花のみぞ知るの世界
愛に溢れていて、しかしどこか儚げで切ないボーイズラブの世界。
現在、社会では同性愛が認められつつありますが、やはり同性同士の愛は困難が付き物だと思います。
駅で出会った有川くんと御崎くん。2人は大学で再会します。大学で御崎くんの噂を聞き、御崎くんが気になる有川くん。明るくて細やかな気配りができる有川くんに惹かれていく御崎くん。この物語はらそんな2人の恋のお話です。
御崎くんは有川くんとは別の男性を想っていました。しかし、その男性に裏切られ、有川くんへの恋心に臆病になってしまいます。そこに、持ち前の明るさで踏み込んでいく有川くん。一歩引いてしまう御崎くんと、そんな御崎くんを安心させるように近づいていく有川くん。2人の関係性を思うと涙が溢れます。
恋人になった2人の世界は優しくて、だけど儚くて切ない。これからのことがわからない愛だから、確実なものが得られない同性愛だから。不安を抱える御崎くんと、考え続ける有川くんが出した答え、そして迎えたラストは、本当に優しい世界の確立でした。両親を無くし、慕っていた祖父を亡くした1人の御崎くんに、有川くんは養子縁組の申し入れをしたのです。臆病な御崎くんを包み込む、有川家と有川くんの本当に大きな愛。優しく幸せなラストには何度も魅入ってしまいます。
今だ偏見の目が少なくない同性愛。同性愛に身を置く皆さんが、この2人のような優しい世界を生きてくれますように、と強く願ってしまいます。
繊細な花のみぞ知るの世界を、宝井先生の美しい絵がより鮮やかに作り出しています。
読んだ後に優しい幸せな気持ちになれる、そんなお話でした。
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