男勝り女子と可憐な年下男子の恋物語 - ヴィーナス綺想曲の感想

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ヴィーナス綺想曲

4.504.50
画力
5.00
ストーリー
4.00
キャラクター
5.00
設定
4.00
演出
3.50
感想数
1
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男勝り女子と可憐な年下男子の恋物語

4.54.5
画力
5.0
ストーリー
4.0
キャラクター
5.0
設定
4.0
演出
3.5

目次

美しきイラスト

作者である西形まいさんの初コミック。全部で5巻だけど、内容・絵ともに好きな作品の1つである。なんといってもこの美しく妖艶なアキラ…女なのか男なのかわからないくらいの日欧ハーフ男子に、ときめきまくりである。中学校3年生には絶対見えない!タカミを男として好きなのに、タカミにはいつまでもかわいい妹みたいに思われているのが癪なアキラ。それでもタカミのそばにいたいから、気持ちを伝えてもすぐに答えはもらおうとしない。健気!表面上冷静装ってても、やっぱりアキラはかわいい弟キャラである。

言動行動ともに男気あふれるタカミだけど、アキラのことは幼なじみ・ピアノ仲間として本当に大事にしている。今までの楽しい時間を崩すことを恐れてアキラとの関係性を進展させることがなかなかできないが、アキラから若干遠回しに告られたあとの曖昧な関係が実に楽しい。今までと変わっていないと言われればそうだが、でも確かに、着実に、歩みを進めて心通わせているんだよねー。今までもアキラが言ってきたであろう「かわいい」とか「似合ってるよ」などの言葉が、好きだと言われた後はよりドキドキするものに変わった。好きだからくれる言葉なのだと思えば、どうしたって意識してしまうね。

個人的には、美しいばかりのアキラじゃなくて、アキラがタカミをデートに誘ってドキドキしているのとか、友だちからのアドバイスを素直に聞いてがんばっているところにニヤニヤしてしまったね。若干照れている天使の笑顔のアキラが一番輝いている。

ゆっくりと年下男子に侵食される

今まで、タカミには何人も元カレがいた。みんなタカミの容姿が美しいところに惹かれてよってくるのであって、中身をみていないため、ガサツで男らしいところばかりのタカミを捨ててしまうのである。たぶん、タカミから告った人はいなそうだよね、この流れだと。

アキラはタカミに彼氏ができるたび不安だったんじゃないかなと思うけど、タカミが好きだから、「タカミが選んだ相手なら…」って思っていたのかもしれないし、もしくは「タカミのことをわかってあげられるのは俺だけだから、絶対タカミは戻ってくる」って考えていた可能性もある。さらには、アキラだってまだまだ子どもで、「誰かと付き合っても俺から離れていくわけない」って信じていたところもあるのかな、と想像した。

「タカミのダメなところは、男を見る目がないこと。」と断言するアキラ。いったい何歳…?でも確かにそうなんだよ。自分を好きだと言ってくれて付き合うのだから、絶対期待してしまうんだと思うの。タカミなりに不器用にときめいちゃったりして。だから、アキラも複雑なことを考えていたのかもしれないよね。タカミは好きだと言われれば割と誰とでも付き合うのかもしれない。それなら、俺が言えばそうなる…?でもそれは、本当にタカミが俺を好きだからかがわからない。俺が欲しいのは、タカミの全部だから…。とか考えていそう。いや、絶対アキラは考えているに決まっている…あの美しい笑顔の下でタカミのことばっかり考えているんだ。

