宝物になる一冊、英さんと出会えてよかった! - 環状白馬線車掌の英さんの感想

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環状白馬線車掌の英さん

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宝物になる一冊、英さんと出会えてよかった!

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画力
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ストーリー
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演出
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目次

初単行本と思えないような出来栄え

男性なのか女性なのか表紙で迷いました。帯がついていたために下の方まで人物が見えなくて女性だと判断して読み始めて、1ページ目「・・・確かにルトワは一番近ぇが、植物園まで急な坂が多い」その言葉で男性だと気がつきます。次のページにいくと、やたらと背が高いというのもわかり、制服の着こなしがかっこいいことに気がつきます。帯がついていたら、確かに手にとりやすい本です。この本で帯がついてなかったら、手にとる人の数が限られてきます。「別冊花とゆめで大反響を呼んだ感動作、待望の単行本化」とありますが、期待を裏切らない内容です。都戸先生のは「嘘解きレトリック」が単行本もたくさん出ていて、本屋さんでも1巻読んでみてください。すごくいいという内容の本屋さん手描きポップがついていました。立ち読みをしたら、まずいことに2巻が読みたくて買ってしまった経緯があります。この本の内容も間違いなかった!列車を通しての3つのお話が掲載されていますが、続きがあれば、何巻でも読んでみたい内容になっています。

犬と猫の区別、犬とうさぎの区別

忘れ物のぬいぐるみを見つけた親子、女の子が手放さないので「そのウサギはお客さんなんだ。次の駅で降りる。ウサギが降りる前に乗ってよかったな」という英さんの言葉がいいです。女の子は手放さないわけにはいかないような言葉です。やさしく、でも無理なく、その子からウサギが降りる前にこの列車に乗れてよかったという温かい言葉です。でも、誰が見てもあきらかに犬のぬいぐるみなわけなのです。「犬だもん」という言葉と一緒に女の子は笑顔で車掌さんに忘れ物を手渡します。最後の小さなエピソード編のところで(Scene:ⅲ「見分け方」)英さんのところに先輩の車掌さんがやってきて、小さい英さんに、窓の外に見えるのは猫だよというのを手書きの絵で見せてくれます。耳が長いのがうさぎねというのを絵に描いてくれたので、彼のなかではそれはうさぎなのです。その犬のぬいぐるみを前にして、納得がいかないような顔をしている英さんがいます。そのミニエピソードまでも楽しめるおしゃれな作りの内容になっています。あと英さんが本物のうさぎを見たことがないから見分けがつかないのだなということもわかります。

「2人目のお客様は7日間下車しないお客様でした」ずぶぬれになった子どもが座っています。「雨がひどくなるので乗りな」と言って乗せましたが、子どもは犬を抱いていました。「変な猫だな」と英さん、ここでも言っています。「・・・犬だよ」「違う。犬はもっと大きい」「犬だって子供のときは小さいんだよ」静かな間があいています。猫よりも大きいのが犬と絵を描いて教えてもらった頃の記憶が大きく作用しています。でも、ここでも本物の犬を見た事がないからわからないということがわかります。英さんにとって、列車という世界がすべてだということがわかります。

私も世界の一部だと考えられるようなやさしい作品

車掌さんの人生もある、その乗り合わせた一瞬に出会うお客さんの人生もある。その一瞬のことを大事に大事に描かれた本です。「あんたと会うまで世界の広さを知らなかった。白馬線しかしらなかった。今も知らねぇ。けど、俺の知らない所の人たちが歌って、俺の所へ朝が来るなら、俺が白馬線に乗って、俺の知らねぇ所で何かが生まれているかも知れねぇ。それでもしも誰かが幸せになったらいいな」「いいのか?ずっとここで」「白馬線は狭いけど、俺がここにいるのは自分のためじゃなくて、お客さんのためだけじゃなくて、どこかの誰かのためかもしれねぇ。そう思ったら俺。世界の全部を走っている気がするんだ」今の仕事をして大丈夫なのか、疑問に思いながら、誰もが毎日を過ごします。それをそんな風に思える人はすばらしいと思います。「ウチの仕事きついのに地味だろう。毎日毎日同じようなことをして、誰に褒められるでもなく、品物や名が後の世に残る訳でもない。・・・言ってて悲しくなってきたな」とため息をついている人に「俺の友人が言うには、それらもまた世界の一部なんだそうですよ」「ご友人は君のようにあちこち旅でもしてた人?」「いいえ、遠い街の環状線の車掌です。電車の中で育った電車の中しか知らない奴で」旅をずっと続けてきた彼も自分の場所をみつけたのだなと感じました。4年間もその会社にいるということは、前の彼からは想像がつかないようなことです。旅の資金が溜まったらすぐに次の街、次の街へ旅をして行って、次の仕事は旅を続けるためのものだった。だけど、その仕事はきついけど、彼にとってはやりがいのある仕事なのかなと感じました。やっとで自分のやりたいことと出会って、そこに居続ける気になったのだなと感じました。旅を続けることがダメだと言っているのではなく、自分は世界の一部だと思って仕事をすると、仕事にも張り合いがでますね。ただ食べるためではない。生きていくためだけではない何かを人は求めてやまないものなのかもしれないですね。英さんの言葉を大事にしたいなと思えるような宝物のような一冊です。

最初の1話目でいろんな人の人生がつながっているというような話になっていました。ウェイトレスとして初めての街にきた女性、いつも英さんを見ていた。いつも同じ駅名の切符を買い、遠回りの電車に乗る。だけど、それで今の旦那さんと出会えた。結婚して、お店を辞め、街を離れることになった。英さんの電車に乗ったのは、仕事を解雇になった男性のお客さん、そのお客さんは、カバンの取っ手が外れてしまう。それを英さんのポケットにあったリボンで結んだら、犬に追いかけられた。逃げた先の店で雇ってもらえることになる。その犬は、英さんのにおいに気がついて、走ってきた犬で、7日間だけ一緒にいた犬だった。車掌見習いとして、英さんのところにいるはずだったが、捨てたはずの子どもが親と一緒に迎えにきた。そのひとりひとりの人生が大事に描かれていて、誰かの役に立ちたいと考えている英さんがどの人の人生にも関わっている。でも、個々の人は、それを知らない。英さんも知らない。でも、それでいいのだと思えてくる。やさしい物語です。

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