悪党だけどキレ者
悪党がのし上がって行くストーリー展開が面白い
一人の人間が、日本を弄ぶように、のし上がって行くストーリーでした。
それに主人公・氷室聖人は、善人ではなく悪人であるからこそ、面白さがプラスされて、より面白いと思いました。
話が始まっていきなり女性を弄び、邪魔をする男は次々と消していく。悪党なのに、頭が切れるからこそ這いあがって行けるんだというのが、見事に描かれていたと思います。
最後には、日本最大の財閥令嬢と結婚し、美悪の華を咲かせたのかと思いきや、令嬢と相棒であるはずの北脇に裏切られ、死ぬというラストには衝撃を受けました。
山崎梓が氷室の影響を受け、悪党に染まっているのは神父・照喜名殺しの時には氷室も十分理解していたはずなのに、最後まで梓の裏切りを見破ることなく、梓の協力者となった北脇の仕向けた刺客に殺されてしまうのは、とても残念でした。
両親を死に追いやった九鬼一族を抹殺し、復讐に燃える甘粕を殺したところはスカっとしたのに、最後の最後にミスをしたように思えてならない。
何か手を打って、梓もろとも散ってしまうようなラストを期待していたところがあったので残念なラストでした。
画がリアルで良い
女性を弄ぶシーンでは、女性の表情や犯す男性の表情などが、とてもリアルで見ごたえがあった。
殺人を犯すシーンでは、特に氷室の悪党としての顔が怖いと思えるくらいリアルに描かれていたと思う。
そして、氷室によって死ぬことになる人たちの怯えた表情が、こちらもリアルでした。
悪党なのに理解できる気持ち
氷室聖人は悪人であるはずなのですが、ラストまで読んでいくと完全に嫌いになる人物ではありませんでした。
むしろ他に出てくる人物の方が悪党に思えました。
例えば最初のターゲットとなったエステの女社長・三崎。彼女たちが氷室の心の拠り所にしていた良美を殺したことで氷室が沖縄を出てアメリカへ渡ることになりました。恨む気持ちは十分理解できます。もちろん氷室が本物の氷室から受けた屈辱もそうです。本物の氷室が悪党だったから、金城正人を捨てるまでに追いやられたのだと理解できます。そして氷室の両親を死に追いやった九鬼はもちろん、沖縄時代の照喜名などなど、出てくる人物すべてが氷室を悪党に追いやったんだと氷室の気持ちが理解出来てしまいました。
特に、神父・照喜名に救われた女性、里見が現れて死ぬまでのシーンは、氷室聖人ではなく金城正人としての優しい感情が見える場面もあり、完全な悪党ではないのだろうな・・・と、肩入れして理解もしたシーンでした。
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