結末にびっくり、うさぎドロップ
前半と後半でがらっと印象が変わる
年上の男性を好きになるという気持ちは、ファザコン気味の女性に多いのかもしれない。しかし、幼い頃から父親同然に暮らしてきた男性を異性として好きになれるものだろうか?
うさぎドロップは、鹿賀りんが河地大吉に引き取られ、生活を共にするという物語である。松山ケンイチと芦田愛菜が出演し、ドラマ化したこともある。
1巻から始まった2人の生活は、りんの精神的な問題などもあったが、絵柄の可愛さもあって、ハートフルな物語だった。私はりんが無事に成長していけるよう見守る気持ちで微笑ましく読んできたが、ラストのりんと大吉の関係にはたいへん驚いた。
なぜこんなことになるのだろう。
りんの恋愛と大吉の恋愛
りんは中学生になったとき、コウキという男友達に恋愛感情を寄せていた。だが、コウキに彼女ができてから、その感情は徐々になくなっていく。
高校生になると、今度はコウキのほうがりんを気にしだしてしまうが、2人が上手くいくことは結局無かった。
一方の大吉は、バツイチのコウキのママと少しだけ良い感じになる。コウキママのゆかりさんは美人だが、女手一つで必死にコウキを育てる好感が持てる女性だ。
私は頑張っているゆかりさんが健気で、どうか大吉と上手くいって、この2人が結婚してくれないかと思いながらうさぎドロップを読んでいた。だが、こちらもりんとコウキの関係と同じように、お互いに惹かれるものがあるものの、上手くはいかない。
そして、りんは高校卒業後に大吉と結ばれ結婚する。
こんなことが現実に起こりえるのだろうか?
なせ急に身近な人間を好きになるのか
りんと大吉が一緒に生活を始めたのは、りんが小学校に入学する前のことだ。
そして結果的に上手くいかなかったが、一時はコウキのことをりんは好きになる。
たしかに初恋が上手くいくことは稀なことかもしれない。
しかし、親代わりの大吉を好きになる気持ちは理解できない。
たとえばりんが中学生か高校生の年頃のときに大吉と一緒に暮らし始めて、年上の頼りがいのある大吉に恋をする、というのはまだわかる。だが実際2人が一緒に暮らし始めたのはりんがまだほんの子どものころだ。
クラスにいる勉強ができる男の子や、スポーツが得意な男の子、あるいは面白くて笑わせてくれる男の子を好きになっても良いものだが、コウキの他にそのような人物は出てはこない。
なんだか作者が身近なところで手をうった感じがしてしまう。
大吉も大吉だ。あんなに幼い頃から娘のように育ててきたりんを性的な対象である女として見ることになるとは…。直接的な親子関係ではないにしても、まるで近親相姦を見ているようで、読んでいてなんともモヤモヤした気持ちになってしまう。
ここで突然話が変わるが、私は幼なじみに告白をされたことがある。
とても個人的なことなので、興味のないかたには申し訳ないのだが、この幼なじみは隣の家に住んでいて、同い年で幼稚園から高校まで同じだった。まだ言葉を話せない私たちがお菓子を取り合っている古い写真もある。
そんな彼に告白をされたのは高校生のときだったが、私はどうしても彼を異性として見ることができず、恋人になることはなかった。
もちろんこれは私の経験なので、世間一般のことではない。
しかし、そんな経験があるせいか、ますます身近な存在の異性を異性として好きになり、関係を持つことになるりんと大吉がよくわからない。
「親」や「師」として大吉を尊敬する、という関係だけではダメだったのか。
さらに、りんは大吉の祖父が家政婦との間に作った子どもであり、この夫婦にも年の差がある。血は争えないという例なのであろうか。
好きなマンガは何度も読み返したくなるものだが、最終話を読み終えた今では、もう一度うさぎドロップを読み返そうという気持ちにはどうしてもなれない。
大吉はゆかりさんとのときもそうだったが、恋愛は受け身なのかもしれない。そして、恋愛には奥手で大人の女性はニガテなのかもしれない。
りんを引き取ったときの大吉の年齢は30歳だったから、20歳以上の年の差があるし、高校を卒業したとしても、りんはまだ未成年だ。
大吉はりんが未成年であることに目をつぶったのであろうか。
なんだかこうやって書くと、たんなるファザコンとロリコンのマンガのようになってしまうが、絵柄が可愛いので、嫌悪感は感じても読めないことは無い。
なぜ作者はこの2人を男女の関係にしたのだろうか?
もしかすると作者は年上好きのファザコンなのだろうか?
それとも、単純に子どものときから身近だった2人を結婚させたいという願望があったのだろうか。
あるいは編集者や編集部からこのように進めるよう指示があったのか。
いずれにせよ、何か心境の変化があって、このような方向に転換したのではないかと勘ぐってしまう。
作者の他のマンガを本屋で見かけると、絵や表紙のデザインに惹かれるのだが、うさぎドロップのことがあってから、なかなか手が伸びない。
本当のところどうしてなのか、作者に聞いてみたい。
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