付喪神の世界観とバトルを楽しむ - もののがたりの感想

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付喪神の世界観とバトルを楽しむ

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画力
4.5
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目次

大切にされたものに宿る霊

この世界観が好きだね。常世と現世があって、稀に現世ではない場所から現世へ迷い出てしまった稀人が生まれる。稀人は様々な物に宿り、悪さをすることもあれば、常世へ帰りたいと願う者も、さらには現世に馴染みたいと思う者もいる。彼らと対話しあるべき場所へ還すことが仕事である種族・塞眼(さえのめ)。いまここにその均衡を崩してしまうほどの何かが起ころうとしていた…。

って感じで、いい感じに和風で、作者のオニグンソウさんは絵もうまいし、スタートがとても良い。人とは相容れない存在だと考えて排除しようとする兵馬と、生まれた時から付喪神たちと共に生活してきたぼたん。彼らがたどり着かねばならない終着点はどこなのか。兵馬は大切な兄姉を奪った付喪神への憎悪を、どのように払拭していくのか?1つずつ解き明かしていくストーリー。肝心な部分を握っているのはぼたんであり、唯一物に宿るはずの稀人が人に宿ったパターンってのもなかなかワクワクする設定だ。稀人が物に宿り、人の形を成すパターンはあるけれど、稀人が人そのものに成り代わることで、いったい何が起こるのか。そこが物語のキーになっていて、兵馬がぼたんを守ること、過去の因縁が今後どう絡んでくるのかが見ものなのだ。

ぼたんを守るために宿った付喪神たちは、婚礼道具一式。だから、ぼたんを信頼できる人間と結婚させようとしている…のが唯一の安らぎのところ。あとはバトルが基本で、なんだかんだ兵馬とぼたんの恋もまんざらでもなく進んでいく。最後にはみんなが只の“物”になってしまいそうで怖いなー…ずっと一緒にいられたら嬉しいのにね。

正義だけじゃないことが共感できる

兵馬は、過去に大切な兄と姉を付喪神に殺されている。そのため、付喪神を常世へ送り返すために、かなりの強硬な手段を使い、その存在そのものを認めないかのような行動に出る。それが、ぼたんたち家族と出会うことで、いい付喪神もいる…と知っていくことになるのだけれど、どうしても心の奥底に眠る気持ち・憎悪はぬぐいきれない。重要な秘密を握っているらしき唐傘との対戦では、ぼたんを守りたい正義のために行動しているのか、それとも憎しみと殺してやりたい気持ちだけで行動しているのか、わからなくなっているシーンがある。何か悪さをしでかす前に、迅速に付喪神を葬り去らなければならない。その考えでは、物に対する慈しみも、そこに確かに息づく物の存在すらも、すべて否定することになる。確かに人を殺し、何かを企む付喪神がいるのは事実。兵馬は自分の正義と向かい合わなくてはならないのだ。

単純に守ってやるってだけじゃ、理由がどこか足りない。不十分な人間だからこそ、複雑な気持ちを正当化したくなってしまうし、過去のことが着色されて、余計な部分をそぎ落としている可能性だってある。最も重要な部分を聞き逃しているのに、最初からなかったかのように記憶をいじることだってある。人間ってそういうものだし、包み隠さず見せてくれるほうが安心できてしまう。兵馬が直面する事実がなんであるかはまだわからないけれど、確実に長月ぼたんとその婚礼調度たちと心を通わせ始めたのは事実であり、おそらくどこかのタイミングで彼らを守ることを選ぶのか、自分自身の復讐のためだけの道を選ぶのか、決めなくてはならない時がやってきそう。

バトルは爽快に

付喪神たちとのバトルは、血だらけってほどでもなく、わりとスマート。確かにシャープなところもあるけれど、血が出るよりかは、壊れる感じだ。相手は“物”なので、確かにその表現のほうがしっくりくるし、おそらくバトルがより深部の相手と行われるようになれば、物から人へと近づいていくように思う。そして血みどろっぽくなるんだろう。

