しゃべるぬいぐるみとのほっこりストーリー - minima!の感想

理解が深まる漫画レビューサイト

漫画レビュー数 3,135件

minima!

4.004.00
画力
3.00
ストーリー
3.50
キャラクター
4.00
設定
3.50
演出
4.00
感想数
1
読んだ人
1

しゃべるぬいぐるみとのほっこりストーリー

4.04.0
画力
3.0
ストーリー
3.5
キャラクター
4.0
設定
3.5
演出
4.0

目次

人づきあいって難しい

飴(という名前もびっくりするが…)は、すごく内気で、本当に大切にしたい友だちとの距離感を図りかねている女の子。ちょっぴりかわいそうだが、自分にもあまいヒロインだ…あめだけに。別に好きでもない女友だちが何となく怖いからつるんでいるだけで、彼女はいつも暗い表情をしていた…。

自分を助けてくれる・支えてくれる人は確かに存在していて、自分でもそれがわかっているのに、素直になれない。本心で行動したいのに、正直になる勇気も持てない。まるで誰かに邪魔されているみたいに感じてしまうことって、わりと何歳になってもあるよね。自分でもうまく説明できないけど、何となく負の連鎖に陥っていて出てこれない感覚。誰でも一度は経験したことがあると思う。

徐々にみんなが自分から離れていこうとしているのではなく、自分が周りと距離をつくっていたんだということに気づいて、自分の言葉で反論することも、話をすることもできるようになっていく。…前向きで、いい話にまとまっていると思う。大人からすれば、はっとするようなことがそこかしこにあるわけでもないから、物足りないかもしれない。それでも個人的には、小さなころにぬいぐるみだけが友だちだわーなんて言ってた時代もあるからね。少し親近感を持って読めた。人がモノを大事にすることが、もしかしたら幸せにつながっているのかもしれないとか、想像を巡らせながら読み進めることもできる。

ちょっぴりかわいそうな女の子を主人公にする漫画は大量にあって、差別化はできていないものの、普通じゃありえないような出会いがあったら、飛びついてみたほうが人生変わりそうだよね。自分が恥ずかしいと考えていたものをまずさらけ出してぶっ壊してくれるような、刺激的な出会いをしたいものである。

ニコリのおかげで成長する

ヒロインが成長できたのは、ニコリとの出会いのおかげ。仲間外れで必要とされない自分の姿と、かごの中で買われることなくただホコリをかぶる彼を重ねたわけだけど、ニコリが抱く気持ち・考え方はもっともっとデカかった。というか、別視点で物事をとらえているから、ためになった。友だちが何を言ったって変えられなかったものを、飴は彼のおかげで変化させることができたんだよね。自分の中で大事にしていたものをぶっ壊すわ暴露するわ、かなり衝撃的な荒療治だったとは思うけど、それがきっかけで物事は動き出したし、一度自分の最もバレたくないものがばれれば、もはやちょっとやそっとのことでは驚かない。

また、ぬいぐるみの側から考えても、成長できる出会いだったと言える。人間のことなんて知らなかったし、人の中で大切にされて生きることも知らなかった。一緒に生きて、楽しいこともあれば、悲しいこともあり、それでもそばにいると、家族になれることも知らなかった。そのあたり、ほっこりするし、ただのぬいぐるみとして考えず、一つの自我を持った存在として考えてあげることって、モノの見方が変わるなーって思える。人の思いやりみたいなものをあったかいと考え、嬉しいと考えられるのは、ひん曲がった性格の自分からするとだいぶ安易だなー…と思ってしまう。しかし人がつくったものに、人の気持ちが宿ることは認めてあげたい。というか、人間とは感じている気持ちとか、物事のとらえ方が違うんだもの。そこは違っていて当然なんだよ。それを素直に受け止められるのも、飴たちが柔軟だからだろうなーって思う。

