人間の業を地獄へ流す”都市伝説の少女” - 地獄少女の感想

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地獄少女

4.564.56
映像
4.67
ストーリー
4.50
キャラクター
4.50
声優
4.50
音楽
4.61
感想数
9
観た人
16

人間の業を地獄へ流す”都市伝説の少女”

4.04.0
映像
4.5
ストーリー
3.5
キャラクター
3.5
声優
3.5
音楽
4.5

目次

罪に汚れし業の魂 裁くは儚き一人の少女

アニメと漫画が同時に発表されるという、変わったプロジェクトデビューを果たした『地獄少女』。

その理由は一説によると、アニメの企画がなかなか通らないでいるところに、スタッフが『なかよし』に漫画化を持ちかけたところ、これが功を奏し、結果としてアニメと漫画がほぼ同時期にスタートする結果となったという。ゆえに、『地獄少女』はアニメオリジナル作品とも、原作つき作品ともはっきり明言は出来ない。

では、なぜアニメ企画がすんなり通らなかったのかーーそれは、この作品のメインテーマにある。

”深夜0時に恨んでいる相手の名前を書き込めば、地獄少女を名乗る少女が現れ、相手を地獄に落としてくれるというサイト、地獄通信”。

物語の主役は恨みを持つ人それぞれであり、地獄への橋わたしをするのがヒロイン・地獄少女こと閻魔あいだ。

つまりこの物語は、復讐譚がメインなのである。企画がなかなか通らなかったのは、おそらくこれが理由だろう。

復讐譚がメインになっているということで、主人公たる”恨みを持つ人々”の憎しみや悲しみ、あるいは”恨まれる側”の汚さや醜さに焦点が充てられているため、非常にドロドロした話が多い。

また、第一期では主人公(=閻魔あいに依頼する側)は一方的な被害者であることが多く、恨まれる側(=地獄に流される側)は悪人ばかりで、改善懲悪的なストーリーが多かったが、二期・三期は逆恨みや勘違いで地獄に流されるパターンもある。

いずれにしろ、人間の業の深さを描いた作品はアニメでは珍しく、それが評価され、漫画ともども人気作となっている。

ちなみに、作中で「晴らせぬ恨み、晴らします」など、ドラマ『必殺仕事人』のオマージュが多々見られることでも有名だ。

人を呪わば穴ふたつ 

主人公たちは、法で裁けない憎い相手を裁くため、藁にも縋る思い地獄通信に名前を書き込む。

だが、現れた地獄少女は「貴方にも代償を支払ってもらう。人を呪わば穴ふたつ。恨みを晴らした貴方の魂は、地獄へと流される。死んだあとの話だけどね」と告げる。

そう、地獄少女に依頼し、恨みを晴らした人間もまた、いずれは地獄に流されてしまうのだ。

地獄に流された人間は、未来永劫苦しみながらさまようことになるーー多くの依頼者はこの言葉を聞いて逡巡する。結果的にはそれでも依頼人は憎い相手を地獄へ流してしまうのだが、これが物語に更なる深みを与える。

例えば憎い相手を流して目先の幸せを手に入れても、結局は自分も同じ苦しみを味わってしまう。

子供を守るために夫を地獄に流す妻もいる。教師が自分を陥れるために工作していると思いこみ、地獄へ流したものの、後になって教師は無実だったとわかり絶望する女子高生がいる。みんながやっているからと無関係な人間を地獄に落としていく、”地獄流しの連鎖”が起こった団地がある。

様々な理由を元に、事態の解決を測った依頼人たちだが、その将来は一様に暗い。依頼人たちのその後が語られることなく物語が終わっていくのも、無常観を煽る。

視聴者は一話一話を観終えるたびに、「これでよかったんだろうか」「これが幸せなんだろうか」と考えてしまう。登場人物たちに自らの人生と境遇に置き換えて、共感をしてしまうのも、『地獄少女』の面白いところだ。

いっぺん死んでみる? 地獄少女の地獄コント

醜く哀れな人間の業を描いた『地獄少女』。基本的には一話完結型で、依頼人が地獄少女にコンタクトを取る→地獄少女が仕置きをする→恨まれた相手が地獄に流される→エンディングという流れで一話が終わる。

依頼人が地獄通信に名前を書き込む、あるいは藁人形の赤い糸を解くと、地獄少女・閻魔あいとその使い魔・三藁に視点が移っていくことが多い。前者は主に三藁が変装して依頼人の素性を探る流れになり、後者は閻魔あいが仕置きに向かう、という流れになる。

この”依頼人の素性調査”と”仕置き”が、ともすれば暗くばかりなりがちな『地獄少女』を軽快なものに仕立てている。

例えば、素性調査では三藁の輪入道がおでん屋になっていたり、骨女が教師や秘書になったり、一目連が通りすがりのイケメンになって依頼人に事情を聞いたりするくだり。この三藁が個性豊かで、漫才のようなやり取りも多いため、物語のいいアクセントになっている。

また、閻魔あいを中心とした仕置きは話ごとに異なり、視聴者を楽しませている。真正の悪人には驚かせたり苦痛を与えることも多いが、大抵は地獄に流される人物にちなんだ嫌がらせを仕掛けたり、明らかに遊んでいると思われるような仕置きをする。閻魔あいを中心に三藁たちがコスプレをすることも多いためか、地獄コントと呼ばれていたりもする。

テーマそのものは重い地獄少女であるが、こうして笑えるポイントを随所に挿入することによって、純粋にアニメとしても楽しめる作品になっている。

アニメは三期で終了してしまったが、続編を望む声は多い。

地獄少女として未来永劫生きることになった閻魔あいが解放される日は来ないのであろうか…。

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