どれだけあっても困らないモノ…それはお金です
遺産相続のドロドロにワクワク
お金に対する執念…って、あんまりあからさまだと見苦しく思えるかもしれない。でも、お金ってどれだけあっても困らない…ありすぎたって困らないのである。むしろ、私のような庶民は積極的に欲しいと思うのだけれども、出所がないのであきらめる他ないのである。
このドラマの矢島家。だれもお金には不自由していないのに遺産を分けるとなると、三姉妹で他の娘より損をするのは嫌なのか、それぞれに参謀をつけて有利な遺産獲得に乗り出すのであるが、愛人の浜田文乃の存在がそれをなお、ややこしくさせる。私はこういうドロドロ系のドラマが大好きなのである。
原作は尊敬する山崎豊子先生。大阪船場の昭和の物語をこんな風にリメイクするとは。原作もとても面白かったけれども、ドラマにするとわかりやすく感情移入もしやすい。三姉妹の意地の悪さがクローズアップされている。この現代で「総領娘」という言葉を使うだろうか。矢島家、恐ろしい。
自分たち「女」より下に見ていた婿養子の父親の逆襲劇。死んでから現れた身重の愛人が自分たちと同世代の女だったら、もう顔も見たくないし、縁も切ってしまいたいでしょう。女系じゃなくても、金持ちでなくても、自分の父親が…と想像すると、世の中の女性はみんな嫌悪感を抱くだろう。私だって許せない。悪いのは父親だとしても、その女とは絶対に今後、顔も合わせたくないわ。同情されるべき三姉妹が悪役なのである。米倉涼子演じる文乃が控えめで薄幸だからか。
相応の遺産はくれるというのだから、それでいいじゃないか。山が欲しい、掛け軸がないと大騒ぎしなくても。揉めると兄弟姉妹は他人よりたちが悪いとはよくいったものだ。ある時には文乃に対して団結し、ある時には遺産をはさんで敵対する。欲しいのは遺産なのか、それとも違う何かなのか…。
それぞれが本当に欲しいものとは…
最終回に矢島嘉蔵が、長く続いた女系家族に終止符を打つ。この計画を文乃は嘉蔵の生前から聞かされていたわけではなさそうだ。この二人はもちろん愛し合っていたのだろうと思うけれども、矢島の家に対しての同志だったのではないだろうか。また、文乃が産んだ子どもが男の子だというのも皮肉な話だ。息子は、次女の千寿夫婦と一緒に将来矢島屋を一緒に経営していくようにという遺言だが、先々の波乱を予感させる。なぜなら、千寿が本当に欲しかったのは自らの子どもであるからだ。その点、彼女は気の毒だとも思う。子どもが欲しいのにできない女性の前で、出産を終えた女が非道な最終宣告を突きつける。旦那は従業員と浮気をしていたし、三姉妹の中で一番不幸なのではないだろうか。会社を貰ったからといって、呉服屋…いくら老舗といえど今後のニーズは減っていきそう。
長女の藤代は、矢島家を出て他に家を構えろと言われる。これも可哀想な話である。彼女がすがっていたのは、たとえ出戻りであっても自分はこの女系の矢島家の「総領娘」であるというプライドだから。それをもぎ取られて、さぞかし悔しかっただろう。今まで、妹たちとは違う教育をされてきて、はしごを外された感じ。
末っ子の雛子は、叔母のすすめる縁談相手とちょっといい感じだったのに、分家になるのも許されず他家へ嫁ぐようにといわれる。六郎というわかりやすい名前の彼とは結婚できなくなってしまった。この六郎という名前も今風にリメイクしたらよかったのにってちょっと思ったよ。これで一番ガックリしたのは叔母さんだけどね。雛子を養女にする計画もおじゃんになってしまった。ある意味、この人が一番煮え湯を飲まされたのではなかったか。この人も女系家族の犠牲者だったのかも。
でも、最終回の三姉妹の様子を見て、晴れ晴れしているようにも思えた。長女は金目当てで近づいてきた家元と縁を切ったし。家に縛られない生き方もいいだろう。次女は自分の子どもには恵まれなかったけれども、文乃の子どもともしかしたら、新しい関係性を築けるかもしれない。雛子はなんと言ってもまだ若い。好きな人と恋愛すればいいさ。お金ならあるんだし。結局、みんな損はしないのよ。嘉蔵だって、子どもたちに良かれと思って書いた遺言なんだと思う。決して家や女系に対する復讐だけじゃない。だって自分の娘だもの。愛情はあるに決まっている。
謎の微笑みのわけは…
さあ、最終回の最後の最後、文乃がニヤリと笑うシーンが、ネットで話題になったけれども、それにはどういう意味があったのだろうか。何もかも終わったという安堵感…のようには見えなかったぞ。最近、そういう思わせぶりな演出が多いけれども、意味があるのかなあ?ただ、話題性を持たせたいだけで、わざとやっているようにも思えてあまり好きじゃない。エンディング曲もスタッフロールも終わった後の、アレ。
やったぞ!勝ったぞ!ウフフ…みたいな感じに思わせたいのかしら。嘉蔵の子どもじゃなかったか。私は深読みしたくないな。嘉蔵さん、これからも天国で見守ってね…くらいに思っておこうか。蜜月の思い出し笑いかな。
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