ドラゴンキングダムのもう一つの楽しみ方 - ドラゴン・キングダムの感想

理解が深まる映画レビューサイト

映画レビュー数 5,784件

ドラゴンキングダムのもう一つの楽しみ方

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

アクションに注目!

ジャッキー・チェン、ジェット・リーの共演も話題を呼んだ本作ですが、実は制作側も豪華スタッフが名を連ねています。

まずはアクション映画でとても重要な役割となるアクション監督にウエン・ユーピン。

ジャッキー・チェンの代表作であるドランクモンキー 酔拳  (1978年)の映画監督であり、グリーン・デスティニー(2000年)やマトリックスシリーズのアクション監督としても活躍している武術指導家です。

<主な監督作品>

  • ドランクモンキー 酔拳 (1978年)
  • キョンシー・キッズ 精霊道士  (1986年)
  • ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地雷鳴  (1993年)

<アクション監督作品>

  • ブルース・リー 死亡の塔(1980年)
  • グリーン・デスティニー(2000年)
  • マトリックス・リローデッド(2003年)
  • キル・ビル(2003年)

タイプの違う2大スターの共演とは

公開当初はジャッキー・チェンがワイヤーアクションをしていることにショックを受けた方もいるかも知れませんが、ジャッキー・チェンとジェット・リーの共演を実現させるために「間をとった」ともいえる演出です。それは2人の出身畑があまりにも違うからです。ここで少し2人の略歴をご紹介しましょう。

ジャッキー・チェンは7歳から約10年間、中国戯劇学院にて京劇や踊りなどの伝統芸能や中国武術を学び、同学院のエリート集団「七福生」の一人としても有名です。体を張ったアクションとコミカルな演技の融合でポスト:ブルース・リーと言われてきました。

一方のジェット・リーは8歳の時に北京業余体育学校に入学。このころより、中国武術を習い始めており、中国全国武術大会で個人総合優勝を5年連続で優勝している有名な武術家でした。ジェット・リーのかたは競技武術の長拳(武術太極拳)が中心となっておりその美しさは未だに他の武術家を魅了し続けています。

このように、香港出身の”俳優”でるジャッキー・チェンと中国出身の”武術家”であるジェット・リー。例えるならバレエダンサーとフィギュアスケーターを共演させるようなもので、2人の技やこれまでの出演作品に共通したストーリーを考えるのは至難の技だったと思います。そのため共演を実現させるために15年もかかったというのも納得できます。そんな2人の共演だからこそ仕上がった作品だといえます。また劇中にはジャッキーの酔拳、ジェットのデビュー作である「少林寺」を連想させる僧侶姿など2人のルーツもしっかり盛り込まれています。

よってワイヤーアクションによる共演はこの2人だからこそできた演出だともいえます。

衣装に注目!

ワイヤーアクションを主とするアクション映画で重要な要素の一つに衣装があります。映画『HERO』(原題: 英雄)では映像もさることながらワダ・エミさんの衣装も話題になりましたよね。じつはこのドラゴン・キングダムも有名な方が衣装を担当しています。

ジュエリーデザイナーのシャーリー・チャンです。

西洋の職人技と東洋の美的基準を組み合わせたジュエリーが定評のチャンさん。2012年 NGTC(国立宝石&宝飾品技術管理センター)のジュエリーデザイン・製造技能コンテストで、「中国のジュエリー業界の20年の成果」の贈物として特別賞を受賞しました。ジェイド将軍の鎧や孫悟空の衣装等、そのシーンに溶け込んでいる数々の衣装にも注目してください!

<主な担当作品>

  • ゴージャス
  • カンフーハッスル
  • ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー

音楽に注目!

アクション、衣装とくれば・・・もちろん音楽!特にこの作品のオープニングに流れる歴代カンフー作品を彷彿とさせる曲や、主人公の修行シーンに流れる曲はこの作品をおおいに盛り上げ、特徴づけている大事な要素です。

この音楽を担当したのがデヴィッド・バックリーです。

アクション映画はアクション要素とドラマ要素のメリハリが重要になってきますが、そのメリハリを音楽で自然につけられるのがこの方です。デヴィッド・バックリーが担当した作品はどれもただのアクションに留まらず深いドラマ性のある作品に仕上がっています。

<主な作品>

  • パリより愛をこめて (2010)
  • ブレイクアウト (2011)
  • PARKER/パーカー (2013)

ストーリーに注目!

ドラゴン・キングダムの評価は賛否両論ありました。特にストーリーに関しては「ごちゃ混ぜすぎる!」「なぜ西遊記に仙人!?」など厳しい意見も飛び交いましたよね。

<モチーフにされた作品>

  • 西遊記
  • 八仙
  • 白髮魔女伝

私たち日本人はこれらの作品ひとつひとつを知っているので相入れることがないと思いがちですが、アメリカやヨーロッパなど西洋圏の人からみたらどうでしょう。1粒で3度美味しい作品になっており、改めて個々の作品に興味を持ってもらうチャンスになるとは思いませんか?

ジャッキー・チェンは以前他の作品のインタビューでハリウッド進出についてどう考えているのかを聞かれた際に以下のように答えていました。

「ハリウッドも香港も同じだ。私はただ映画を通してアジアの文化・歴史をよりたくさんの人達に知って欲しいだけだ。」

確かにジャッキーの作品には中国の歴史に関する内容が必ず盛り込まれています。

そして日本も「日本=富士山=芸者」のように未だに誤った認識をされているところがあります。日本にはもっともっと知って欲しい文化がたくさんありますよね。この作品を世に送り出した人々もそんな願いがあったのではないかと思います。もちろん「西遊記という作品には白髮魔女が出てくる」という誤った認識をうえつけてしまう危険性もありますが、この作品を通して西遊記や八仙などに西洋の人たちが興味を持ってくれたら同じアジア人としては嬉しいことです。

さいごに

いかがでしたか?映画はまず、ひと通り観て出演者・アクションを楽しんでいただき、2回目は衣装・音楽・ストーリー要素に着目して観てみると面白い接点や発見があります。製作者が意図しなかった要素もあるかも知れませんよ。それが映画の面白いところなんです。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

ドラゴン・キングダムが好きな人におすすめの映画

ページの先頭へ