愛は感じられるけど - お金がないっの感想

ここまでして、良いの？

原作の大ファンだった私は、OVA発売を知ってものすごく驚きました。だって、かなりハードなシーンも多いし、何よりもあの世界観が表現出来るのかな？という疑問があったからです。そして、DVDをスタートさせた途端、私はものの数分で停止ボタンを押していました。「ここまでして、良いの？」という感想でした。確かに、綾瀬が従兄弟である石井の罠にハマり、いかがわしいオークションに出されるシーンはこの作品にとってかなり重要なシーンです。原作を初めて読んだ時も、このシーンでは思わず息を飲みました。全裸の綾瀬が大衆の面前で両足を広げられるシーンは、もう少し遠目でも良かったんじゃないのかな？それに、助けられた綾瀬が狩納によって蹂躙されるシーンも、あそこまで見せなくても良かったのでは？と思ってしまいます。小説やコミックならまだしも、アニメになると妙に生々しく見えて、かなり抵抗がありました。肝心な所は当たり前ですが隠されてはいたのですが、逆にヤラシイ表現のように思えてしまうのです。だったら指先や足先だけの動きにするとか、綾瀬の表情だけの変化で何が行われているのかを表現した方がずっと良かったです。それに、『お金がないっ』の魅力はHシーンだけではないのです。従兄弟の罠にハマり、オークションから助け出してくれた狩納に無理やり身体を繋がれながらもどこか凛とした男の子らしさも持っている綾瀬のいじらしさや、かつて自分を助けてくれた綾瀬を守りたいと思いながらも、同時に綾瀬が欲しいと切望し、駄目だと分かっていながら綾瀬を犯してしまう狩納の苦悩。その二人の感情が見え隠れしてこそ、この作品の魅力は発揮されるのです。OVAでは、二人の心情があまり詳しく表現されていなかったようなので、そこが残念です。

どうして変えちゃったの？

綾瀬達キャラクターのデザインは思っていたより原作に近かったですが、やっぱり原作のあの繊細な線は表現出来ていなかったようです。綾瀬は確かに可愛いいです。おそらく少女マンガに登場するヒロインよりも可愛いいと思います。でも、可愛いい中にもどこか男の子っぽい要素も欲しかったな。原作よりもひ弱なイメージが強かった気がして、いささか残念です。ただ、狩納に関しては原作通りだったのでそこは満足です。ただ、CDドラマと声優さんが違ったのはどうしてでしょう？綾瀬の声はCDドラマでは石田彰さんが演じていたので、福山潤さんに変わったと知った時にはショックでした。だって、ずっと石田さんの声で聞いていたのに変わってしまうなんて、なんだか別のキャラのようで、同じセリフを言っても何かが違うような気がするのです。それに、操の声が羽田野さんになったのも納得出来ません。CDドラマでは辻谷さんがお一人で誉と操を演じ分けていらっしゃいました。この双子の兄弟は外見的にも性格的にも分かりやすい変化はないのですが、辻谷さんは見事に演じ分けていらっしゃいました。出来れば、CDドラマと同じ声優さんで見たかったし、もしどうしても変更するなら全部のキャラクターを変更して欲しかったです。

オリジナルでも良かったのに

原作者の篠崎一夜さんが脚本を書かれたという事で、セリフに対する不満はないのですが、出来ればオリジナルストーリーで見たかったかな？原作版は小説もコミックも読んでいるし、CDドラマも聞いているので、「またこのシーンなの？」という感じです。原作を知らない人も確かにいるので、仕方がないのかもしれませんが、出来ればダイジェストとしてまとめて、あとはオリジナルにするとかだったら良かったのにな。例えば、綾瀬がまだ幼い頃、両親と幸せに暮らしていた事や、狩納の生い立ち、誉と操のかなり素行が悪かった過去とか、そういった話しも見てみたかったです。個人的には、オカマバーのママである染矢をクローズアップして欲しかったな。彼が本当は狩納の事をどう思っていたのかとても興味がありました。顔を合わせれば嫌みまじりに狩納を揶揄う染矢ですが、本当は狩納の事が好きだったんじゃないかとおもいます。そういったサブキャラクターにもスポットライトを向けた作品もあった方が楽しかったんじゃないのかな？でも、他のBL作品と比べるとやっぱりこの『お金がないっ』は成功した方だと思います。中にはキャラクターもかなり違ったり、内容もペラペラな作品が多い中で、この作品はどれだけ面白いのか伝えようという、作品に対する「愛」だけは感じられました。ただ、もったいない事に、キャラクターも内容もちょっと物足りないという印象が強く、あまりにもHシーンに力を入れすぎた事かな？でも、もしHシーンが全くなかったとしたら、それはそれで寂しいと思ってしまいます。かなりわがままな意見ですが、ソフトなHシーンだったらもう少し長くても良かったかな。と、思います。