ぬいぐるみの世界を揺るがす騒動

ニコリの行動は、実はぬいぐるみたちの世界では衝撃的な出来事。「しゃべっちゃったらあいつはどうなるかわかってない」というぬいぐるみたちの口ぶり…もしかして昔にも誰かしゃべってしまったぬいぐるみがいたんだろうか?そうでなきゃ、ひどいことになるという予測すら立てられないと思うんだけどなー。なぜ異様にぬいぐるみたちが博学で、物知りばかりなの?そのあたりの設定はあんまり細かくない。実はどのぬいぐるみたちもしゃべれるのに、しゃべろうとはせず。そうやっているうちに大量の人形たちが捨てられる事件が勃発。そして飴を羨む気持ちとバッシング。特別な何かを持っていると、いいことばかりじゃないんだよね。

“ぬいぐるみは実はしゃべれるのに、しゃべらないでいることが暗黙のルールになっている”って、深いと思う。人から必要とされるうちは愛され、基本的には不死で存在し続けることができる。捨てられたら命を終える…切ないけれど、理解もできるよね。そうやって、人は簡単に思い入れを持つことも、捨てることもできるんだよな…と考えさせてくれる。最終的に一つのミーアキャットのぬいぐるみがもたらしてくれたことは、一人の女の子の生き方・考え方を変えたということだけ。流行りはいつか収束してしまい、忘れ去られる。それもまた無常やなー。大事にしているはずのことを、なぜか時々大事にできなくなってしまったり、意味もなく傷つけたくなる時もある。日々大切さを実感することを行っていないと、簡単に心変わりしてしまう、人の気持ちの危うさがここにある。

恋は控えめソフト

片想いがどこかで叶うのかなーと思っていたけど、緑のこともあって、若干複雑…。でも恋愛面はこんなもんでいいだろうね。転校ばかりのマサヒロの寂しい気持ち、それを吹き飛ばしてくれる緑という友だちの存在。「これは…!」とBLな展開も考えてしまったけど、まぁそれはなかった。ヒロインを感情的にさせてくれるのはいつも緑だったので、まぁそうなるよね、と思う展開の運びであった。今でも時々ボーイズのほうがおもしろいことになったのではないかと思ってしまう…飴ちゃんごめん。これ以上ショックを与えてしまうのも良くないか。かわいくラストも締めくくってくれたと思う。

”お互いのおかげで今がある”と言えるくらいの関係になれば、離れがたいもの。まだまだ幼い飴からすれば、やはりニコリと離れるのは寂しいことだろう。それにしても、序盤に家族がしゃべるぬいぐるみを受け入れた話が非常に薄いと感じたのだが…私だけだろうか。何もエピソードないところから、「もう一人息子が増えたみたい」とか言っちゃってるし。いやいや、最初は気味悪がるとか、ケンカしてみるとかしてもいいのにな、とは思った。家族として飴を支えていこうというエピソードがもう少し多くあってもよかった。

笑って一緒にいよう

動かなくてもしゃべらなくても、人だろうが人でなかろうが、大事にする。そばにいる。それだけで生きていられる。こんなファンタジーな出来事があったら相当楽しいだろうなー。”ニコリ”の名前はやっぱり”笑うこと”が幸せにつながる…って言いたいのだろう。この物語を読むと、かわいいなーと思って買ったぬいぐるみとか、飾っているだけの置物のほこりをちゃんと払ってあげようと思える。かわいがって、声をかけて、大事にしていこうって思えるね。モノを大事にする気持ちが、人を大事にすることにもつながっていく気がしてくる。

短い物語ではあるけど、ほっこりいいお話だった。冒頭でじめじめしたエピソードから入るので、いきなりニコリが乱入してきたときの脈絡のなさには驚いたものの、暗い雰囲気が彼のおかげでうまく盛り立てられていると思う。「君がいなくても、私は大丈夫」というところに持って行くのだろうと思っていたし、展開は予想通りかな。人間何に助けられるかわからんが、言葉ってでかいなー。桜井さんの作品の仲でも、ほっこり具合はこの作品が一番いいじゃないかな。ちょうどよく一気読みできる。すごい泣けるキャラクターではないけれど、子どもも大人も読んでいいと思う。ぬいぐるみ買うなら大事にしないとね。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

minima!を読んだ人はこんな漫画も読んでいます

minima!が好きな人におすすめの漫画

ページの先頭へ