仕事30%恋70% アラフィフたちの日常 - セックス・アンド・ザ・シティの感想

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仕事30%恋70% アラフィフたちの日常

4.04.0
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
3.5
音楽
3.5
演出
3.5

目次

全世界に旋風を巻き起こした『セックス・アンド・ザ・シティ』

『セックス・アンド・ザ・シティ(以下S.A.T.S)』の名前は、海外ドラマや映画を観たことのない人にも知れ渡っているほど有名だ。

サラ・ジェシカ・パーカー演じるライターのキャリー・ブラッドショーは、ニューヨークに住む人々の恋愛と性生活を綴ったコラム「SEX and the CITY」を連載している。彼女のネタ元になっているのは、友人の性生活と自身の体験談。

キャリーの目を通して起こった様々な恋愛や性の「問題」を、友人たちのアドバイスや経験を通して結論に至らせる、という話になっている。ドラマはこのような流れで、基本的には一話完結型のストーリーだ。

では映画はどうなのかというと、ドラマ版とはやや構成が違う。

何故なら、主人公であるキャリーがついに結婚することになったからだ。

これまで他人の恋愛事情や性生活と向き合い、コラムを書く形で物語の語り手となっていたキャリーが、恋愛の終着点であるゴールへたどり着く。こうなっては、人の色恋沙汰のコラムを書いているどころではないということか。相手は長年キャリーと恋人関係を続けてきたミスター・ビッグ。大人の色気があり、実業家としても有望な彼との結婚は順風満帆…のはずだった。

しかし、これが思いも寄らない波乱を呼ぶ。結婚式当日、新郎のミスター・ビッグが式をドタキャンしてしまったのだ。

これを機に、いつも享楽的に生きているキャリーが大きなショックを受けてしまう(おそらく、映画がドラマと同じくキャリーのコラム調にならなかったのは語り手であるキャリーの精神的ショックが原因だと思われる)。

これは『S.A.T.S』を観ている人たちに、かなり衝撃な展開だったはずだ。特に女性は、ミスター・ビッグに石を投げたくなった人も多いだろう。『S.A.T.S』はもともと女性の支持が集まる作品であるが、この展開は多くの女性たちの同情を得たのではないだろうか。

リアルに、女性はこういう話好きだと思う

前項の最後で述べたが、『S.A.T.S』は女性の支持が集まる作品だ。

キャリーと親友たちの洗練されたファッションを始め、女性としての生き方や働き方、恋愛に対する考え方や恋人のセックスに求めるものなど、オトナの女性たちの憧れや現実が作中で幾度となく語られている。

普段友人同士でしか話さないような、大人の女性たちの赤裸々な実情を語ってくれる作品は、映画にしてもドラマにしても意外と少ない。あったとしても、日本のご都合主義な漫画やドラマのなかだけだ(しかも大体、クライマックスで付き合うなり結婚するなりと結末が決まっていて面白くもなんともない。けっ)。

何度も恋に失敗し、男に捨てられながら愚痴大会をしてまた次の恋愛に行く『S.A.T.S』の女性たちの物語は、国は違えども世の女性たちの強い共感を生む。

キャリーが結婚式ドタキャンされた後、親友たちがキャリーを誘ってハネムーンの行き先であったメキシコに旅行に行く。これもいかにも女性らしい展開だ。本当に傷ついたとき、支えてくれる友達の存在がどれほどありがたいことか。婚約者に捨てられたキャリーは完全には立ち直ってはいないものの、親友たちの支えによって、立ち上がるキッカケを掴む。

それ以降の展開は、実にゆっくりと物語を見せてくれる、落ち込みながらも、少しずつ仕事と独身生活に戻っていくキャリー。ようやく自分自身の子供を授かったシャーロット。浮気した夫と別居を続けるミランダと、相変わらず恋人との性生活を楽しんでいるサマンサ。

キャリーが結婚するまでがいかにも『S.A.T.S』らしい展開となっているが、ハネムーン以降はゆっくりと時間が流れていく。制作側が意図したのはわからないが、なんでもない時間の流れがキャリーの心を癒していくのだ。傷ついた心を最終的に慰めるのは、劇的な出会いでも、奇跡でもなく、時間。これもまた現実味を帯びている演出といえるだろうだろう。

キャリーのドタキャンにしてもそうだが、ミランダの不倫をする情けない旦那や、不妊症が発覚したシャーロットも、あまり世間では語られることのない等身大の大人の女性たちの悩みが描かれている。『S.A.T.S』は、リアルを味方につけたが故に、これほどまで愛される作品となっているのであろう。

映画→ドラマは少し失敗するので非推奨。

ところで、筆者は『S.A.T.S』のドラマより先に、映画を観てしまった派だ。ドラマがシーズン6まである作品なので、時間をケチってしまった形である。

それでも十分話がわかるのだが、四人の関係や家族・恋人関係を知るためにはドラマを観てから映画を観たほうが良かった。もしこれからドラマ版を観ようと思っている人は、映画の内容を忘れた頃にまた観るか、ドラマを一周してから本作品を観て、映画『セックス・アンド・ザ・シティ2』に続けばよいと思う。

さ、ドラマ版を全て観よーっと。

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大人気ドラマの映画化一本目の作品。全編通してセックスアンドザシティファンとしては最高!!!の一言。ドラマより数十倍グレードアップしたコスチューム類や音楽、メキシコの青い海など、映像も素晴らしく、豪華な作りです。キャリーがVogueでウェディングドレスの撮影をするシーンなんて、女子は悲鳴ものの美しさです。(実際のVogue編集長アナウィンターも出てましたね。イネドはどうしたの!?って位太ったおばあさんになってました…)また、その豪華さだけで終わらない。今回取り扱っているテーマ、ストーリーは、実は悲しい事の連続で四人は完全に打ちのめされてしまう事も。それでも四人は支え合いながら、自分らしく生きるためにまた立ち上がります。結婚に不安のあるビッグはそのまま結婚式場から立ち去ってしまい、絶望したキャリーはビッグの話を聞く事なく道の真ん中でブーケを叩きつけて決別…。このシーンは内容的には酷だけど、俳優陣の演技...この感想を読む

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