの作品から、

「男という生き物」「男性性(父性)」というものを 

ありありと感じた。



どこかはかなげで美しい女性、「黎(れい)」。

男手一つで2人の息子を育て上げた澁澤一成と偶然出逢い、 

結婚し、彼の家庭にやってきた。 

ところが、一成の息子の「仁志」が「黎(れい)」に惹かれ出してしまい、

それを感じた父「一成」は嫉妬に駆られ、尋常ではない独占欲で狂い始める。

父から男へ。

息子からライバルへ。

優しく包容力のあった夫は、

嫉妬心と独占欲から 妻の一切の自由を奪い、

家庭と自分に縛り付けておくだけの傲慢なオスへと変化する。 

社会的にも尊敬していた父は、

嫉妬心とライバル心から 息子を社会的に追い詰め、破滅させ、

その職をも奪い取る冷酷な独裁者へと変化する。 



このドラマを見たとき、子供の頃飼っていたチャボを思い出した。

長いこと、雄鶏1羽に対し、雌鶏5羽くらいの割合で飼っていた頃は

とてもおだやかで、雄鶏は雌鶏たちの面倒をとてもよく見てくれて

思いやりがあって頼りがいのある、家族のリーダーだった。

ところが、ある年、卵を孵してオスのひよこが生まれてから

事情は一変した。

鶏の習性を知らなかったわが家の家族は、

そのまま一緒に育ててしまったのだが、

どうもそれはいけなかったらしい。 

ひとつのファミリーにオスは2羽いてはいけなかったのだ。

あれだけ高潔だった雄鶏が、我が子であるはずのチビ雄鶏を

ことごとくいじめ倒し、それはもう容赦ないほどで、

チビ雄鶏は常に父雄鶏にびくびくとおびえ、

トキを上げる声も弱弱しく、成長しても身体は小さいままで、 

とてもかわいそうなことをしてしまったのだけど・・・。

「一成」の変化と、わが家の雄鶏の変化が、ダブって見えた。

男性(男性性)が健全に機能していると、

統率力や実行力、包容力に優れ、

道を示したり、形を成したり、

物事が発展していく躍動が生まれる。

けれど、それが不健全に機能したとき、

強引、強奪、自己中心的、コントロール、

といった形で現れ、支配的な暴君へと変わる。



そして「仁志」の方もまた、父「一成」に職を奪われて

一切の肩書を失った状態に追い詰められた時、

一気に生きる気力を失い、

愛する「黎(れい)」の無条件の愛すらも

受け入れられなくなってしまう。

地位や肩書も何もない、丸裸の自分では、

愛する女性を守ってあげられないのではないか・・・。

そんな自分自身が情けない・・・。

そんな、男性ならではの悲哀、いじらしさ、愛の示し方を感じた。

男女の恋愛事情をテーマに描いた作品で、

こういう男性性がクローズアップされているものは

割とめずらしいのでは、と思った。

女性同士の嫉妬や恋愛トラブルの世界観とは

また一味違う味わいで、とても興味深かった。



女性性(母性)と自立

「一成」の変化と「仁志」との関わりを通して

「黎(れい)」もまた変化していく。

自立して、健全な母性を生かす女性へと。

もともと彼女は、女性性(母性)がとても豊かなのだ。

けれど時としてそれが人との関わりの中で健全に機能しないとき、 

「魔性の女」とみなされてしまったり

周囲の妬みや反感を買うようなことになったりする。

そんな体験からますます、自分自身の価値を見出せなくなり

すべては自分が悪いのだ、自分は他人を不幸にするのだ、

と、自らを牢獄の中へ閉じ込めてしまう。

その状態が、他人への依存心を生む。

「黎(れい)」もまた、自分の母性豊かな性分を恥じ、

そんな孤独感を埋めるようにして

「一成」との生活を守ろうとするものの、

本来の自分自身を思い出させてくれる「仁志」との触れ合いと 

二人で見る夜空の月が彼女を変える。

家を飛び出し、心を鬼にして「仁志」とも距離を置き、

自分自身の足で立つことを選ぶのだ。

その、夜空の月を二人で眺めるシーンが・・・美しい。

言葉を超えて感じ合う世界。

本音と本音が混じり合うトキ。

そして自分自身を取り戻していくうちに

本来の豊かな母性も蘇り、

父との一件で半ば壊滅状態に陥っていた「仁志」の心をも

あたたかく包み込み蘇らせ・・・

最後は二人で新しい生活を歩んでいく。



男女問わず、誰にでも

男性性(父性)も女性性(母性)どちらもあって、

それをバランスよく統合していけたらいいのだろうけれど

そのためにはまず、女性性(母性)がちゃんと自立している必要がある。

すべての元となる源の愛、というか・・。

言葉にするとそらぞらしいけど・・(笑)

でも、そこがちゃんと自分の中で息づいていたら

自他共に生かし合う関係性が紡いでいけるのだと思う。

このドラマの「黎(れい)」と「仁志」のように。 

そんな、男女の根源的な在り方を

しっとりとした空気感と共に感じさせてくれる

味わい深いドラマでした。

斎藤工と井川遥

井川遥さんは、もともと大好きな女優さんの一人なのだけど、

この作品も彼女の魅力がふんだんに味わえた。

なんといっても、

肉厚でしっとりとしたやわらかでしなやかで

ちょっぴりエロチックな質感が好きなのだけど、

それに加えて、今回見てて楽しかったのは、

彼女の男性版といってもいいくらい、

質感がよく似ている斎藤工さんが

今回相手役だったこと。

いやもう、双子?ってくらい、質感が同じで。

黒くてうるうるした瞳、

ふっくらとした頬、

ぽってりとした唇、、、

二人揃うと、いやあ・・・エロい(笑)

いいわあ♡

どこか物哀しげな、哀愁ただよう翳りもまた、

人生の、男女の、切なくもいとおしい営みを

ふんだんに表現してくれていて、

味わい深い大人のドラマ、堪能しました。

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