視覚・聴覚と想像の戦い
先ず初めに漫画から入ったのがよかったと思う。
原作は「音」を視覚だけで表現しているのに、弾き手の紡ぎ出す音とそれを受けた聴き手の描き方で鳥肌が立つほど感動してしまうという、稀な漫画だった。
日々の生活も苦しく、基礎も経験もなく、音に対して全く整った環境がない、そんな主人公が表現する奇跡的な音に、皆が耳を疑い驚く様子が面白い。
だから、漫画で先にその「音」を自分の中で都合良く、今まで聴いたことのないような最大級のものと想像してしまっているせいか、映画の中で演奏するカイの音にそれほど感動出来ずに終わってしまった。
雨宮くんや阿字野先生が彼の音と出会い衝撃を受けるシーンなども、鳥肌が立ってしまうほどの演奏なのだろうけれど、リアルな音に乏しい自分が感動出来ておらず悲しい気持ちに。
ただ、彼の悲しいほどに純粋なピアノに対する愛情というか、情熱は森のピアノの場面で惜しみなく再現されていた。
普通なら恐怖でしかない、深夜の森の中でカイが自由に演奏する、あの一番美しいシーンこそアニメーションで観たかったので、とても嬉しい。
逆にアニメーションから見てしまっていたら、あの漫画の表現には物足りなさを感じていたのかもしれない。
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