中学3年生と高校生のハンデ

中学校3年生のアキラと、高校生2年生のタカミ。1つ違うくらいはあまり気にならないけど、2つ違うとなるとちょっと差を感じるよね。小さいときから一緒にいると、本人たちはあまり気にしないけど、実際周りは気にしそう。だいたい通っている学校が違うし、お互いのコミュニティは全く別だから、全然知らない世界を持っている者同士でのトラブルもありそう。浮気も簡単にできるだろうし。まぁ、本当に好きな者同士であれば、気にしないだろう。別の学校に彼氏・彼女がいるんだよねーって、高校生の頃に友だちから聞いた時、けっこうカッコいいなと思っていた。いつもよく知っているはずの友だちには、別の世界が広がっているっていうところに、別に深く知らなくても憧れを抱かせる。

アキラがタカミに告ったタイミングは、森の野郎にタカミを傷つけられそうになってムキになったからだったけど、身長がタカミと同じくらいになるまで待ってたんじゃないかなとも思うわ。頭のいいアキラのことだから、それまではひたすらマーキング。タカミの知らないところで危険人物は排除してきているかもしれないよ。10巻くらい続くような物語であれば、もしかしたら天使で菩薩のようなアキラの絶妙すぎる裏工作が出てきたかもしれない。あとはガチでタカミがさらわれるとか。この「ヴィーナス綺想曲」の5巻まででは、友だち以上恋人未満が恋人に昇格するまでを描き、男の子のちょっとミステリアスな部分を解き明かしていくお話だったから、長く続くとすればタカミ側の何かトラブルだろうね。タカミが浮気したりはないだろうから、家族トラブルか、タカミを強制的に奪おうとする何か策略にはめられるか、どっちかかな。それもまた、普段別の学校に通っていることが障壁になるんだろう。

音楽は誰かのために紡ぐもの

この物語の中で大事なのは、アキラとタカミのキャラクターだけじゃなくて、アキラのピアノの音色。英才教育を受けた彼の神がかったピアノが、タカミにとっての心の安らぎであり、支えになっているんだよね。落ち込んだら元気づけてくれて、楽しい時間も共有できる。

最終的に問題になったのが、アキラがヨーロッパに行ってしまうかもしれないってこと。近くにいるのが当たり前だった2人が、アキラの親の身勝手で引き裂かれるかもしれない…アキラなら、いくらでもタカミに会いに来てくれるだろうし、タカミもアキラを追っかけるくらいのことはできるだろうから、全然心配には及ばなかったけどね。

アキラのピアノに対する熱情の中には、タカミのことは切っても切り離せないもの。技術的なことではなくて、心がどこにあるかを常にきちんと教えてくれるのが、アキラにとってのタカミなのであろう。そしてそれを表現することが、彼にとってのピアノだし、誰よりも自分がタカミを幸せにしたいと思う気持ちが、聴く人を幸せな気持ちにしてくれているんだろう。音楽で表現することは、人の気持ちなんだよね。それは自分のことかもしれないし、作曲した時代の人を憂うる気持ちもあれば、恋い焦がれる気持ちもある。音楽って気持ちの表現だから、感情が豊かであることが何より大事だよなーって素人なりに思った。

去り方あっさり

5巻しかないからね…もっとタカミとアキラのラブラブシーンを見たかったから、そこは物足りない。いま西形まいさんの作品で続いているのが「LAVE GAME~スーツの隙間~」っていう漫画だけど、こっちではこれでもか!ってくらいにエロく美しい人たちが描かれているよ。実に楽しい…(笑)。「花の騎士」のときもあまりラブラブシーンは見ることができなかったから、この作品で爆発しちゃったのかな、と思う。でもちゃんと感情の複雑なところは継承されていると思うから、どれも楽しいんだけどね。アキラにはいつまでもタカミより若干背の低い状態でいてほしいような、大きくなってタカミを思いっきりかわいがってほしいような…どちらのアキラも捨てがたい。妄想だけでかなりニヤけてしまう2人である。

ちゃんとアキラを男として見るようになっても、変わらず大事にしてくれるタカミ。本当にこの子は魅力的だわ。今まで彼女を捨ててきた男たち、もったいなさすぎる。森以外の今までの歴代彼氏ってどんなもんだったのかは気になるところだ。

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