スピード感、風を切る感じが爽やかだよね。何となくどの技も風が吹く感じで、名前と技にリンクがある。その中で、戦いに身を投じるわけではないぼたんがいて、名前も無関係チック。あー稀人はどんな奴が入っているんだー気になりすぎるー。どこかのタイミングでぼたんが戦闘に参加することもあるかもね。そうなれば、付喪神を消滅させる勢いの技かもしれない。めっちゃ代償を伴う可能性もあるよね。もしくは最後までぼたんは人間らしく生き、その稀人の力は奪われてしまうか、兵馬が引き継いでしまうとか。皮肉だけれど、兄と姉を殺したかもしれない力で自分が人を守るために戦うことを選ぶ、というような流れもありそう。今のところパワー勝負というよりはスピード・技勝負なところが大きく、どこかで大きな敵との対戦もあるかもしれないけどね。

個人的には、ぼたんに手を出した唐傘をぶっ殺すために、婚礼調度たちがクシゲを残してみんな集結しちゃったところ、ワンピースでニコ・ロビンを助けるために一堂に会した麦わら海賊団を思い出したわ。場所もちょうど屋根の上。懐かしい…。雅楽リョウが実は唐傘とグルであることがわかって、若干めんどくさい展開になっているけれど、それもまたフェイクかもしれないよね。

名前が覚えられない…

少し困るのは、一文字で表された仲間の付喪神の名前。難しいし、なんて読むのかわからないから非常に覚えにくかった。クシゲとか、普通の文字変換じゃ出てこないじゃん、そんな読み方。硯もいつも忘れちゃって、6人しかいないのにこうも覚えづらいとは。技のインパクトと共に覚えるようにしているけれど、なかなか厳しいものがあるわ。椿とかだったらわかりやすいけどさ。

ほかの塞眼の団体の名前も難しいよね…和風な物語の場合、いろいろな漢字が出てきて様々な読ませ方をする。おもしろいところでもあり、めんどくさいところでもある。唐傘とか、みんなそんなふうにわかりやすくすればいいのにね。唐傘なんて、見た目のインパクトもすごいうえに、読みやすいじゃん。あの目つき、忘れられなくなるよね。

かといって、カタカナの名前にすると付喪神の感じでなくなるしなーきわどいところ。漢字の良さは、読み方をさておき、だいたいのそのキャラのイメージも全部想像できるところだよね。その点では、いい文化だなーと思う。説明しなくてもわかるじゃん。

まだまだ見えない事の全貌

稀人が現世に存在するには、何かに憑りついている必要性があるのだけれど、人に憑りついた稀人が最強のように扱われているのはなぜなのか。人に入れたくらいだから、相当に能力の高い稀人なのか、それとも稀人を受け入れた器のぼたんのほうが最強なのか。稀人を失ってしまったらぼたんはただの人として生きていけるのか…

結局付喪神の中にもいい奴がいるとなると、最後は人の中に裏切りが出てくるんだろうね。これはもう抗えないところ。人に苦痛を与えるために作られた器があり、そこに稀人を呼び寄せる手段すらも持つ人間がいるのだから。結局、物に稀人が宿るのであって、物は人間にしか作れない。それなら、やっぱりいろいろな悪事が起こるのも、人間のせいなんじゃないかなーってところでまとめそう。それに勝つのは、人の決意と覚悟なんだと思う。

まだまだ先は読めないけれど、兵馬とぼたんはうまいこと結婚する…よね?順調にときめき育んでるよね?このシリアスな展開の中で、ぼたんの人間の女の子らしい感情がどの登場人物にとっても癒し。ぬぼーっとした人だと思ってたけど、どんどんかわいくなっていっていると思う。真面目過ぎる兵馬にも、どこかで愛をささやいてもらいたい。

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