危うい均衡が崩れた時
十代の少女たちの日常は、楽しそうでキラキラしている。それが女子高生ならなおさら。そう見る大人は多いかもしれない。それが男性ならなおさらだ。しかしそれは彼女達の努力の賜物である。キラキラとしたコーティングの下にはドロドロとした嫉妬、憎しみ、独占欲、妬み…そんな負の感情が渦巻いている。しかしそんなものを表に出してしまえば見苦しいことこの上ない。彼女たちはあくまでもキラキラした存在でありたいのだ。そのためには本音をぐっとこらえて、自分よりキラキラした長いものに巻かれて自分もキラキラした存在のカテゴリーに入れてもらう。しかしもし、その長いものがなくなって、キラキラさせてくれるコーティングがなくなってしまったら?この話は、今にも崩れてしまいそうだけど崩れない均衡が、事故によって崩れてしまう所から始まる。この話においてキラキラしたコーティングはグループのトップでありクラスのカーストトップのさくらである。このさくらの死で微妙にバランスをとっていた人間関係は悪化の一途をたどる。それは主人公の水希とハルの事故後の関係に如実に現れている。水希にとってもハルにしてもさくらをトップとしたグループを、自分の立ち位置を守りたかった。でもその必要がなくなった時、今までハルの中に溜め込んでいた不満が爆発した。女のグループ上の友情がいかに薄っぺらいかよくわかる二人である。ある意味この二人はグループがなくなったことにより初めて個人と個人が対峙したのかもしれない。他のキャラクターに目を向けてもそうだがこの作品は人間の弱さを全面に出してテーマにしている。一人一人弱くて、狡くて、見苦しい登場人物が多い。しかし非常時という人間性が如実に現れる場面で、これが人の本質なのだろう。十代の少年少女が人の本質をさらけ出しぶつかり合う。この争いの先にある結末に考えさせられることの多い作品である。
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