ファースト・クラスは、マウンティングの頂点という意味
マウンティングという言葉を流行らせた作品
「ファースト・クラス」を見た感想です。
この作品は、冒頭から「女達の醜いマウンティングの物語」とナレーションが入るように、登場人物の「こいつは何点、こいつは自分より格下」と格付けし合う様を見所としたドラマです。
登場人物は仕事や恋人の有無、既婚か未婚かなど、ありとあらゆる角度からお互いを格付けし合い、マウンティングをし合います。
そして、常に格上になることを目指し、周りを追い落とそうとします。
そして、毎回「今週のマウンティングランキング」と称して、一位から最下位までが発表されます。
そんな女同士の根拠のないポジション争いと、人間関係のドロドロが、この作品の見処と言ってもいいでしょう。
そしてこの作品は、あらすじを聞いただけで視聴者が期待するような「女同士の潰し合い」や「ファッション紙編集部というキラキラした世界観」を、期待通りに見せてくれたと思います。
また、それだけではなく、妨害を受けても受けても立ち上がっていく、主人公吉成ちなみの成り上がり物語という、王道的な面白さも見せてくれました。
沢尻エリカさん演じる、主人公の吉成ちなみは、ひょんなことから一流ファッション雑誌「ファースト・クラス」の編集部で働き始めます。
最初は地味で垢抜けなかったちなみが、編集部で揉まれていく中で、強さと美しさを手に入れていく様は爽快です。
優しさと芯の強さを併せ持つちなみは、卑怯な妨害工作にも正攻法で立ち向かい、成功していきます。
周りの人が、ちなみに次々と手を貸していく様子は、一見してご都合主義にも見えますが、沢尻さんが演じると、不思議と「こんな人もいるかもしれない」と思わせる説得力があります。
見ていて気持ちのいい主人公ですし、明るく前向きなちなみを見ていると、元気が出てきます。
女性が感情移入しやすい主人公だと思いました。
川島レミ絵は菜々緒さんの当たり役
また、主人公を陥れる側も徹底して嫌らしくて、よりちなみの真っ直ぐなキャラクターを引き立たせることになっています。
編集の木村白雪と川島レミ絵は、自分達より格下のちなみを潰そうと、あの手この手で妨害工作を行っていきます。
特に川島レミ絵役の菜々緒さんの嫌な奴ぶりは徹底していて、最後まで目が離せませんでした。
レミ絵の高飛車な感じや、腹に一物持っていそうな感じは、菜々緒さんにうってつけではまり役でしたし、演技力の高さを感じました。
また、虚をつかれたというか、ビックリしたのは、LiLiCoさんの登場です。
LiLiCoさんは番組冒頭のナレーションを担当していますが、まさか後々ご本人が出てくるとは思いませんでした。
また、樹のキャッチコピーに、「月収13万。まだ陽の目を見ぬ王子様」とありますが、後々大会社の御曹司ということが分かると、「なるほどねえ。」と思わされます。
身分を隠した王子様までゲットしていくちなみは流石です。
その時にマウンティングランキングがぐっと上がったのも、面白かったです。
心の中はドロドロ…テロップで見せていく演出
また、ストーリー以外に話題を呼んだのが、「心の中の声をテロップを入れて放送する」という演出です。
建前とは裏腹に、赤裸々になる本音がエグすぎて面白いです。
一番心の中の毒づきの多いキャラクターが、木村白雪と川島レミ絵でしょう。
白雪とレミ絵はライバル関係にあり、あわよくばお互いを潰そうとしています。
心の中の毒づき方も凄まじく、方や正社員、方や契約社員として、ポジション争いをしています。
白雪が心の中でだけは、コテコテの関西弁で相手をこき下ろしているのも面白いのですが、やっぱりレミ絵のマシンガントークのような毒の吐き方が、見ていて一番インパクトがありました。爽快ですらありますよね。
また、八巻千夏が留美に対して行う、既婚者同士のマウンティングが一番エグいと思いました。
千夏は子供がいて、留美はいないですからね。
「留美はいいなあ、年下の旦那様ゲットして。子供もいないし、縛られるものがなくて」というセリフのいやらしさよ。
子供のいない人にとっては、ひどい言葉です。
ここであえて心の声を出さないのも、いやらしさが倍増します。
留美はここで言い返しませんが、ぐっと堪えるような表情ではありましたよね。
また、成功していくのはマウンティングの場に上がっていない人、というのも面白いです。
女性の主要キャラクターで心の声が聞こえないのは、吉成ちなみと大沢留美です。
この二人はマウンティングの場に上がっていないので、心の中の声が聞こえないのでしょう。
各々が私利私欲のため、自分のポジションの為に仕事をしているのに対して、特に留美は雑誌のため、読者のために働いているのだと思います。
ちなみも気概は同じで、そこが命運を分けているような気がします。
また、ミーナや白雪といった、「マウンティングに疲れてしまった人」が、格付けを辞めた途端にいい笑顔になったのも印象的です。
結局、日常の幸せは、人との比べ合いの中にはない、という事なのでしょうね。
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