猫は可愛いだけじゃない! 猫初心者にも勉強用に読んで欲しい作品 - チーズスイートホームの感想

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チーズスイートホーム

4.004.00
画力
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ストーリー
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キャラクター
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演出
3.50
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猫は可愛いだけじゃない! 猫初心者にも勉強用に読んで欲しい作品

4.04.0
画力
3.5
ストーリー
4.5
キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
3.5

目次

子猫中心のほっこりストーリーと思いきや?

可愛らしい子猫のチーが目をひくチーズスイートホームです。

デフォルメされた子猫のキャラクターですが、アメリカンショートヘアー(以下アメショー)の特徴が良く出ていて、猫好きであれば「あるある!」と思うネタがそこかしこに転がっています。元々アメショーの性格が活発で元気の良いタイプの猫。子猫のチーも、ちょっぴり忘れっぽくドジな部分もありますが、拾われた山田家の中でもお父さんやお母さんを困らせたり、1人息子のヨウヘイと兄妹のような成長が描かれています。

と、ここまで読むと、子猫中心のほっこり路線ストーリーのように思えますが、この作品には「どうしようもない現実と向き合う親子」という話も隠されています。

まずは山田家に拾われる子猫のチーですが、元々は別家庭の飼い猫です。しかも、現在のチーの家付近に今でも親猫や兄妹猫が住んでいます。これもチーのうっかりした性格が原因ですが、母猫と兄妹猫たちと散歩中に1匹だけ別行動をして迷子になり、遊んでいたらそのままヨウヘイに拾われる形で山田家に迎えられました。

現実世界で猫好きが野良の子猫を保護する際には、母猫が周囲にいないかを確認して保護します。実は母猫が子猫を探しているケースも多いですからね。お母さんは母猫を多少探したものの見つからず、チーをひとまず自宅に保護する事を決意。これが、チーと山田家の「家族」としてのスタートです。

実はその後にチーが生まれた家周辺を散歩するシーンもあるんです。だけどチーのなかでは、もう家族は「山田家」の面々なんです。物語冒頭では「おかあしゃん」「おうちどこ」と言っていたチーの中で、数ヶ月が経つと「おうち=お父さん・お母さん・ヨウヘイがいる家」になるんです。そして「おうちに帰ろう」と自宅へ戻るスキルを身につけます。

きっと現実世界でも、飼い猫になって家族になっていくのはチーのような感覚だと読んで体感できる作品です。

あくまで人間目線ではなく猫目線。

だからこそ読者は人間側の苦労も判るし、猫の自由奔放さを「かわいい」と感じるシーンが短い作品にギュッと凝縮されていると思います。

猫一匹のために引越しできますか?

チーズスイートホームの考えさせられる点は、都市型の核家族がいかにペットと一緒に生活を送るか?という点が凝縮されています。

子猫のチーと出会い、家族として迎え入れる山田家は、いわゆる現代の核家族を象徴するような生活ぶり。父親は在宅作業中心のデザイナー、母親は専業主婦、そしてチーを拾う幼稚園児のヨウヘイの3人家族で賃貸アパート(いわゆる新婚家庭+子供向けのコーポ的な物件)に3人で生活していました。

現代では珍しい大家さんが一緒の建物に住んでいる物件で、ペット不可。特に大家さんが猫が嫌いという環境です。

山田家もチーが大家に見つからないように窓際にぬいぐるみを飾ったり、大家さんから「猫を飼ってるんじゃないの?」と聞かれた時にも機転を利かせてチーの存在を隠します。ですが、チーと仲良くなったくろいの(成猫)を飼っている家がネコバレしてしまい、部屋を追い出されてしまう描写も。

一連の騒動を経験して、親世代は「このままチーと暮らしていくのは難しいのではないか」と悩み、ヨウヘイは「チーと離れたくない」と泣きます。この描写がとてもリアルで、大人の事情でペットが飼えない環境と、1度迎え入れてしまった命とどう向き合うかという心理描写が丁寧に描かれています。

山田家が選んだ道は、たまたま見つけた「ペットOKな物件に引っ越す」というものでした。

漫画ですからご都合主義な点もありますが、1匹のペットのために、憶測ですが約20万円以上の投資を行い引っ越す決断が出来ますか?

「ペット=家族の一員」とわかりつつも、現実世界で起こる「お金の事」や「環境のこと」が、子猫のチー視点を交えつつ描かれています。

大人たちが葛藤するなかで、子猫のチーは「なんだか良くわからないけど難しい話をしている」とキョトンとしているのが何とも子猫らしいですね。

猫の世界も広くて狭い。人間の世界も?

子猫視点で繰り広げられる物語なので、初見では「子猫のチーの大冒険」というイメージが強く残る作品です。が、2度・3度と読み深めると、実は子猫が視ている世界の狭さがよーく判ります。

第1巻・第2巻でたびたび描かれるチーとくろいのの脱走劇や再会ストーリーがありますが、子猫のチー目線では大冒険として描かれています。しかもチーは家猫です。狩りの知識もあまりなく、少し走ってはすぐにバテてしまうほど体力もありません。そんなチーを助けて初めて優しくしてくれた「家族以外」の存在が、成猫のくろいのです。

ですがくろいのも、飼い猫。地域のボス猫というわけではないんです。

というのも、猫のなわばりは環境によっても異なりますが、成猫でだいたいホームポイント(=家)から直径150m程度だそうです。室内飼いの猫でしたら、まさになわばりは家の中のみという猫も多いそうです。こう考えて行くと、猫のなわばりって人間目線では狭く感じませんか?

チーの大冒険やヨウヘイやお父さん・お母さんとのほっこりストーリーが中心ですが、これらの話題はほぼチーから直径150m以内で起きている物語なんです。

チー目線というのがストーリーに大きく関わっていて、お父さんとお母さんがペットOK物件への引越しを決めた理由の1つに「学区が変わらない」という点があります。

大人になって考えると、幼稚園にいえれたばかりのヨウヘイを、すぐ遠くの幼稚園や保育園に転園というのは少し現実的ではないですよね。止む得ないケースもありますが、現代は待機児童問題も叫ばれる時代です。

猫一匹のために、幼稚園に通いだした息子の環境をすぐに変えてしまうのか――。

気がつけば、山田家の生活は、チー中心となっていました。

もちろん息子のヨウヘイに、お父さんとお母さんは親として愛情を注ぎます。と同時に、ヨウヘイの妹のようにチーに対しても愛情を注ぎます。まさに家庭内にお猫様が誕生した物語ですね。

ちなみに2017年現在、飼い猫の平均寿命は約10年ほど。ご長寿猫は15年以上生きる猫もいるそうです。

果たしてチーは何歳まで生きたのでしょうか。作中で語られないこそ、猫と人間の楽しい共存だけが取り上げられている作品です。

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