前作に引き続き、元気がもらえる映画 - デンジャラス・ビューティー2の感想

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前作に引き続き、元気がもらえる映画

3.53.5
映像
3.0
脚本
3.0
キャスト
4.0
音楽
3.0
演出
3.5

目次

2なのに面白いというレアな映画

この映画は前作「デンジャラス・ビューティー」の続編である。だいたい、2や3がタイトルにつく映画は、2匹目のどじょうを狙って作られた感じで、さほど面白くない場合が多い。サンドラ・ブロックでいうと、「スピード2」がいい例だ。もちろん彼女が悪いわけではないが、私の中では、あの映画は2は面白くないという代名詞のようになっている。この映画は、前作のツボを抑えながら2にもうまく反映させているが、かといって、前作を見なくてはわからないということはないのもいいところだ。
前作を踏まえながら、また違ったストーリーでグレイシー・ハートをうまく活躍させているので、彼女は常に生き生きしている。そしてそのキャラクターにもブレがない。ミス・アメリカ候補になろうが、セレブファッションに身を包もうが、軸にちゃんと変わらないグレイシーがいる。
それがブレてしまったら一気に映画の質が落ちてしまう。だけどきちんと抑えてあるところに、監督の手腕と、サンドラ・ブロックの演技力を感じた。

グレイシー・ハート、再び

前作でミス・アメリカ候補になったため、顔が世界的に知れ渡ってしまい、FBIとしての覆面調査がままならなくなってしまったグレイシーは、長官にFBIの広告塔として働くよう命じられる。そのため、前作同様、彼女を変身させる時間に入るのだけど、この場面はサンドラ・ブロックの魅力をたっぷりとかんじられる好きなところだ。
グレイシーは、がさつでまったくシックではないし、男と一緒に仕事をしているからか色気もなく、しかも豚鼻だ。なのになぜか、とんでもなくキュートに感じられるのは、サンドラ・ブロックの実力だと思う。もちろん監督の意図もあるだろうけど、グレイシーのキャラクターをここまで確立させ、彼女の性格と行動がブレずに演技できるのは、サンドラ・ブロックが彼女のことを完全に理解し、自分のものにしているからだろう。
がさつだった彼女がどんどんキレイになっていき(脱毛処理の時のグレイシーの表情は忘れられない)、セレブマダムのようになったところは、確かに見ごたえはある。でもそれよりも、広告塔の仕事を捨て、FBIの制服に着替えてフラーと颯爽と出てきたシーンの方が、個人的には好みだった。

前作とのうまいつながり

前作で印象的に使われていた「世界平和」という言葉。どちらかというとシニカルな使い方をされていたが、今回も要所要所で使われる。
映画の冒頭、サンドラが同僚と「世界平和」と軽口を叩き合うところや、ラスト、小学生の子供が作文で「世界平和」と言うところなどは、うまく前作とつながっている。その上、前作を観た人だけが分かるポイントは優越感的なものも少し感じられて、うれしいところだ。
その他、グレイシーの部屋のレンジが前作から壊れたままだったり、小さなところで発見があり、それを見つけるのもこの映画の面白いところだと思う。

前作よりもコメディ感はアップしたか

前作はどちらかというと恋愛が絡めてあるので、それほどコメディ要素はなかったように思う。比べて今回の映画は、前作の恋人から別れを告げられるところから始まるので、恋愛要素はまるでない。その代わり、コメディ要素の高い会話や、行動が前作よりもアップしていると思う。
そして、あまりコメディになりすぎると痛々しくなってしまい、逆に見れなくなるという危険性をこの作品はうまく回避している。やりすぎないのだ。しかも、サンドラ・ブロックが無理なくキュートに演じていて、まったく違和感がない。
セリフだって翻訳してあるにせよ、笑えるものも多かった。涙をからかわれた時の「涙腺ないですし」と言うセリフや、フラーとの会話で「お産なら無痛にするとこ」とか、ところどころでニヤリとできるセンスある会話がまた面白い。
また2から、喧嘩っ早いフラーやゲイのジョエルなどが加わり、より一層楽しめる。特にジョエルは良いキャラクターだ。やり手FBI調査官のジャネットに公務執行妨害で刑務所に入れると言われた時、「どこの?」と尋ねるシーンは、絶妙な間もあり、この俳優の演技力が感じられた。
このジョエルを演じているのは、ディードリック・ベーダー。どこかで見たことあると調べてみたら、ドラマの「ミディアムー霊能者アリソン・デュボア」や「ボーンズ」に出ていた役者だった。この人それほど映画は出ていないのだけど、演技派なのだからもっと役柄も見てみたいと思ったところだ。

もう1人の立役者、レジーナ・キング

喧嘩っ早く、攻撃的なフラーを演じているのは、レジーナ・キング。いつもイライラしながらも、何もごまかしのない真っ直ぐな性格のフラーをうまく演じている。
レジーナ・キングを知ったのは、「ザ・エージェント」だ。落ち目となったフットボール選手の妻役で、ビジネスライクで頭が良く、気は強いけれど優雅な女性がはまり役だった。「ザ・エージェント」では夫であるロッドといちゃつくシーンもあり、今回のフラーとは対照的な印象だったけど、フラーも全く悪くない。よくはまっていたと思う。
今回は彼女の歌唱力も堪能できる。やはり黒人の歌のうまさは圧倒的だ。若干鳥肌がたつくらいだった。
また高身長のサンドラ・ブロックと比べ、レジーナ・キングは小柄だ。だからよくグレイシーから見下ろされているシーンがあるけど、それを逆ににらみつけるような視線がフラーの性格にぴったりで、この身長差もフラーを演じるには必要だったような気さえした。

セレブファッションを捨て、FBIに戻ったグレイシー

長官に、ミス・アメリカの誘拐事件には首を突っ込むなと念を押され、空港へ飛び立とうという時、グレイシーはやはり思いなおしてそこから逃亡を図る。このあたりのドタバタはかなり笑えてキュートで、ここでもサンドラ・ブロックの魅力を堪能できた。どうしてあんなセリフが下品にならず、しかもちょっとかわいいのだろう。やはりサンドラ・ブロックだからだろうなとしか思えないところだ。
セレブファッションもいいけれど、友人を助けるためにFBI調査官に戻り、制服に身を包んだグレイシーはカッコ良かった。そしてこのあたりから、上品に振舞っていたグレイシーではなく、男勝りで強気なグレイシーが戻ってくる。そして文字通り、鳴りを潜めていた豚鼻も戻ってきた。とは言え、前作よりも鳴っていなかったのは、わずかなりともグレイシーが女性らしくなったといえるのだろうか。豚鼻もグレイシーらしかったので、ちょっとだけ寂しく思った。

完璧なハッピーエンド

この手の映画はハッピーエンドに決まっている。決まっているけれど、グレイシーの衣装が船底の重量感あるものに挟まり、危機一髪になったところはハラハラした。まさかここで彼女が溺れ死ぬことはないだろうけど、誰が助けに来るのか見当がつかなかったので余計ハラハラしてしまったのだ。
結果、フラーが力強くグレイシーを水中から助け上げる。その時、足が映るのだけどたくましかったので、一瞬ジョエルが助けに来たのかと思ってしまったが、フラーだった。
その後手柄を横取りにした長官の肩にワザとぶつかったりとか、グレイシーらしさも完全に戻ってきた。そしてチャラチャラした女性がどうしても苦手だったフラーは、本来のグレイシーとは気が合うはずで、そのためしっかりと信頼関係を結べるようになったのもハッピーエンドとして気に入っているところだ。
この、初めは仲違いしていた2人が紆余曲折を経て、唯一無二の親友や相棒になる展開は定番で鉄板ではあるけれど、やはり見ていて気持ちがいい。そして間違いなく元気になる。
またグレイシーが広告塔として働いていた時、本にサインを求めてきた小学生の少女の学校に、調査官に戻ったグレイシーが訪れるところ。ちゃんと伏線を回収してくれて気持ちが良かった。そして「人に気に入られるためのおしゃれなんて必要ない」という言葉は、その少女だけでなく観客にも力を与えたと思う。
この映画は観終わった後、絶対元気になる。そんなパワーをもらえたような映画だった。

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